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01
それは昨日の出来事だ。
「しょんべん、しょんべん」
なーんて、少々お下品な台詞を吐きながら、いそいそと便所に向かっていた俺。その時、
「……――んっ。や、やめて下さいっっ!」
(……ん? なんや??)
便所の個室(つまり大きい用を足す方ね)から、何だか切羽詰まった声がした。
――嫌な予感。
「――あっ。そ、そんなっ、逢坂 課長っっ !!」
(……やっぱり)
嫌な予感ほどよく当たるもので。しばらく大人しくしていたと思ったのに、どうやら例のビョーキが再発したらしい。便所の中から若い男の切ない声と、ナニをしゃぶる艶 かしい音が聞こえて来た。
逢坂課長は盛りが付いたら止まらない。どこまでも暴走して、相手が男であろうが女であろうが、その場で餌食となってしまう。
(……ガンッ !!)
俺はそのドアを思い切り蹴飛 ばした。そして、静寂が辺りを支配し、ゆっくりと開けられたドア。
(――ドンッ!)
すると、中から下半身をまる出しにした同僚の砂川 が飛び出して来た。
砂川は根っからの真面目人間で、どう考えてもノンケだろう男だ。瞳に涙をいっぱい溜め、俺の方を見ずに慌ててズボンを引き上げながら便所から出て行く。
「……長谷部君」
「課長――、また病気が出ましたね?」
叱られた子供のように俯 いてて、またもや瞳に涙を浮かべている逢坂課長。
「泣いたってダメです!」
俺の台詞に身体 をびくりと跳ねさせると、恨めしげに俺を睨んだ。
「……今夜、僕の部屋に来てください。いいですね?」
俺はそう言い放ち、それから徹底的に課長を無視する。何か言いたげな瞳の課長が気になったが、とにかく就業時間を迎えた。
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