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ロック!!襲うぞ!!⑦
「……」
しゅんと項垂れた聖に、今は何も言わずに頭からシャワーをかけた。
悪いのは俺なのだが、友人としては吾妻といちゃいちゃしずぎだろ。
今言っても嫉妬だと片付けられてしまうから、落ちついてから言ってやる。
「……ゃっ」
胸を洗い流していたら、指が当たった瞬間に小さく声を漏らした。
酒やらあいつらの悪戯で敏感になっているだけのこいつに手を出すつもりもねえが、目に毒だ。
「……夏目さん、喋るなって言ってたけど聞いて」
「――どうした」
「俺、貴方を全部受けとめたいんだ。だから、夏目さんも逃げないで」
「あ?」
ピチャンと音を立てて、聖は一歩飛び出すと、俺の腰に抱きついた。
「男同士なんだって。俺、女じゃないから、だから夏目さんを受けとめられないって思われたくない。受けとめたいんだ」
興奮して、本音を告げる聖は耳まで真っ赤だった。
「結婚だってできないし、同じ名字にもなれない。子どもだってできない。でも、だからこそ俺は、何かに残せなくても確かなモノが欲しい。痛くたっていい、甘い痛みが、欲しい」
涙目で訴えてくる聖に、シャワーなんて放り投げて抱きしめた。
上を向いて倒れたシャワーが、俺達の上に雨を降らせていく。
そんな作られた偽物の雨なんか放っておいて、目の前の大切なモノを壊してでも良いから強く強く抱きしめた。
「……お前、何も考えて無さそうな顔でそんな事考えてたのか」
「酷え! だって俺、確かなもん見たことないし。親は子ども愛してなかったから蒸発してるし、姉ちゃんはあのウンコ野郎に利用されて本当に両想いだったわけじゃねえ」
媚薬や酒のせいで、理性がぶっとんでるのか、我慢を止めたのか、聖は早口で喋る。
普段、子どもっぽい部分や、人を信用し過ぎてると心配していたが、本音を口に出したことが無かっただけで、こいつはもっと色々考えてるのかもしれない。
「じゃあ、本当の愛だって証拠をお前は見たことが無いから不安だったのか」
「わかんねえ。でも……心は繋がってるんだ。身体も繋がらせてよ」
ほわわんとした、女みたいななよなよした奴かと思っていた。
が、芯はしっかりしてる。
俺の恋人は俺よりも何倍も男らしい。
「今お前は、酒とか薬のせいで正常な考えが出来てねえみたいだが、いいんだな?」
「もちろん」
これ以上覚悟を聞くのもダサいか。
これ以上恋人にダサいおっさんだと思われたく無くて、適当にお互いの身体を拭いた後、聖を抱っこしてベットへと向かった。
こいつの、馬鹿みたいに人を信用した途端甘えてくるところとか。
俺の見た目ではなく、中身を知ろうとする姿勢とか。
甘やかされて育った割に、根性がある部分とか。
可愛い顔して男らしい部分とか。
もう全部めちゃくちゃ愛おしかった。
途中、ペットボトルの水を口移しで半分以上飲ませた。
少しでも、酒やらが抜けるように。
「んッ」
こくこくと小さく動く喉さえ、愛しいと心が震えた。
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