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最終話
すごい質量のものが、遠慮なしにぐいぐい入ってきた。
呼吸もできない。
「……っ…」
「大丈夫? 苦しい?」
ぶんぶんと顔を横に振る。
「あー……晴斗、可愛い。ごめん、めちゃくちゃ可愛い。ほっぺたピンクになるの、問題だよそれ」
「っ、」
何か返事したいけど、声が出ない。
「……これで全部。痛くない?」
口は結んだまま、首を横に振る。
「動くよ。たぶんここからは、最初死ぬほど苦しいけど、そのあとやばいくらい気持ちよくなるから。お楽しみに」
体を倒してキスしてきた……と思ったら、口の中を犯されるみたいに荒々しくなぞられた。
「……っ、はぁっ、んんっ、はあ」
息継ぎに口を開いたタイミングで、透さんが腰を振り始めた。
「ぁああ……っ」
上ずった声が漏れる。
体を起こし、俺の太ももの付け根を掴んで、カクカクと小刻みに揺らす。
揺さぶられる反動で、奥の方をぐっぐっと突かれた。
「ぅ……あ、」
予言通り、めちゃくちゃ苦しい。目を開くこともできず、シーツをぎゅっと握りしめる。
しばらくその状態が続いていたら、だんだん中の可動域が広くなっていく感じがして、動きがスムーズになってきた。
「ほら、晴斗。ちょっとずつ気持ち良くなってこない?」
「はあ、は……ぁ。まだ分かんな……」
「これは?」
「ん…はぁっ、や、んぁ」
「じゃあこっち」
「あぁっ、だめ、あ……」
「晴斗、嘘ついちゃダメだよ。ほんとはどっちも気持ちいいでしょ」
「わ、わかんな……ぁ、ああっ、」
ほんとに分からない。どうなってるんだか全然分からない。
「この方がいい?」
「ひぁッ……、あぁ」
「お、良い感触」
「んん、はぁ、あ、やだ……あン、透さん、」
「大丈夫、気持ちいいから」
そう言って透さんは、上の壁をえぐるように中を突きはじめた。
「あぁああっ、……ッあん、や、なんか……あ、はあ、……ん、ンッ、はあ」
「可愛い」
「……はあ、やだむり、ん、はあっ、」
理性がぶっ飛びそう。
うっすら目を開けると、透さんが、ゾクゾクするような目でこちらを見下ろしていた。
ダメ。もう無理だった。
「あああっ、きもちいい、っああ……、なか、して、……ッん、はあ」
「どうして欲しいの?」
「つよく、はぁ、あぁ……ッ」
「こうかな」
奥をめがけてスピードをつけてガンガン突かれると、絶叫に近い嬌声を上げてしまう。
「あああぁあ……ッ、とおるさ、……ああっ」
「晴斗、中、めちゃくちゃ気持ちいい」
「ん、ン、はあっ、きもちい、あぁ……はあ、ああああっ」
何度も何度も、緩急をつけて。
透さんは、俺が限界に達しそうになるのを察知すると動きをゆるめ、また物足りなくなってねだると、めちゃくちゃに抱いた。
「ね……、やばいくらい、気持ちいいでしょ?」
「ん、んんっ、はあ、もうだめ……っ、変になっちゃうからぁっ」
イキ方が分からないから、ただただ気持ちいいのが続くだけ。
このまま続けられたら、本当におかしくなる。
「あー……晴斗、オレもそろそろ無理。イッていいかな」
ガクガクとうなずく。
透さんは、俺の腰をがっちりホールドして、パンパンと音が鳴るくらい、強く腰を打ち付けた。
「ああっ、あん……っああッ」
「イク、……ぅ、…………ッ……!……」
体重全部を乗せた状態で、熱を放った。
5秒ほど息を詰めていた透さんは、はあっと大きく息を吐くと、自身をズルリと抜き、俺の勃ち上がったペニスを握った。
「ひぁっ」
「ほら、晴斗。ごほうび。よくがんばったな」
うれしそうに、いきなりトップスピードでしごき始めた。
「ああああ……ッ」
「いいよ、イッて。苦しかったろ」
「ああん、ンッ……ああ、イッ……ああっ」
「5秒数えるから、我慢して我慢して、ゼロになったら。いい?」
透さんは、俺の乳首をぎゅうぎゅうつまみながら、カウントダウンを始めた。
「5……4……」
「んんッ、ん」
「3……まだまだ、我慢して」
「はぁ、や、んんッ」
「……2、……ほら、いーち……」
「ぁあッあっ」
透さんが、俺の耳元にくちびるを寄せた。
そして、低い声でぼそっと。
「……ゼロ」
「っ……あああああああッ!」
あごが跳ね上がり、腰がビクビクと波打つ。
熱いものが飛び散っているのに、透さんは手の動きを止めない。
「あッ! や、もぉ、イッてる!……あああっ!……ぁああッ……!」
「可愛い、晴斗」
「やぁッ! ん……あああっ!……!…………ッ……」
「気持ちよかったね?」
「……んんッ……はあっ……はあ、はぁ……」
徐々に手のスピードがゆるめられ、最後の1滴まで丁寧にしぼりとられたところで、全身の力がガクッと抜けた。
適当に後片付けしてぐったりしていると、裸のままの透さんがすり寄ってきた。
肌同士がくっつくと、心地よくて気持ちいい。
「……あの、俺、もやもやしてること溜めてるの無理なタイプなんで、過去のこと根掘り葉掘り聞いてもいいですか?」
「えー? なんだろ。まあ、答えられることなら、どうぞ」
透さんの顔のところへ手を伸ばし、頬をむにむにとつねる。
「透さん、なんでそんなにエッチうまいんですか? その先輩以外にも、友達になりたい男全員としてたとか?」
「んなわけないだろ。そいつも2~3ヶ月だし」
「じゃあ女の子?」
「人並み人並み」
この顔のひとが言う『人並み』は、なんか信憑性に欠ける気がする。
「何人?」
「6。付き合った子としかしない」
意外だ。このルックスだったら、ワンナイトで300人くらいやってますとか言われても不思議はないのに。
でも、ここでふと、疑問が浮かんだ。
めんどくさい人間関係を嫌って普段ニコリともしないのに、どうやって女の子と付き合うに至るんだろうか。
「ほとんど笑わないのに女の子と付き合えるんですか?」
「彼女の前では笑うけど」
「笑わない状態で付き合い始めんの?」
「まあ、気に入れば」
気に入れば……?
「え、しゃべったことない子に告白されるってこと?」
「ほぼ全員そうだね」
「何だよその人生!」
理不尽さにブチ切れそうになったところで、大笑いされた。
「だからいいじゃん。オレ初めてだよ、付き合って欲しくってこんな必死になったの」
頬ずりしてくる透さんの顔を、無理矢理つっぱってどける。
「俺なんかのどこがいいんですか」
「んー……怒ってくれたとこ? かな?」
つっぱるのをやめて、透さんの顔を見た。
親に頭をなでられた子供みたいな、幸せそうな表情をしている。
「オレのこと考えて真面目に怒ってくれるひとなんて、いたことなかったし。うれしかった」
「えっと……」
何と答えていいやら分からず言葉を引っ込めると、ぎゅうっと抱きしめられた。
「そもそもあんな話、他人にしようと思ったこともないし。もっと言えば、なりゆきとはいえ、泊まりに来た部下に素でしゃべっちゃうなんてのも、いままでのオレではありえない話なの。晴斗は最初からなんか違った」
ビールを飲んで第一声が、『つっかれたー……』だったのを思い出した。
新入社員相手だから油断したのかと思っていたけど、そんな風に特別だと言われたら、途端、照れてしまった。
「雪で電車が止まるって決まった時点で、始まってたのかもね。オレたち」
「なんでですか?」
「こんなことでもなきゃ、晴斗がうちに泊まりにくるなんてないだろ? 奇跡奇跡」
「うん……そっか。そうかもね」
東京がマヒした日、俺たちは、ささやかな愛を育み始めた。
<終>
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