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ダンジョン編ー見習い騎士メルト― 第14話
翌朝、起きたらヒューが上機嫌で朝食が豪華だった。食べたことのないものがあった。
エッグベネディクトとかいう、パンの上にハムとゆでた卵の上に黄色のソースがのった物があった。黄色のソースがめちゃくちゃ美味しくてお代わりをした。
サラダも果物のジュースも美味しかった。ベーコンもカリカリに焼かれていて美味しかった。
今日は一旦探索を休んで身体を休めようということになった。鍛練をしたいというとヒューは付き合ってくれるそうだ。明日からの探索の打ち合わせをしてから剣の相手をしてくれるということだ。
期待した目で見てたらメルトはほんとに剣が好きなんだね、と言われた。
食事をしたらテントに戻ってテーブルに座った。ヒューが紅茶を出してくれた。
それを飲んでいるとヒューがどこからか地図を出し、テーブルに広げた。
「今いる階層の地図だ。飛ばされた最初の部屋が起点になっていて、今までマッピングした通路はここ、出てくる魔物の分類は通路を色分けした。大別すると森林系とゴーレム系だったが、まだ探索してないこの部分はどんなのが出てくるか、わからないけどね。多分この先に階段か、ボス部屋があると思う。ボス部屋があったら出られる可能性は高いと思う。」
地図は壁が黒で表されていて、この部屋の形状を青で示されていてその青は安全の青だと言われた。
そこを伸びる通路はしばらくまっすぐ伸び、それから3方向に別れそれぞれがまた複雑に別れていき、迷路のようにところどころ行き止まりがあり、そういったところは時折休憩した広場になっていた。
全体的には円形の構造のように思えた。そこを街の道のように通路が走り、俺達のいるこの部屋の対極上に未知の空間があった。
この地図が頭の中にあったのか、と思うと地図のスキルって凄いんだと思った。
でもこれ、いつの間に書いたんだろう。色付きって凄いな。そんな道具持ってたのか。
「で、明日以降はここからこの先に向けてこの、黒い部分を潰していく感じになっていくと思う。そういえばメルトはステータスカード、持っていた?」
ステータスカード? きょとんとして首を傾げてヒューを見るとヒューが何やらカード状の物を出してきた。冒険者のギルド証?最初に見せてもらってたけど…?
「これは冒険者カードで冒険者ギルドで発行されるギルド証だ。メルトも見たことあると思う。冒険者ギルドのカードはステータスカードにもなっていて自分の能力を見られる。まあ、数値化したものなんだけど、あくまでも目安って感じかな?実際数字では測れない強さっていうのもあるしね。ただスキル名や加護なんかは鑑定の能力や、教会のスキル付与なんかも参考にしてるはずだから間違いはないよ?このカードのステータスは他人に見られたくない部分は隠せる機能がついている。で、アルデリア王国では5歳の誕生日に教会で配られる。ラーン王国ではどうなのかな?」
「…ステータスカードっていうのはないと思う。身分証はコモンカードって言って、出身地と名前と年齢が書いてあって、王国の国民だっていうカードがあるだけだし。騎士は騎士団員証って言うのが配られて、コモンカードの代わりになっているけど…その、ステータス?って言うのは見られないと思う…」
マジックポーチから団員証を出して渡した。ヒューは確認すると頷いて戻してくれた。
「じゃあ、メルトにステータスカードをあげる。これで確認するといいよ。」
ヒューは俺にギルド証みたいなカードを渡してくれた。銀色のカードで剣と同じような材質だった。
「魔力を通すと、メルトのステータスがカードに記される。頭の中で、隠蔽って思うとメルト以外は見られないから安心して?」
渡されたカードを確かめていたらそう言われた。魔力を流す…か。
「俺、出来ない…」
「あ、メルト魔力流せないんだったっけ…じゃあ、血を垂らして?」
さらっと物騒なことを言われたような気がした。
「ああ、針で刺した程度の量でいいから…」
針をくれた。こんな物まで持っているのか。
指先を突いて血を出してカードにつけると一瞬光ってカードの表面に俺の名前が刻印された。ヒューに隠蔽って言われたのを思い出して隠蔽と思い浮かべた。
「これで…いい?」
カードをヒューに渡すと、頷いて戻された。
「ステータス見る時は頭の中でステータスって思い浮かべれば見えるよ。レベルっていうところは強さの段階かな。HPは生命力でMPは魔力量。他にも項目はあるんだけれどそこらへんは参考程度だな。重要なのはHPとMPとレベル。レベルって言うのは個体の階梯を表していて、どのくらいの経験を積んだかっていう目安。普通の戦うこともない、街に住んでいる人のレベルはほぼ年齢と同じになる。ステータス値は基準はそれぞれ100。HPは10にレベルを掛けた値かな。スキルや訓練で補正がかかったりするから一概には言えないけどね。MPも同じ。でもMPは生まれ持った器の上限があって一番個性が出やすいところかな?」
俺にはちょっと難しいかもしれない。
「で、もう一つレベルの上がる条件があって、魔物を倒すこと。魔物から生命力を奪うとか魔素を奪うとかいろいろ説はあるんだけど、俺は経験値をもらえると思っている。経験値は訓練や体を鍛えたり、本を読んだりしてもたまる。どんなことも、経験になって、繰り返すことでスキルが発現したりする。スキルを使うとスキルの熟練度が上がる。ちなみに俺の持っている料理のスキルはMAXだからね!」
は?料理のスキルがMAX??料理のスキルって料理人が持っているとそのレストランは間違いないって言われる、料理人に現れるスキルじゃないか?それも、段階がある?
熟練度が限界?どうりでヒューの料理は美味しいはずだ。
やっぱり騎士団に持ち帰りたい。本気で。来てくれないかな。物欲しげに見つめていると、ヒューが照れた。
「あー。まあ、メルトが強くなりたいなら経験を積めばいいってことだな。鍛錬も、魔物を倒すのも、経験になるから。」
俺は思い切り頷いた。思わず立ち上がって、ヒューの腕をつかんだ。
「…鍛練…」
ヒューはしまったという顔をしてから笑って頷いてくれた。鍛練は楽しくてヒューが休ませてというまで続けてしまった。
ヒューは何でこんなに剣を扱えるのか聞いたら答えてくれた。
「俺の家の食客に剣聖がいてさ。勝手に弟子にされて死にそうになるくらい扱かれた。ある程度師匠が満足した段階で魔法の道に進むからって言うことで修行はやめさせてもらった。剣聖って剣の事しか考えてない脳筋なんだよな。」
剣聖!??なんだそれ、羨ましい。その称号はほんとに剣で最高に強い人にしかつかなくて、当代で一人しか持てないはずだ。今の剣聖って誰だっけ。羨ましそうに見つめてたらヒューが苦笑した。
「確か、元は帝国にいて亡命してきたんだよな。戦争に行くのは嫌だって。どこかのダンジョンにずっと潜っていて、出たら徴兵されそうになって、追手を全員ぶちのめして俺の国に来たそうだよ。」
帝国?あの物騒な、いつも戦争をしている国?よく隣の国にもちょっかいを出して来て、騎士団が同盟関係の軍事協力で、帝国と剣を交えているけれど、あの帝国?
「…あれ?…ヒューの国ってアルデリア王国…」
首を傾げながら聞くと、ヒューは真面目な顔をして横に首を振った。
「いや、俺の故国はこの大陸の海の向こうの島国、ハイヒューマンの国、アーリウムだよ。俺は長命種なんだ。メルト。」
※剣聖※
帝国出身の剣士。帝国騎士の流派を学んでいたが剣技を磨くことと強さを求めることに夢中になってダンジョンに潜り続け、自力で限界突破を身につけ、種としての進化覚醒をし、上位存在のハイヒューマンになった。120歳の老爺から20歳代の若者へと若返った。そのため、ダンジョンを出たが家に戻った所軍に入れられそうになって、アルデリアへ逃亡。たまたま逃亡先に訪れていたヒューの両親と出会いハイヒューマンの国へと亡命。
名前はチャド。フィメルだが、今まで恋人がいたことはない。剣狂いの脳筋。
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