5 / 16
2-3 同級会 ~ケンイチ~
俺達は、カオルがおすすめだという、中央駅の近くのとある居酒屋にやって来た。
それにしても、やはり二十歳を過ぎるといい。
こうやって女の子を、飲み食いに誘いやすいから。
と言っても、今日は男なわけだが……。
しかし……。
あまり意識してなかったけど、カオルってしぐさとかも女っぽいところがある。
少し酒が入っただけで、目がウルウルして可愛いさが半端ない。
なんか、カオルといると胸が熱くなるんだよな。
ちっ。
まったく、俺はどうなっているんだ。
カオルは男だっていうのに。
そんなことを考えていたら、突然、カオルが話しかけてきた。
俺は、ドキッとした。
「なぁ、ケンイチ」
「なっ、なんだ?」
「お前さ、大学出たら何やるんだ?」
「そうだな……」
よし、よし。
普通の会話、普通の会話。
これをしておけば、変な気は起きない。
「俺は、まぁ、普通にサラリーマンかな」
「へぇ、そっか。お前、手堅いもんな」
「まぁな、ささやかな給料でアイドルオタ続けて、そのうち結婚して、旅行とか趣味にして、のんびりと過ごすって感じだな」
「そっか。いいなぁ、オレも同じだな」
カオルは、優しい表情で微笑む。
幸せな未来を想像している。
そんな夢見る乙女のような……。
うぉ。
こいつ、やばいって!
また胸がドキドキして来た。
俺は、変だ。やっぱり、なんか変。
これは、飲んで気を紛らわすしかない。
「すみません、飲み物おかわり!」
あれ?
気が付くと、俺は、グラスを片手に熱弁をふるっていた。
「てかさ、カオル。結婚式って言ったらさ、青のドレスじゃね?」
「青? ああ、悪くないな」
カオルは、酔っているせいか頬がピンクに染まっている。
あいつの頬に触りてぇな。
「綺麗だし、色っぽいしさ。てか、俺達、何の話してるんだっけ?」
「ぶっ! もう酔ったのかよ? 同級生の結婚式の時の話だろ?」
カオルの荒げる声に、少し目が覚めた。
そうだった。
中学の同期で、結婚一番乗りしたやつの話だ。
そっか。
そんな話をしていたんだっけか。
俺は、ぜんぜん酔っていないふりをして返事をした。
「おぅ、そうだった。そうだった」
「まったく、しっかりしろよケンイチ」
カオルは、すこし頬を膨らませた。
やめてくれ。
そういう、キュンとする可愛い顔。
マジで、お前を男って認識できなくなるからよ。
俺は、少し飲むペースを遅らせる為、グラスにはゆっくりと口をつけるようにした。
一方、カオルは、ガンガン、グラスを空けてお代わりをしている。
「ああ。てか、カオルつえぇなぁ。酒」
「そうでも無いけどな」
「いや、十分強いって」
カオルは、お代わりのグラスを受け取ると、話を続けた。
「そう言えば、あいつ。クスクス。結婚したら彼女にして欲しい事で何て言っていたか覚えているか?」
「なんだったかな?」
「一緒にお風呂に入りたいだって」
「おー、言ってた、言ってた」
思い出した。
その話は、ガチで言っていたのが周りの失笑をさそったんだ。
「そんなの結婚する前に毎日入ればいいのにな。ははは」
「本当にな」
「で、ケンイチだったらどうよ?」
「おっ、俺か?」
突然の質問に、俺は頭が真っ白になった。
やべぇ、頭がうまく働かない。
ちと飲みすぎたかな?
俺が、うーん、と唸っていると、カオルが俺のグラスが空なのに気づいた。
「なんだ、ケンイチ。酒ねぇな。お代わり頼んでやるよ」
「ああ、悪いな……」
よし、これで少しは時間稼ぎができる。
うーん。
そもそも、嫁さんのイメージが沸かない。女、女、女。
そっか。
もしも、カオルが嫁さんだったらで、とりあえず想像すればいいか。
よし、こいつにしてほしいことな。
目の前のカオルをじっと見つめる。
カオルは、店員から俺のお代わりのグラスを丁寧に受け取って、お辞儀をしている。
本当に、カオルは女みたいだな。
お淑 やかで、優しい、いい奥さん。
そこで、ふと思いついた。
「よし、分かった。俺がしてほしいこと」
「おう、なんだ?」
「裸エプロンだな」
「ぶっ! それ一緒にお風呂と同レベルじゃねぇか! ははは」
「うっせい! でも、まぁ、そうだな。ははは」
確かにカオルの指摘どおり同レベル。
でも、マジで、こいつに裸エプロン着せたら超萌える。
間違いない。
俺とカオルは、二人してしばらく大笑いしていた。
ああ、それにしてもよ、カオル。
お前と酒を飲むと、なんで、こんなに楽しいんだろうな……。
やっぱり、俺、もしかして、カオルのこと……。
いや、いや。こいつは、男だ……。
「ははは。やっぱり、飲みすぎだ!」
「へ? 何だ突然。何がおかしいんだ? なぁ、教えろよ!」
ともだちにシェアしよう!