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それは甘い、恋の痛み。②

その痛みは、ゆっくりとやってきた。 左右に足を開き、リラックスできるように何度もキスを交わしながら、夏目さんの覆いかぶさる身体の重さが肩に大きくかかったと同時だった。 引き裂かれるような質量を感じながら、ズッとまたズッとめり込んでくる。 想像していたより大きな先端だったけど、火傷するような痛みとともに頭の中が真っ白になって、――触れた夏目さんの体温に火傷してそのまま溶けて行くかと思った。 ズブズブとその痛みが俺の全身を駆け巡る。 はっきり言って、気持ちいいとは言い難い質量を感じた。 けれど、一生この痛みを味わっていけばきっと慣れる。 俺は、この痛みよりも、夏目さんと離れた瞬間のあの胸の痛みが忘れられない。 ――もう会えないかもしれない。 ――迎えに来ないかもしれない。 ――あの人の隣には、綺麗な女性が似合う。 ――俺だけが恋をしていて、あの人を一方的に好きなだけだから。 ――気持ち悪いと思われるかもしれない。 ネガティブな考えが頭に過らなかった日は無い。 なのに、貴方は俺を、着ぐるみに入ってると思った俺を迎えに来てくれた。 貴方を一瞬でも信用していなかったあの時の、俺の馬鹿みたいな幼稚な心。 あの心を抱きしめてくれた時の痛みに比べたら、こんなの痛みでも何でもない。 気遣わしげに触れる指先、苦痛を逃そうと快楽を探す舌先。 鋭いくせに穏やかで、愛情に蕩ける眼差し。 俺が知らなかったのは、じゅくじゅくに溶かされる心地よさ。 俺の幼稚な考えを吹っ飛ばして、俺の心に、甘い痛みをもっとちょうだい。 俺が女だったらなんて、馬鹿げた考え、今すぐ全部俺の頭から消し去って。 「夏目さん……すげえ好き」 首に抱きつくと、身体の中で位置が変わって、中を擦る感触に眉を顰めた。 ぎちぎちと音がしそう。 だけど、それでいい。 別々の人間が、相手を欲する。 欲して、キスをしてキスだけじゃなくもっと身体を繋げて一つになりたくて。 だから痛くても、二人で一人の様な感情を感じたい。 「夏目さんじゃねえよ。下の名前、わかるだろ? ――言えよ」 ポタポタと俺の頬に夏目さんの汗が落ちた。 じわりと広がるその熱さにさえ、甘い痛みを感じた。

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