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ラーン王国編―終章― 浮気した! ※

 ぐるぐると、気持ち悪さが回っている。  一日寝ていたけれど、結局治らなかった。今もうなされている。  夢と現実が混濁しているような気がした。  俺の中で17歳の俺が泣いている。  どうして気づかないのか、と。  ---じゃない。  ヒューじゃない。  ヒュー!  そうだ、ヒューだ。  どうしよう。ヒュー以外とセックスした。  それって浮気だ!!  どうしよう。こんなにこんなにヒューが好きなのに。  ヒュー!ヒューがいる。  思わず駆け寄った。目線が少し下になったけど、これはヒューだ。  本物のヒューだ。 「ヒュー、俺、浮気した。」  ヒューが首を傾げた。 「ヒューだと思って、勘違いした。ヒューが迎えに来てくれたって思った……だけど違った。許してヒュー……」  思わず抱き着いた。今の体格じゃ、抱きしめたに近いけど。  感じる魔力や気配は、間違いなくヒューだ。魔力がすごく心地いい。 「メルト!ごめん。俺が思い出せないばっかりに。許しを乞うのは俺の方だよ?」  ヒューも思い出せない?だから、迎えに来てくれないのか?  でもそれを言うなら俺だって…… 「俺も、思い出せないんだ。こうしてると思い出せるのに。」  ぎゅっと抱きしめられた。ヒューの力は意外と強い。今の俺でも負けるかもしれない。でも、ヒューの好きな俺は昔の俺かもしれない。 「俺、フィメルらしくないって言われてる。ヒューはこんな俺でもいい?」  ヒューはキョトンとした顔をして、少し離れて俺を上から下まで見た。後ろに回っても見た。  そうして鼻息を荒くしてから、俺に言ってくれた。 「メルトは随分綺麗になったよ?この胸も、腕のしなやかな筋肉も、この引き締まった尻も。」  何で尻なんだ!?  綺麗だって、俺は誰にも言われたことないぞ? 「ヒューは時々変なこと言う。」  恥ずかしくて視線をそらした。顔は赤くて、口は尖ってるだろう。  そうしたらチュッとキスをされた。 「……ん……」  だんだん、深く、舌を絡ませあうキスになる。  気持ちよくて体が溶けそうなキス。 「愛してるよ。メルト。」  涙が零れる。 「俺も好き。愛してる。ヒュー。」  そう答えると、何もない空間からあのテントの部屋になる。  俺はいつの間にかベッドに押し倒されていて、上からヒューが見下ろしている。  両脇にヒューの長い髪が垂れている。ああ、本物のヒューの髪はこんなに綺麗だ。 「俺が上書きする。だから、その相手のことなんか、忘れちゃえ。それに、メルトの中に、メルト以外の魔力は見えない。本当にしたの?」  俺は思い出そうとする。 「なんか、前を弄られて、勃ったかな?と思ったらひっくり返されたかな。あ、なんか、ヒューのより短くて細いなって思った。ほら、ええと、素股っていうのかな?後ろから、間に入ってきたって思った…」  ヒューの顔が難しい顔になってる。 「それはセックスじゃないはずだけど、一歩手前だな。中に入ってないよ?メルト。中に入ってたら必ず、1週間は、相手の魔力が残るから。っていうか、そいつ殺していい?」  真顔で何を言い出すんだ。ヒューは。 「ダメ。一応先輩だし。俺が酔ってて朦朧としてたのが悪いんだし。」  ヒューを犯罪者にしちゃいけない。俺は必死で宥めた。 「そいつが絶対悪い。酔わせて何かするっていうのは犯罪だ。」  え、そ、そうなのか。じゃあ、仕方ないかな? 「それより気持ちよくして……ヒュー。」  俺は両手をヒューの首に回して引き寄せて、キスをした。  ヒューは、俺のを手で扱く。そうしたらあっという間に果ててしまった。  全然違う。ヒューの手は魔法の手だ。 「すごく、気持ちいい。」  嬉しくて嬉しくて、心が震える。後ろもすぐ潤った。 「じゃあ、ひっくり返すよ?」  ヒューは俺を四つん這いにさせて腰を少し上げた。足を広げられてヒューの前に後孔を晒した。 「うーん、いい眺め。尻の筋肉がこれでもかって引き締まってる。足のこの筋肉の稜線も素晴らしいね。よく鍛えたんだね。メルト。」  ヒューが、ちょっとおかしなことを言っている。筋肉が好きだったのか?でも、鍛えたってわかってくれてすごく嬉しい。 「恥ずかしい。もう、早くして?」  後ろからくすくすと笑う声が聞こえた。腰を支えられて、股間の柔らかいところを、逞しいヒューの熱いそれが擦っていく。 「あっ……き、気持ち、いい…」  先端が、双球を擦って裏筋へと触れていく。やっぱり、ヒューのはおっきい。 「動くよ?」  それにちゃんと俺のこと見ている。こうして声をかけてくれる。俺は頷いて、腿を閉じた。そこを熱い、ぬめった幹が何度も往復する。 「あっ……ヒュー……そこ、じゃなくて…後ろに……奥に、欲しい……」  後ろを向いて強請る。だって、もっと感じたい。ヒューとこうしていられるなら、ちゃんとしたい。  ヒューが嬉しそうに微笑む。その顔が好き。優しく俺に触れる手も。 「じゃあ、入れるよ?」  そうしてそっと俺の後ろに濡れた先端で触れてくる。それだけで奥から潤滑液が下りて中を満たした。 「……あっ……」  ぐっと逞しいモノが、中へ入ってくる。ああ、ヒューのだ。苦しいけど、愛しくてたまらない。  思わず締め付けてしまって、ヒューの呻く声がした。  嬉しい。感じてくれている。俺も気持ちいい。中に入ってくる魔力が、気持ちいい。  萎えていた俺のモノが勃ち上がる。背中にキスを落とされる。ああ、背中も感じた。  ああ、もう、どこもかしこも気持ちいい。 「全部入ったよ?」  俺の背中に胸を付けて、耳元で囁くヒューの声音はそれだけで、達してしまいそうになる。 「うん。わかる。嬉しい。」  後ろを向いて頷いた。ああ、大好きなヒューの顔が目の前にある。 「動くよ?」  ヒューの腰が引かれてまた俺の尻を叩くように押し付けられる。中をヒューの逞しいモノが内部を擦りながら往復する。  それだけでもうイきそうで、内壁がヒューを締め付けた。 「……あっ…あんっ……気も、ち、いいっ…イきそう……イっちゃうっ…」  俺はすぐに耐えられずに達してしまう。内部は、ヒューを離さないというように締め付けた。 「……くっ……」  ぐっと奥に突き入れられて、奥で熱いモノが叩き付けられた。ああ、ヒューもイってくれたんだ。 「……はあ。…はあ…」  俺にヒューが覆いかぶさってぎゅっと抱きしめてくれた。 「……メルトは浮気なんかしていない。俺のモノだよ?必ず迎えに行くから、待っていて?……」  涙がぽたぽた流れる。 「……うん。待ってる。」  でも、俺は結局、ラーンで待っていることはできなかったのだけれども。 「愛してる。メルト。」 「俺も、だ。ヒュー……」  それから俺たちは何度も愛しあった。お互い目が覚めるまで。 「ヒュー……」  俺は寝言を呟いたのかもしれない。  朝起きたら、寝ていて泣いたみたいで、顔が突っ張っていた。  夕べまでの気分の悪さが嘘のようで、すっきりしていた。  ミランに悪いことした。せっかくの休日だったのに。  もう、経験したんだし、気持ちよくもなかった。子作りの必要性があるまでしなくていいと思う。  だから恋人ができるか、結婚するまでしなくていい。  俺はそう決意した。リンド先輩とのことはリンド先輩の出方で決めよう。  どっちにしろ、俺はリンド先輩を好きなわけじゃないと思う。恋人的な意味で。 「メルト、起きた?大丈夫?」  目を擦りながら起き上がったミランが聞いてくる。 「うん。もうすっきりした。お酒は全部抜けたみたい。世話してくれてありがとう。」  お礼を言うとミランが起きてきて俺の首に手をまわした。 「何言ってんだよ?親友だろう?」  ああ、そうか、親友だった。すごく嬉しい。 「うん。わかった。ミランが二日酔いになったら、俺が看病する。あ、ミランはスラフのほうがいいのか?」  ミランの顔が真っ赤になった。 「何言ってんだよ?もう。ほら着替えてご飯食べに行こう。」  そうして行った食堂で、リンド先輩にあった。  普通におはようと言ってきて、親しいザハル先輩とオレグ先輩と一緒にテーブルに着いて食べていた。  ああ、リンド先輩にとっては俺はその程度の存在なんだと思った。  それから俺はあの夜のことは記憶の隅に追いやって、そのまま蓋をした。

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