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ダンジョン編ー見習い騎士メルト― 第8話※
「はあ…はあ…」
肩で息をしてると、ヒューの浄化の魔法が、身体をすっきりさせていく。気持ち悪くなったりしない。むしろ、心地いい。不思議だ。
「じゃあ、ご飯食べようか?今仕度する。」
ヒューはどこかに木剣をしまうと、何もなかったテーブルに料理を並べる。スープは湯気が出ていて今作ったばかりに見える。
え、確か、打ち合いになって相当時間が経っていたけど。なんで、出来たてなんだろうか。
「いただきます。」
聞いたことのない食前の祈りをしてから、ヒューは料理に手を付ける。
自分も、目の前の料理に舌包みを打つ。スープは不思議な味がした。琥珀色のスープで、卵が浮かんでた。
メインは鶏の肉だと思うが、まず見た目が黒いというか、茶色に染まっていて、味付けが、しょっぱいのに甘かった。
香辛料など、胡椒くらいで、胡椒は高級品でほとんど庶民は口にしない。贅沢といわれてるレストランで食事をした時くらいしか、口にできないのだ。
でもこの味は何だろう。食べたことのない味だが、美味しい。パンも出されていてスライスされていた。柔らかい白いパン。それに挟んで食べた。物凄く美味しかった。
ヒューを持ち帰りたい。騎士団で料理番してくれないだろうか。無理だな。香辛料をふんだんに使えるということは金持ちか、貴族だ。少なくともラーン王国では庶民のレベルにはいない。それとも冒険者はもうかるのだろうか。
色々考えてても手と口は動いていて、あっというまに食べてしまった。
「美味しかった…」
とうっとりとしていったら、ヒューは嬉しそうに笑った。
「嬉しいよ。喜んでもらえたなら作った甲斐がある。」
片付けながら、ヒューはそう言って、終わって立ち上がると俺の手を引いてテントへ向かった。
「お風呂入って寝ようか。」
ヒューは笑顔でそういった。
そうして俺はまた、ヒューと一緒にお風呂に入ったのだった。
とりあえず手順はわかっていたのでヒューに任せた。自分で洗いたかったのだが、手を出す暇がなかった。
前と同じように一緒に湯船に身を沈めると、やっぱりヒューの股間が気になった。さすがに視線に気がついたのか、何とも言えない顔でヒューは俺を見た。
「あの、メルト君?どうして俺の股間をじっと見てるのかな?」
と困ったように言ってきた。
「…大きいなあ、と思って。こんな太くて長いの見たことないかもって思って」
うん。俺の2倍はある、それ。触ってみたくて手を伸ばして握った。手の中でびくっと震えた。
「メ、メル、ト?」
戸惑った声が上から降ってきた。握って太さと感触を確かめる。質感は、そんなに変わらない気がしたけど…あ、なんだか堅くなってきた。え?なんか太く長くなってきた?
「メルト、そういうことは誘ってるように思われちゃうから恋人以外のメイルにはしないようにしなさい。」
ヒューの言葉に首を傾げる。ちょっと焦った顔をしてるヒューと視線が合う。
「誘う?」
更に首を傾げた俺にヒューは手で目を覆った。
「俺は、その、誰でも彼でも、ベッドに誘うことはしないけど、誤解する奴はいるし、はっきり言ってあまりよくないメイルは、すぐフィメルを襲ったりするし、その場限りのセックスをする奴は多い。メルトは不用意にそういうことしちゃダメだよ?好きな人とそういうことはしないとね?」
ヒューはおかしなことを言う。俺の国では恋人じゃなくてもセックスをすることはあるって聞いた。
伴侶になる前のお試しだって聞いた。それってダメなのか?
俺は眉を寄せて考え込んでいたらしい。手にヒューのアレを握りこんだままで。それは完全に堅くなって上を向いていた。
「触っちゃだめなのか?」
なんだか離したくなくて少しがっかりした顔をした。
「…メルト…」
なんだか、ヒューの声と目に熱があるような気がする。胸がドキドキする。ヒューとなら、してもいいかもって思ってる。でも、どうやってするか、詳細はわからないんだけど。
いまいち皆に聞いても想像できなかったっていうか。
「ヒュー、俺してもいい。でも、俺初めてだからよくわからない。」
言ったら、ヒューは、あーっと唸っているような声を出してガシガシと髪を乱した。
「俺だって、メイルだからな。可愛いフィメルに誘われて、その気にならないわけがない。でも、メルトと会ってまだ一日だ。俺はセックスするなら、まず恋人になりたい。ちゃんとメルトを大切にしたい。だから、今はしない。だけど、メルトが触りたいなら、触っていい。今はこれで勘弁してくれ…」
恋人じゃないとヒューはしないのか…?なら恋人になればいいのか?
「ヒュー俺、ヒューの恋人になってもいい…」
言ったとたんヒューが思い切り目をまん丸にして両手で顔を覆った。
しばらくそうして何かに耐えるような様子で、ぷるぷる震えていた。その間も俺はヒューのそれを握っていて、堅くなったままでいた。
「メルト…俺、伴侶がいたんだ。死に別れて、今は伴侶も恋人もいない。だから、その…メルトは俺の物凄い好みだし、その好きになると思う。だけど、今、その、恋人ってことになるとちょっと違うと思う。メルトも、違うだろう?まずその、手順を踏んでからにしないか?」
真剣な顔で言うヒューに俺は黙って言葉を聞いていた。でも、違うっていうことはないと思う。
俺は首を傾げて言葉を待った。
「まずはお互いを知って告白するところから!ね?」
告白。告白か…。
「俺はヒューと恋人になってもいいくらいヒューを気に入ってる。特に料理。剣の腕も凄い。側にいたい。…でいいのか?」
またヒューは目を見開いて俺を見た。ヒューは表情筋が豊かだな。俺は表情筋が死んでると言われているが。
「まあ、俺はそういうのには疎いし、話し下手で愛想がないからヒューが断るのも仕方ないが…」
そういいかけるとヒューはがしっと俺の手を握った。
「いえ、ぜひお願いします!!」
思い切り、首を縦にヒューは振ったのだった。なんで敬語?
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