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ラーン王国編ー正騎士へー 拝謁式
「メルトおめでと~」
「おめでとう」
1月1日は俺の誕生日だ。新年へのカウントダウンと同時におめでとうの言葉をもらった。
「ありがとう……」
年の終わりから新年にかけてみんなで祝いをする。ご馳走を食べて、大人はお酒を飲み交わす。子供は少し、夜更かしができる。そんな特別な日だ。
王都ではあちこちお祭り騒ぎだ。特に今年は雪が降らなかったから、余計に盛り上がっているようだ。
昼には王様が王城のバルコニーに立って国民に顔見せする。そこへ大通りを門から正装をして騎馬に乗った騎士団が城へと行進し、バルコニーの正面の広場で王にお披露目をするのだ。
見習いから正騎士になった者達はその翌年に行進に加わって王に拝謁できる。もっとも、正騎士一年目の騎士達は全員参加できるが他の騎士は交代制だ。第一から第五まで毎年変わる。今年は第五だったから来年は第一になる。何か事件が起こっていなければこの順番は変わらないのだ。
戦争も雪深いこの時期は行われない。あるとしたら秋の収穫の終わった直後か雪解けが終わった春が多い。歩兵は徴兵された民兵が主になるからだ。それはほとんどが農民のため、収穫時期は避けるのが通常だからだ。
最近は戦争がなくて平和だが、多分そろそろあるだろう。
帝国は戦争を繰り返す国だから。
俺が無事春に正騎士になれたなら、見学側は最後になるから見に行きたい。
「これは家族みんなからのプレゼント。」
ルティが代表で包みを渡してくれた。
丈夫そうなブーツだった。深い茶色のちょっと値が張るようないいブーツだ。
「こんな高そうなの……いいのか?」
「何言ってんだよ。メルトは何年もプレゼントもらってないじゃないか。帰ってこないからね。今回は帰ってこなくても、お祝いであげるって決めてたんだよ。正騎士になるのに、ちゃんとした靴の方がいいからね。メルトは全然オシャレとかしないから心配だったんだよ。」
ルティが一気に捲したてる。俺は、圧倒されながらも頷いた。嬉しい。
「ありがとう。嬉しい。」
そういうと家族全員が笑顔になった。俺は愛されてる、と嬉しくなった。
家族全員で拝謁式に行くことになった。人も多いし、道が滑りやすいから、お腹に卵がいるルティが心配だったけれど、ちゃんとイサイがフォローするように支えてた。
もうすでに道には見学者がいっぱいいて今か今かと来るのを待っていた。
俺たちは少し出遅れたみたいだったが、なんとか見えるところに収まることができた。後から後から増えて来る見学者たちで、寒いというより暑くなった。
中にはお酒を片手に見物を決め込んでいる人もいるようだ。
「来たぞ!」
「今回は赤の第五って話だけど……」
「去年の第四はマントが黄色であまり目立たなかったよね……」
正装のマントの色は部隊によって色が違う。第一は白、第二は青、第三は黒、第四は黄、第五は赤だ。
マントの色に憧れて希望を出す者もいる。確かに赤は白銀の鎧に映える。
そうして見ていると門の方から行進して来た第五騎士団が見えてきた。先頭は第五の隊長が、見事な軍馬に乗って進んできる。その後ろに第五の団旗を掲げた副団長が続き、以下3列に並び、一糸乱れぬ行進をして目の前を通り過ぎる。最初に見たのは第一騎士団だった。白いマントがはためいて白銀の鎧と一緒に輝いた気がして、憧れた。
「かっこいい……」
「騎士団は誇りだな。我が国の……」
ああ、やっぱり、凄い。俺も、あの中に入れるんだろうか。一番後ろの列に、前年度聖騎士になったなりたての騎士が並ぶ。 来年は俺もあそこにいるはずだ。正騎士に叙されたら。
なりたての騎士たちは緊張した顔をして慣れない様子で馬を歩かせている。
見習いのうちは馬に乗る訓練を年に一度くらいしかしないが正騎士になればそれが訓練の半分ほどを占めるようになる。馬の上で武器を操れない騎兵など、役に立たないからだ。
俺も騎乗訓練をしたが最初はなかなかうまく乗れなかった。翌日下半身が、筋肉痛で動けなくなりそうなくらいだった。今はそこそこまともに乗れる。
最後の騎士が通り過ぎて騎士団の背が小さくなっていくと、見物人は散っていった。
「じゃあ、帰ろうか。冷えたね。屋台のスープでも買おうか?」
ダッドがそういって、屋台めぐりになった。串焼きの肉屋、スープなどが売られていた。人が集まるとき屋台は必ず営業している。
俺の方が給料が高いはずだけど、ダッドが買ってくれた。そういう子供扱いしてくれるのが、なぜか嬉しかった。久しぶりに家族と過ごせて、最終試験のクサクサした気分は忘れてしまったのだった。
そうしてその夜、俺は夢を見たのだった。
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少し短いですが別サイトでは短編としてあげたエピソードを差し込みました。
そのため、構成が違っています。
よろしくお願いいたします。
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