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ダンジョン編―大賢者ヒュー― 第6話※
メルトは剣術馬鹿だった。
いや、脳筋?ともかく修行や訓練が好きだというのは打ち合ってすぐわかった。師匠の剣と似ているからだ。とにかく修行してハイヒューマンにいたった人物なので、四六時中剣の事を考えてるような人だ。
打ち合いが進む度にメルトの視線が俺の動作を一つでも見逃すまいと見据えてくる。打ち合いの中で、俺の技を盗もうとしてくる。言われなくても、成長しようと努力してくる。
師匠が気に入るような子だ。
師匠はフィメルだから、まあ、会わせてもいいかな?でも、夢中になりすぎたらきっと俺、嫉妬するんだろうな。
俺はメルトの気が済むまで打ち合いを続けた。少しづつ、剣のぶれが修正されて、俺の動きをトレースするようになっていた。驚きだ。
メルトには剣術の才能がある。鍛え上げれば相当に強くなる。今は魔法を使えないが素の能力をあげる好機でもある。基礎を十分に鍛え上げ、そこに身体強化魔法を習得すれば。
強力な騎士の誕生だ。
少しでも手助けできればいい。この、ダンジョンにいる間に。
鍛練をするなら余力を残した方がいいか。明日からのダンジョン探索の予定を立てる。
肩で息をしているメルトに浄化をかけて、汗を綺麗にする。動いたし、お腹が空いているだろう。
今日はこのままここで食べよう。
野営用のテーブルセットに作った夕飯を並べる。メルトの瞳が輝く。スープを飲んで、複雑な顔をするがすぐに満足気な表情になった。
あ、味付けが醤油使ってあったっけ。メルトの国にはない味だった。
パンに挟んで食べてるなあ…照り焼きサンドとか、作ってみたらいいかも。マヨネーズと新鮮レタスを一緒にバンズに挟んで。
「美味しかった…」
とうっとりとして呟くメルトは超可愛い。癒される。
「嬉しいよ。喜んでもらえたなら作った甲斐がある。」
食器を片づけてしまうと立ち上がった。メルトの手を握って促すと大人しく付いてきてくれた。テントに入ると浴室へまっすぐ向かった。
「お風呂入って寝ようか。」
下心を隠して俺は笑顔で言った。
昨日のようにメルトを丁寧に洗った。洗っている間メルトの裸を堪能した。メルトはわかってないだろうなあ。
触りたくってうずうずした。股間に熱が集まりそうになって、慌てて思考を逸らした。
一緒に湯船に身を沈める。メルトの頬が上気して少し色っぽい。視線を外していると股間に視線を感じた。メルトが股間をガン見していた。待って。俺ならともかく、フィメルだよね?メルト。
「あの、メルト君?どうして俺の股間をじっと見てるのかな?」
珍しいのかな?それとも興味あるとか。え、俺に気がある…わけはないか?なんとなく恋愛に興味あるって感じじゃないし。困ったような気持ちは声音に出た。
メルトが俺の股間から視線を外さずに俺としては意外な言葉を言った。
「…大きいなあ、と思って。こんな太くて長いの見たことないかもって思って」
え、じゃあ、他のは見たことあるの?と一番に疑問が浮かんだ。しかも手を伸ばして握ってくる!!ええ~待ってくれ。
「メ、メル、ト?」
戸惑って名を呼ぶが、メルトの攻撃は収まらなかった。握られて確かめるように手が上下に動いた。
俺は敗北し、俺の息子は素直に勃ちあがった。
メルトはただ単に興味本位なんだろうなあ。このままじゃ暴走しそうでまずい。
「メルト、そういうことは誘ってるように思われちゃうから恋人以外のメイルにはしないようにしなさい。」
子供を諭すような口調になってしまった。まあ、かなりの年齢差だから、そういう感じになりそうなんだけど。
顔をあげたメルトと目があって、誘う?と何もわからない感じできょとんと首を傾げた。
やべえ、可愛い!!
あまりの破壊力に、俺は手で目を覆った。
わかってないの?メイルが危険ってわかってないの?襲っちゃうよ?マジで!
「俺は、その、誰でも彼でも、ベッドに誘うことはしないけど、誤解する奴はいるし、はっきり言ってあまりよくないメイルは、すぐフィメルを襲ったりするし、その場限りのセックスをする奴は多い。メルトは不用意にそういうことしちゃダメだよ?好きな人とそういうことはしないとね?」
そう説得している間も体は正直で俺の息子は節操もなく完全に上を向いてた。そしてメルトは離してくれなかった。
メルトは俺の言ったことに眉を寄せて考えてる様子だった。
メルトって多分、色々考えてるけど、口にする言葉は少ない。出た言葉の意味をちゃんと捉えないと、誤解してしまうかもしれない。
「触っちゃだめなのか?」
がっかりした顔で言ってくるメルトに、理性はほぼ、仕事を放棄していた。
「…メルト…」
メルトは、誘っているのか?それとも、ただ単にメイルへの興味なんだろうか?
この世界には娼館があるし、前世の男女みたいに恋人にならないまでもセックスしたりは割とオープンだ。それはわかっている。でも俺は、セックスは好きな子としたいし、好きな子に他のメイルとセックスして欲しくない。独占欲は強くて、大切にしたい。
だけど、つり橋効果っていうか、こういう状況で安易にくっついていいかっていう気持ちがある。だから、説得しないと。
俺の息子を握ったまま、色っぽい目で見てるメルトを。
本能は据え膳食えって言ってくるけど!
黙ってみている俺にメルトは更に爆弾を投下した。
「ヒュー、俺してもいい。でも、俺初めてだからよくわからない。」
マ ジ か!!
でも『わかってない』って!やっぱり、危険性をわかってないんだよ。
俺は唸り声をあげて、本能と戦った。
「俺だって、メイルだからな。可愛いフィメルに誘われて、その気にならないわけがない。でも、メルトと会ってまだ一日だ。俺はセックスするなら、まず恋人になりたい。ちゃんとメルトを大切にしたい。だから、今はしない。だけど、メルトが触りたいなら、触っていい。今はこれで勘弁してくれ…」
よし、納得してくれ!!まだ離してくれないけど。暴発したらどうしよう。
「ヒュー俺、ヒューの恋人になってもいい…」
メルトの言葉に思い切り目を見開いた。その、恋人って意味、わかってる?ちゃんと俺の事、好きなの?これ、恋人になったらするって思ったからじゃないの?
俺は両手で顔を覆い、本能がもう食っちゃえよ。というのに抗った。よし、もう一回説得だ。
「メルト…俺、伴侶がいたんだ。死に別れて、今は伴侶も恋人もいない。だから、その…メルトは俺の物凄い好みだし、その好きになると思う。だけど、今、その、恋人ってことになるとちょっと違うと思う。メルトも、違うだろう?まずその、手順を踏んでからにしないか?」
深呼吸して、目を開けてこれで納得して欲しいというと、更にメルトは首を傾げた。
「まずはお互いを知って告白するところから!ね?」
わかって、メルト!
「俺はヒューと恋人になってもいいくらいヒューを気に入ってる。特に料理。剣の腕も凄い。側にいたい。…でいいのか?」
更に爆弾が投下されて言葉を失った。完全に理性は破壊された。
「まあ、俺はそういうのには疎いし、話し下手で愛想がないからヒューが断るのも仕方ないが…」
いや、断ってないから!慌てて手を握ってそんなことはないという目で見つめた。
「いえ、ぜひお願いします!!」
色々な事が吹っ飛んで、もう、俺はメルトと恋人になることに決めた。
一目惚れなんだし、メルトから告白させちゃったし。メルトには、これから俺を本当に好きになってもらえばいい。胃袋は掴んでるのはわかったし。
よし、明日からいろんな料理作って、もっと俺から離れられないように頑張ろう。
でも風呂から出よう。上せそうだ。
一旦上がってちゃんと寝間着に着換えて寝室に、『手を繋いで』向かう。メルトは素直に握り返してくれた。可愛い。だめだ。顔が緩む。
ベッドの上に二人で対面で座る。こちらを見るメルトの目に照れて視線が泳ぐ。こほんと咳払いして、息を吸う。そしてメルトの両手を握った。
よし言うぞ。
「メルト、俺はその、きらきらした宝石みたいな目が、好きだ。意志の強さと、性格が出ているんじゃないかと思う。その、ダンジョンでお互い罠にかかって出会ったのは運命じゃないかと思う。俺の方こそ、恋人になって欲しい。ここを出ても、メルトと一緒にいたいと思う。」
メルトをまっすぐ見て、真剣に言った。後半フラグっぽいけど、言っとかないといけないことだ。
メルトの顔がみるみる赤くなっていく。よかった。ちゃんとわかってくれた。
絞り出すように俺の名を呼ぶメルトの唇にキスした。
吸い上げて、そっと離す。メルトが息を吐きだした。息止めてたかな?
「キスしてる時は、鼻で息をするんだよ?」
チョンと鼻を人差し指で突いた。目が寄るのが可愛い。
「鼻…」
「メルトはキスは初めて?」
「親からは顔とかは…」
「それは親愛のキス。恋人のキスは…俺が初めて?」
初めてだと嬉しい。俺だけのメルトだ。
恥ずかしそうにメルトは頷いてうんといってくれた。
愛しさが込み上げて、抱きしめた。背に回された腕に、ますます嬉しくなって、心にあったかいものが広がる。ギュッと力を入れた。
ああ、出会った。俺の伴侶だ。一生大切にする。できればハイヒューマンに進化してもらって俺と同じ時を生きて欲しい。
「もう一回、いい?」
そんな思いを込めて、目を閉じてくれるメルトにキスをした。
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