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それは甘い、恋の痛み。①

Side:氷田 聖 最初はシャワーだった。 シャワーの熱で体を温めた後、お湯と一緒に一本だけ夏目さんの指が侵入してきた。 お湯でほぐそうとしてくれたんだけど、夏目さんの指がごつごつしてて長くて大きくて。 少しでも力を入れてしまうと、中で指の輪郭が分かってしまって羞恥で死にそうになった。 指が引き抜かれた瞬間、ぱっくりと開いた口が数回痙攣したのも恥ずかしかった。 だが、一本の指ではまだ駄目だ。 夏目さんの熱芯は、LLサイズなのだから。 *** 「っち。もうねえな」 空になったローションのボトルを、床に放り投げた。 背中が、シーツにしみ込んだローションの冷たさに仰け反る。 (使い過ぎだろ) なんて、そんな悪態をつく余裕なんて無かった。 床に投げ捨てられた空のローションが、カランカランと軽そうな音を立てて転げていく。 念入りに。 言葉通り、丹念に、ゆっくり、時間をかけて。 俺は、夏目さんの指を三本受け入れていた。 本音を言うと、めちゃくちゃ恥ずかしい。 好きな人に、自分の奥を暴かれていくこと。 自分でも見たことない場所に、指が入り動いていく。 クチュっと卑猥な音が響く。指が律動するたびに、中に入っているローションが襞にしみこんでいく気がする。気がするだけなんだけど、丹念にほぐす夏目さんが、普段のお肉大好き強面おじさんに思えない。 でも恥ずかしい。 一つずつ増えていく指の最初の痛みが、ピリピリした甘い胸の痛みと連動して俺の心と体を揺さぶった。 奥に当たる度、濡れたシーツの上を泳ぐみたいに乱れる俺を、夏目さんは心配げに見下ろす。 この人、本当に見た目は怖いのに、優しいよな。 そう思うと更にきゅんと胸が締め付けられた。 「……聖、俺の指を食い千切るつもりか」 「食い千切る!? ひゃっ」 夏目さんの言葉に、つい力を入れてしまい、夏目さんが片目をつぶる。 「緊張すんな」 「ごめ……痛い?」 慌てて夏目さんの頬に手を伸ばすけど、逆にその手を掴まれ、指同士を絡めながらシーツへ押し付けられる。 「痛いわけあるか。お前の方が、今から痛いんだぞ」 「痛くても、……平気だから。止めたら怒るからな」 「分かってるよ」 それ以上喋るなと言わんばかりの深い口づけをしながら、汗が頬を伝っていく。 舌の感触に頭がぼーっとしていく。 思考を全て奪われる。 水音を立てながら指が抜かれる。 夏目さんはもう遠慮はしてなさそうだった。 俺の目蓋にキスを落とすと、首に、胸に、臍には舌をいれて、そして茂みの中で震えている俺自身を口に。 「んんっ」 変な声が漏れてしまう。 けれど、片手はシーツに縫い付けられ、もう一方の片手は夏目さんの頭を掴んでいたので声を隠せない。 舐められると、身体の芯が熱くなっていく。

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