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2-3 同級会 ~ケンイチ~

俺達は、カオルがおすすめだという、中央駅の近くのとある居酒屋にやって来た。 それにしても、やはり二十歳を過ぎるといい。 こうやって女の子を、飲み食いに誘いやすいから。 と言っても、今日は男なわけだが……。 しかし……。 あまり意識してなかったけど、カオルってしぐさとかも女っぽいところがある。 少し酒が入っただけで、目がウルウルして可愛いさが半端ない。 なんか、カオルといると胸が熱くなるんだよな。 ちっ。 まったく、俺はどうなっているんだ。 カオルは男だっていうのに。 そんなことを考えていたら、突然、カオルが話しかけてきた。 俺は、ドキッとした。 「なぁ、ケンイチ」 「なっ、なんだ?」 「お前さ、大学出たら何やるんだ?」 「そうだな……」 よし、よし。 普通の会話、普通の会話。 これをしておけば、変な気は起きない。 「俺は、まぁ、普通にサラリーマンかな」 「へぇ、そっか。お前、手堅いもんな」 「まぁな、ささやかな給料でアイドルオタ続けて、そのうち結婚して、旅行とか趣味にして、のんびりと過ごすって感じだな」 「そっか。いいなぁ、オレも同じだな」 カオルは、優しい表情で微笑む。 幸せな未来を想像している。 そんな夢見る乙女のような……。 うぉ。 こいつ、やばいって! また胸がドキドキして来た。 俺は、変だ。やっぱり、なんか変。 これは、飲んで気を紛らわすしかない。 「すみません、飲み物おかわり!」 あれ? 気が付くと、俺は、グラスを片手に熱弁をふるっていた。 「てかさ、カオル。結婚式って言ったらさ、青のドレスじゃね?」 「青? ああ、悪くないな」 カオルは、酔っているせいか頬がピンクに染まっている。 あいつの頬に触りてぇな。 「綺麗だし、色っぽいしさ。てか、俺達、何の話してるんだっけ?」 「ぶっ! もう酔ったのかよ? 同級生の結婚式の時の話だろ?」 カオルの荒げる声に、少し目が覚めた。 そうだった。 中学の同期で、結婚一番乗りしたやつの話だ。 そっか。 そんな話をしていたんだっけか。 俺は、ぜんぜん酔っていないふりをして返事をした。 「おぅ、そうだった。そうだった」 「まったく、しっかりしろよケンイチ」 カオルは、すこし頬を膨らませた。 やめてくれ。 そういう、キュンとする可愛い顔。 マジで、お前を男って認識できなくなるからよ。 俺は、少し飲むペースを遅らせる為、グラスにはゆっくりと口をつけるようにした。 一方、カオルは、ガンガン、グラスを空けてお代わりをしている。 「ああ。てか、カオルつえぇなぁ。酒」 「そうでも無いけどな」 「いや、十分強いって」 カオルは、お代わりのグラスを受け取ると、話を続けた。 「そう言えば、あいつ。クスクス。結婚したら彼女にして欲しい事で何て言っていたか覚えているか?」 「なんだったかな?」 「一緒にお風呂に入りたいだって」 「おー、言ってた、言ってた」 思い出した。 その話は、ガチで言っていたのが周りの失笑をさそったんだ。 「そんなの結婚する前に毎日入ればいいのにな。ははは」 「本当にな」 「で、ケンイチだったらどうよ?」 「おっ、俺か?」 突然の質問に、俺は頭が真っ白になった。 やべぇ、頭がうまく働かない。 ちと飲みすぎたかな? 俺が、うーん、と唸っていると、カオルが俺のグラスが空なのに気づいた。 「なんだ、ケンイチ。酒ねぇな。お代わり頼んでやるよ」 「ああ、悪いな……」 よし、これで少しは時間稼ぎができる。 うーん。 そもそも、嫁さんのイメージが沸かない。女、女、女。 そっか。 もしも、カオルが嫁さんだったらで、とりあえず想像すればいいか。 よし、こいつにしてほしいことな。 目の前のカオルをじっと見つめる。 カオルは、店員から俺のお代わりのグラスを丁寧に受け取って、お辞儀をしている。 本当に、カオルは女みたいだな。 お(しと)やかで、優しい、いい奥さん。 そこで、ふと思いついた。 「よし、分かった。俺がしてほしいこと」 「おう、なんだ?」 「裸エプロンだな」 「ぶっ! それ一緒にお風呂と同レベルじゃねぇか! ははは」 「うっせい! でも、まぁ、そうだな。ははは」 確かにカオルの指摘どおり同レベル。 でも、マジで、こいつに裸エプロン着せたら超萌える。 間違いない。 俺とカオルは、二人してしばらく大笑いしていた。 ああ、それにしてもよ、カオル。 お前と酒を飲むと、なんで、こんなに楽しいんだろうな……。 やっぱり、俺、もしかして、カオルのこと……。 いや、いや。こいつは、男だ……。 「ははは。やっぱり、飲みすぎだ!」 「へ? 何だ突然。何がおかしいんだ? なぁ、教えろよ!」

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