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4-2 カオルの部屋 ~カオル~
時間は、少しさかのぼる。
オレは、バーのテーブルに突っ伏して、いびきをかき始めたケンイチに、ため息をついた。
まったく、デート中に眠るなんて。
でも、なんて幸せそうな寝顔しているんだ。
ふふふ。
まぁ、それだけオレと一緒にいて楽しかったってことなんだよな?
タクシーを呼び、自宅まで連れてきた。
ケンイチを部屋に運ぶのも一苦労。
でも、親切なタクシーの運転手が手伝ってくれた。
「これで、大丈夫ですか? お客さん」
「はい。助かりました。ありがとうございました」
オレは、女声でタクシーの運転手に礼を言った。
バタンと部屋の扉が閉まると、ふぅ。とため息をついた。
オレの家は、広めのワンルームマンション。
その部屋の壁に寄りかかる、ケンイチ。
不可抗力とはいえ、ついに、ケンイチを自分の部屋に連れてきてしまった。
間近でケンイチの顔を観察する。
スースー寝息をたてている。
「ちぇ、よく寝てやがるな」
オレは、頬にちゅっと、キスをすると、風呂場に向かった。
シャワーを浴びながら、気持ちの整理をする。
もう、後には引けないな。
オレの部屋。
どう見ても、女の部屋。
女の服、化粧台、コスメ、それに、カワイイ淡い色使いの品々。
これを見られたら、鈍いケンイチでもさすがに気づくだろう。
姉貴のコスプレの趣味なんて嘘。
で、オレがガチで自ら女装しているって。
そう。
オレは、女装がデフォルト。
そして、女言葉がデフォルト。
もう、ずっと、女として生活をしているんだ。
ケンイチと話すときだけ、わざと口を荒くしているのだ。
ケンイチがオレの事を、ケンイチの中のオレと認識できるように……。
ふぅ。
シャワーヘッドに顔を向ける。
熱くて気持ちがいい。
ケンイチが目覚めたら、告白しよう。
もう、それしかない。
それで、拒否されたら、それはその時だ。
でも、さっきのバーで、ケンイチはオレのペニスを進んで触ってきた。
しかも、優しく丁寧に擦ってきた。
こんな風に……。
オレは、自分のおっきく固くなったペニスを弄 りながら、ケンイチが触った感覚を思い出そうとしていた。
ああ、あの時は興奮した。
あのケンイチがオレをいかせようとしたんだ。
気持ちいいし、嬉しい、恥ずかしいし、もう最高な気分だった。
あのままいかされてしまうかと思ったが、ケンイチはそうはしなかった。
それで、オレは確信した。
オレの事を大事に思っていてくれている……。
ノンケのケンイチの事だ。
ただのエロい気持ちだけなら、あのまま面白半分にオレをいかせたに違いない。
ほら、カオルはエロいなって。
でも、ケンイチはそうはしなかった。
それどころか、いきそうなオレを優しく抱き締め、頭まで撫でてくれた。
「ごめんな、そして、よくがんばったな。とても可愛かったぞ」
そんな事をいいたそうに……。
だから、ケンイチは、オレの告白を、オレの思いを、もしかしたら受け入れてくれるかも知れない。
そう、信じたい……。
オレは、ペニスの先端を手のひらで押さえ込みわざと窮屈にさせた。
そう、さっきまでレディースのショーツの中でそうあったように……。
そして、ケンイチがしごくように、優しく丁寧に、そして激しく乱暴に少しづつ嬲 る速さを上げていく。
あっ、気持ちいい。
ケンイチ、ケンイチ。
そんな、触り方、ダメ、ダメ……。
でっ、でも、気持ちいいっ……。
もっと、もっと、あっ、あっ、あんっ。
好き、大好き、ケンイチ、あっ、オレをいかせてっ……お願い……。
あーっ……!
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