20 / 31

エピローグ

 翌日。 「砂川、……大丈夫か?」 「……ん? ああ、長谷部さん。大丈夫ですよ。仕方ないですよね。逢坂課長だから。事故だと思って諦めます。それに……、気持ち良かったし」 「―――― !!」  頬をピンク色に染め、爽やかな笑顔を見せた課長の毒牙にやられた砂川。  逢坂課長、恐るべし。  どうやら、ノンケで真面目な砂川まで(とりこ)にしてしまったらしい。そして今夜は何故か俺のベッドで受付の華、かの日下部嬢が全裸でまどろんでいたりする。 「ね、長谷部君。逢坂課長の秘密……、知りたい?」  耳元でそう甘く囁かれて、誘惑(飽くまでも日下部さんの台詞にだぞ ?! 俺は課長ラブなんだから!)に負けてベッドを共にした俺。 「……で、日下部さん。逢坂課長の秘密って?」  行為(エッチ)の後。気怠(けだる)い身体をベッドに沈め、行為と交換条件である肝心なことを聞いてみる。 「――ん? ああ。どうやら課長、恋人ってゆーか、愛人が出来たらしいのよねー。しかも、私も長谷部君もよーく知ってる人」 (――バ、バレてるし)  俺達の関係は、勿論トップシークレットで、周りには秘密にしている。メンソールの細い煙草を(くゆ)らせながら妖しく笑う日下部嬢。どうやら彼女は俺たちの関係に気付いてしまったらしい。 「またしよーねー。長谷部君、上手だし。気持ち良かったよ?」  至極ご機嫌な日下部さんは俺の耳元に煙を吹き掛け、小さくそう囁いた。  ああ、前途多難。逢坂課長に関わっていると、どうやら受難は免れられないらしい。俺の胸に頬を擦り寄せてくる日下部さんを無意識に抱き寄せながら、俺はまたもや大きな溜息を吐いた。 2005.9.29.完結

ともだちにシェアしよう!