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第29話 番外編 これから

草太、清隆、焔次はファミレのボックス席で顔を突き合わせて、何か話していた。 「なかなか、条件が合うのが無いね」 清隆は、スマホで検索しながらそう言った。テーブルには、コンビニで貰ってきた情報誌と注文した食事が所狭しと並んでいる。 三人は一緒に暮らすことに決めたので、早速は物件探しをしていたのだ。 「ここは、いいけど遠いし、こっちは広過ぎて高いし……」 草太がそう言う。色々調べているが、なかなか条件の合うものが見つからない。 おそらく男三人で生活というのは、あまり想定されていないのだろう。 狭すぎるか広すぎるかで丁度いいものがない。 あんまり、見つからないので焔次が面倒くさそうに言った。 「じゃあ、俺の家に二人が引っ越せばいいんじゃね?そこそこ広いし、なんとかなるだろ?」 「男三人だと流石に狭いよ。やっぱり一人一部屋は欲しいし」 焔次の言葉に、清隆は首を振る。 確かに焔次の家は広いし、ほとんど毎日通っていても問題は無かった。しかし、しっかり生活するとなると家具も増えるし窮屈だ。 「僕は物置でもいいよ。荷物も少ないし。あ、そうだ焔次くんのクローゼットとかどう?」 「はあ?」 「だって、結構広いし。焔次くんの匂いに囲まれて暮らすなんて最高じゃん」 草太がうっとりしながら言った。 焔次はお洒落好きだ。服も沢山持っていて、その服を仕舞うために、焔次の部屋にはかなり広いウォークインクローゼットがある。確かに頑張れば人一人くらい眠れるスペースはあるが、窓もないし灯もない。 「座敷童子かよ。絶対にやめろ」 「そうだよ、草太それはやめて」 二人は呆れて言った。 そんな事を言い合いながらも物件探しを続ける。 そうしているうちに、食事も終わりにさしかかった。 「草太、相変わらずよく食べるね……」 清隆は五人前をぺろりと食べてデザートまで食べる草太に、ちょっと顔を引きつらせながら言った。焔次も呆れた顔だ。 「カレーとステーキ、ピザと丼物二杯食ったのに追加であんみつとケーキとか……よく食えるな」 「だって一日食べてなかったんだもん。大丈夫だよ、これ食べたらお腹一杯になるから」 しかも、最近草太は食欲が無くてあまり食べられなかった。 しかし昨日のことで色々吹っ切れたおかげか食欲がもどり、がっつり運動をしたので、いつもよりお腹が空いていた。 「大丈夫の意味が分からねぇよ。っていうか見てるこっちが気持ち悪くなる」 焔次は顔をしかめる。 そんな時、清隆がスマホを検索しながら言った。 「そうだ、シェアハウスってどうかな?」 「シェアハウス?」 焔次が聞く。 「そう、シェアハウスならそれぞれの部屋もあるだろうし。キッチンも、リビングも大人数で使われることを前提に作られてるから広いよ」 「へー、いいかもな。どうせなら買い取って改装してもいいかも」 焔次が思い付いたように言った。 「改装?分かってると思うけど僕、あんまりお金無いよ……」 草太が不安そうに言う。 「そういえば、清隆と草太はいくらの部屋に住んでるんだ?」 「俺は七万」 「……僕は……三万……」 草太はちょっと恥ずかしそうに言った。 「はぁ?それ、人が住めるのかよ」 「……酷い、ギリギリ住めてるよ。確かに狭いしボロいし、絶対見せられないけど」 「俺は草太とならそれでもいいけど」 「僕は絶対やだ」 「まあ、金はそれ以上取らねーよ。俺が一括で買って、月々払うとかでいいんじゃね?」 焔次は適当な感じで言う。その言葉に、清隆が答える。 「それならいけるかも。シェアハウスって一時期流行って沢山建てられたんだけど供給多寡になってるらしい。そんなに高くないよ」 シェアハウス一は時期、シェアハウスで暮らす男女の恋愛ドキュメントが流行った影響もあって、人気が出た。 トイレやキッチンが共用ということで家賃も安いし、しかも出会いもあるかもと人が集まった。 しかし、流行りに乗って沢山たはいいものの、住む人間はそこまで多くなく、人が集まるとそれだけトラブルも発生してしまい、人気はすぐに収束した。 流行りに乗って、脱サラしてシェアハウスの経営を始めた人までいたらしいが、人が入らなくて借金を抱える羽目になったって人もいるのだとか。 「それなら、条件さえ合えばいいのがあるかもな」 焔次はそう言って頷く。そうして三人は条件の合うシェアハウスを探すことに。 「ここが、良さそうだな。三人だとちょっと広すぎるかもだけど、大学からも街からも近いし」 条件に合う物件はすぐに見つかった。 しかも、お金がない学生が対象だからか、大学に近い場所に丁度よくあった。 三人で話し合った結果。 三人用だと少し狭いので、五人用のシェアハウスを買い、改装するということで話が決まった。 「何か、大事になったけど。これで決まり!」 「うん。キッチンも広いし、いいと思う」 「改装も楽しみだな」 そうして、三人は一緒に暮らす家を決めた。 引っ越し当日。 「やっぱり三人同時に引っ越しすると大変だね」 草太はそう言ってダンボールを下ろす。改装も済んだので今日は、三人は自分たちの荷物を運びこんでいた。 勿論、運ぶのは業者に依頼しているのだが、流石に三人同時だと荷物の量が凄いし、どれが誰の荷物なのか混乱してしまって時間がかかる。 「だから、高いコースのを頼めって言っただろ」 焔次はそう言った。焔次は荷物を詰めるところから、箱から出して並べるところまでやってもらえるコースを頼んでいた。やる事もなくダラダラしている。 「しょうがないよ。学生の身であんまり出せないんだから」 清隆は汗を拭きながら言う。 「そうだ、電気とガスの手続きって済んだ?」 草太が気がついたように言った。 「あ、忘れてた。焔次、暇そうだからやってきて」 「しょうがねーな」 そんな感じで引っ越しは進む。 「一応、荷物は運び込めたね」 ひと段落ついて業者さんも帰った時、清隆がそう言った。。 「お疲れ様。あとは荷物の整理か」 「ベッド届いたぞ」 焔次がそう言った。特注したベッドが届いたのだ。 ベッドが設置されると、三人はベッドルームに集まる。 ベッドは、男三人で寝れるために特注でわざわざ作ったもので相当大きかった。 「流石にこの大きさだと、部屋が狭く見えるね」 ベッドルームは改装して広めに作ったのだが、それでもベッドが大きくて狭く感じる。 因みに家の間取りは、一階にキッチンとダイニングがあり、カウンターで繋がっている。 その隣に広々としたリビングがあって、あまり仕切りのない作りで、広々として解放感がある。 二階は中心がベッドルームで、それぞれの壁にドアがあって一人一人の部屋に通じている。バスルームも広く、トイレもそれぞれの階に作った。 「やっぱり、改装してよかっただろ」 焔次は得意げに言った。 「まあ、そうだね」 改装には色々もめたのだ。やはりお金が掛かるし、どういう間取りに改装するか決定するのに時間がかかった。でも苦労した分、達成感もある。 「わぁ、ふかふか」 草太はそう言ってベッドに飛び込んだ。 「あ、俺も」 清隆もそう言ってベッドに飛び込み寝そべる。ベッドはゆらゆら揺れて、二人は思わず顔を合わせて笑った。 「今日からここで暮らすんだね」 「うん。楽しみだ」 クスクス笑う草太に清隆はそう言うと、嬉しそうに覆いかぶさりキスをする。 「っ……ん」 「なに、勝手に始めてんだよ。俺も混ぜろ」 それを見ていた焔次がそう言って、ベッドに乗ると清隆を草太から引き離して自分の方に向けさせ、かぶりつくようにキスをする。 「っん、んん……」 「あ、僕も」 草太はそう言って、起き上がると焔次にキスをせがむ。 「しょうがねぇなぁ」 清隆が離れたので、焔次はそう言って草太のキスを受け入れる。 焔次から離れた清隆は、今度は草太の首筋にキスを落とす。草太はくすぐったそうに笑い、三人はベッドでじゃれ合うようにキスしあって転がる。 右に左に転がるが、ベッドが広いお陰で落ちることはない。 お互いの体に手を這わせ、キスは深くなってきた。 「あ……ん、荷物の整理がまだ途中なのに」 清隆はそう言いつつも、草太の体を探る手は止まることはない。 「ん……あん。僕も食事の準備しないと」 「いいじゃん、ちょっとだけ休憩しようぜ」 身もだえる草太に、焔次はそう言って、清隆のシャツを脱がし露出した肌に唇を落す。 最近、引っ越しの準備や手続きで忙しく、触れあうことも少なかった。そのせいか、体はどんどん熱を帯びる。 そうして、結局その行為は溜まった熱を吐き出すまで続いた。 「ん……はぁ……はぁ、結局夕方になっちゃたね」 ベッドに寝転がって、上がった熱を冷ましながら草太が言った。 やっと段落したが、外はもう暗くなっていた。清隆もけだるげな表情でそちらを見る。 「本当だ。結局荷物の整理出来なかった……」 「まあ、いいじゃん。明日やろうぜ」 「焔次は終わってるからって勝手だな……」 「とりあえず、僕は食事の準備するよ。引っ越しの初日だから豪華にしたいし」 草太はそう言って、服をかき集めて起き上がる。 「あ、俺も手伝うよ。引っ越し祝いだね」 清隆もそう言って起き上がった。 引っ越しは中途半端になってしまったが、三人は引っ越し祝いの準備を始めた。 外がすっかり暗くなったころ、料理が出来上がる。 「出来たよー」 「焔次、テーブル片づけておいて」 引っ越しの準備や改装の期間があったので、今はもう冬だ。 寒いということで、その日の料理は熱々のお鍋になった。 「料理を、準備が簡単なお鍋にしておいて良かった」 「美味しそう」 清隆はそう言って、ダイニングのテーブルにカセットコンロを並べる。草太はその間に他の料理も並べていく。唐揚げや生春巻きサラダだ。 草太はお鍋に具材を入れ火をつける。後は待つだけだ。 しばらくすると、お鍋の具材がしんなりして丁度良くなって、いい匂いが漂う。 ちなみに今回のお鍋は辛い物好きの焔次のためにキムチ鍋だ。 「そういえば、草太。お前大学辞めてこの後どうするんだ?」 焔次がお鍋をつまみながら言った。 「え?う、うーん。実はまだ何にも決めてないんだ……」 草太は気まずい表情でそう答える。 清隆と焔次と離れようとして、草太は大学を辞めた。 焔次には辞めた事は言っていた。焔次はあまり興味がなかったようで、『ふーん』と言っただけで理由は追及はされなかった。 詳しい理由は言いにくかったからホッとしいたのに、また聞かれると思ってなくて草太は少し驚く。 これからの事は、焔次と暮らせるのが嬉しくて、後回しにしていた。実は、親にもまだ知らせていない。 草太の親は、穏やかで優しい性格でおそらく怒ることはない。しかし、かなりのお金を出してもらったので申し訳なくて、なかなか言えなかったのだ。 草太が大学に入ったのは、息苦しい故郷から抜け出したかったにすぎない。 だから、特に目標もなくズルズルバイトをするだけになっていた。 せめて、次にどうするか決まってから知らせようと思っていたのだが、結局決まらず今に至る。 「それが、どうかしたのか?」 清隆が不思議そうに聞いた。 「実は、この家買うのに父親に金を借りたんだけど、その時、シェアハウスのオーナーになって経営するって適当に言って借りたんだよ」 焔次が頭を掻きながら続ける。 「それは特に問題なかったんだけど、それで父親は俺が会社経営に興味があると思ったのか。大学卒業したら、父親が経営してるレストランを代わりに経営しろって言い始めてさ」 焔次はだるそうに言った。清隆が思い出したように聞く。 「そういえば、焔次のお父さんは資産家でいくつも会社経営してるんだっけ?」 「そう。今まで先の事は何も言ってこないし、関心もなかったんだろうが。遊びまくってたのは知られてたみたいで、下手に問題を起こす前に監視下に置きたいってさ……」 「なるほど……」 「でも、改装も含めてかなり金借りたから、簡単に嫌だとも言えなくなってさ」 焔次は言いながら苦笑いをする。そうなのだ、最初は簡単に改装するつもりだったのだが、色々こだわりだしてしまって、結局かなりお金がかかった。 「そう言えば焔次は将来は、親の会社を継いだりするのか?」 清隆は気が付いたように言った。 「いや、しねーよ。会社はほとんど兄貴がつぐから」 「え?焔次ってお兄さんがいたんだ。……って、そうか名前に”次”ってついてるし、次男か」 「そうだよ、焔次くんのお兄さんは不知火炎寿っていって。焔次くんより5つ年上の二五才身長180、体重は82㎏。お父さんの会社経営を継ぐ予定で。今は専務として働いているんだよ」 草太が横から割り込んで、早口で答える。焔次は顔を引き攣らせる。 「なんでそこまで知ってんだよ、キモイなストーカーかよ……」 「えへへ、調べた。すっすごいイケメンで。経営手腕もあるらしくて、将来有望ってことで雑誌の取材も受けたりしてるんだよ」 ドン引きの焔次にめげることなく草太はニコニコしながらそう言って、スマホで焔次の兄の写真を見せる。 「へーどれどれ。本当だ、確かにイケメンだ」 スマホを見た清隆はそう言った。そこに映された姿は、メンズファッション雑誌にでも載っていそうなスタイルも良く整った顔の男だった。顔は兄弟なだけあって、焔次と似ている。焔次が少し年を取って落ち着いた感じだ。 「はぁ?ふざけんなよ。俺の方がイケメンに決まってんだろ!」 清隆の言葉に焔次はムッとして言った。 「うん。焔次くんが世界一かっこいいよね。でも焔次くんが、もう少し年取ってスーツ着たらこんな感じなのかなって、想像すると楽しい」 頬を染めて言う草太に、清隆が不満そうに言う。 「俺だって、スーツ着たらこれくらい……っていうかなんの話だっけ?」 いつの間にか話がそれていた。 焔次が思い出したように続ける。 「ああ、そうだった。レストランの経営の話だよ。それでさ、草太。お前料理結構上手いんだから、コックとして働かねぇ?」 「え?コック?……でも、上手いっていっても素人だよ?流石にそれは無理じゃない?」 「だから、俺が卒業するまでに専門学校に入って勉強して。免許とかとったらいいんだよ。授業料は父親に出させるから」 「え?授業料も出してくれるの?それなら……いいかも……親にも言い訳しやすいし……」 草太は納得したように言った。むしろ草太には渡りに船だ。 そうして焔次は清隆の方を向いて言った。 「それでさ、清隆も一緒にやらないか?」 「はぁ?俺は料理はほとんど出来ないぞ」 清隆は驚く。なんでいきなりそうなるのか分からない。 「違う違う。清隆は店長として雇いたいんだ。それで、俺がオーナな」 「店長?どっちにしろそっち系の勉強したことないし。いきなり店長は無茶すぎないか……でも、そうなると草太と一緒の職場で働ける……」 驚いた清隆だったが、草太をチラリとみて思い直した。 「清隆なら大丈夫だって。頭いいし何でもそつなくこなせるから、絶対向いてる。それにこれで三人で働けるだろ?」 「いや、でも、ついさっきまで学生だった三人で、レストラン経営はいくら何でも素人考え過ぎないか?」 「大丈夫、大丈夫。どうせ任されたレストランは、父親が税金対策で何となく経営してるだけの店だし。失敗しても補填させるから」 軽く言う焔次に、清隆は頭を抱える。 「典型的な親の身代を食いつぶすバカ息子じゃん。余計に心配になってきた……うーん、とりあえず飲食店の講習会とかセミナーとか受けて勉強するとか?……いや、そんな付け焼き刃で出来るか?……」 「清隆なら大丈夫だよ。きっと出来るよ」 話を聞いていた草太が励ますように言った。清隆はまんざらでもない表情になる。 「そ、草太が言うなら。やってみようかな……」 「清隆、悪知恵とかも結構はたらくみたいだし……」 草太がぼそりと言った。 「え?なんか言った」 「なんでもなーい。あ、焔次くんもうこれ食べられるよ」 「んじゃ、これで三人で店をするのは決定な」 反対が無いようなので、焔次は嬉しそうにそう言った。 「まあ、不安だけどやってみるか……っていうか焔次はそもそも、卒業できるのか?」 「う……だ、大丈夫だよ……最近はちゃんと真面目に授業も出てるし……」 焔次は目を逸らしながら言った。確かに、焔次は遊び歩くこともほとんどなくなり、真面目に大学に通っている。しかし、元々かなり遊んでいたのでかなりギリギリなのだ。 「はぁ……先が思いやられる……」 「でも、お店楽しみだね。案外、人気が出たりして」 「草太は、料理が上手いからいけるかも」 「そうなったら、チェーン展開にして全国に店を出そうぜ」 「流石にそれは無理じゃない?まあ、楽しく出来ればいいよね」 そんな雑談をしていたら、食事が終わった。 「ごちそうさまでした。今日も美味しかったよ、草太」 「お粗末さま」 「じゃあ、次は酒飲もうぜ」 焔次が張り切った感じで言った。 「うん。僕、おつまみ作るね。あ……ちょっと材料が足りないかも」 「じゃあ、俺が買ってくるよ」 「んじゃ、俺は酒の準備してくる」 そうして、清隆は買い物に行き草太はキッチンでつまみを作っていた。そんな中、お酒の準備をしていた焔次が草太に言った。 「そういえば、草太って酒が強いから酔ったことないって言ってたよな」 「うん。ほとんど酔わないから、逆にあんまり飲まなくなっちゃったよ」 どんなに飲んでも変わらなかったし、限界まで飲んでみるような機会もない。それに、自分で試すほど興味がなかったから、酔ったことがなかった。 「せっかく、引っ越し祝いなのに一人酔えないのは寂しいだろ?だからお前のために、度数の高いのを多めに買ってきた」 そう言って焔次はリビングのテーブルにお酒を並べる。そこにはテキーラ、ジン、ウイスキー、ウォッカ、ラム酒といかにも強そうなお酒が並ぶ。 「え?僕のために買ってきてくれたの?」 「ああ。これだけあれば流石に酔うだろ。酔ったらどうなるか興味もあるし」 「僕も、ちょっと気になってた。嬉しい!」 草太は目をキラキラさせながら喜んだ。焔次が草太のために何か買って来るなんて初めてだ。 「これで、こいつを酔いつぶして清隆と二人っきり……」 焔次はニヤリと笑って、小声でそう言った。 「うん?何か言った」 「何でもない。家でだったら、何かあっても大丈夫だし、とりあえず飲め」 「うん!」 草太はそう言って、うきうきしながら出来上がったおつまみを持ってリビングに並べた。お酒を飲む準備は出来た。 因みにリビングにはテレビやソファが並んでいて、ゆっくりくつろげるようになっている。 焔次はわざわざ大きなジョッキを持ってきて、強いお酒を更に混ぜてちゃんぽんにする。 「よし、こんだけ飲めば流石に酔うだろ」 「わーい。ありがとう」 草太は嬉しそうにジョッキを受け取り、勢いよく飲み始めた。 しばらくして買い出しに出ていた清隆が帰ってきた。 「ただいま。買ってきたよ……って何してるんだ!?」 しかし、部屋の様子を見て驚く。 草太が焔次を四つん這いにさせて、後から犯していたのだ。 「う……うあ……っあ……き、清隆」 後からガツガツ突かれて焔次は、ボロボロ涙を流してがくがく震えている。 何度かイっているのか白濁したものが床にこぼれていた。 「焔次くん、すっかりこっちで感じるようになったよね。可愛い」 対する草太はニコニコ笑いながら楽しそうだ。しかし、頬は赤く目はトロンとしている。どうやら酔っているようだ。 「な、何があったんだ?」 ありえない光景に清隆は唖然としながら聞く。 「ちょ、ちょっと酔わそうとしたら、こんなことに……」 「僕、酔ってないよぉ。でも、なんだか楽しい……」 けらけら笑いながら草太はそう言った。完全に酔っ払っている。 よく見るとテーブルには、お酒の瓶が空になって転がっていた。しかも、何本もある。 それを見て清隆は全てを察した。 「何してんだよ……」 「き、清隆。助けて……」 焔次は何故か抵抗も出来ないようで、べそをかきながら言った。顔は真っ赤で眉を八の字にして辛そうだ。 それを見て、清隆は流石に少し可哀想になってきた。 「えーっと……草太?焔次が辛そうだよ?」 「それより、清隆」 「え?な、何?」 草太がいつもと違っていて清隆は戸惑う。 「なんか今日は感じにくいみたいでさ。物足りないんだよね……だから、後からもして?」 草太は蕩けた目で、腰を突き出し臀部を自ら広げ、言った。 「っ……焔次、悪いもうちょっと頑張ってくれ」 「え?ちょ、……」 草太にそんな風誘われて、断れるわけない。慌てる焔次を無視して、清隆は急いでズボンを脱ぎ、草太の後から入れる。 「っ……あ。っあん……」 ローションを使い、入れると草太は気持ちよさそうに喘いだ。 「草太、気持ちいい?」 「っ……あん……っあ。うん、うん、もっとして……」 「あぐ……あ……あ、も、もう無理……」 清隆が参加したことによってさらにゆすぶられた焔次は、激しく体を震わせると、透明になった精液をぽたぽた零しながら気を失った。 「っあ……僕も、イク……っ」 草太はそう言って焔次の奥に出す。同時に清隆も締め付けられて草太の中に出した。 「っ……く。ふう……ちょっとびっくりしたけど、役得だったな……」 酔った草太がこんな感じになるとは驚きだったが、いつになく積極的な姿に清隆は喜ぶ。 「あれ?焔次くん気を失っちゃった?」 「あ、本当だ。……まあ、自業自得だな」 焔次は床でぐったり倒れこんでいる。 「それより草太、せっかく二人っきりになれたし。もう一回しよう?」 清隆は少し罪悪感を感じながらも、チャンスとばかりに草太を後から抱きしめ言った。 焔次に悪いが、こんなチャンスは滅多にない。 それに、夕方に一度草太に触れたせいかずっと体に熱がくすぶっていた。 「うん。僕もまだ足りないし、しようか」 草太は相変わらずトロンとした目で、清隆の方を振り返るとそう言った。 しかし、そう言った草太はそのまま清隆の腕を掴み強い力で、四つん這いにさせる。 「え?……ちょ、草太?」 慌てる清隆だったが、草太は構わず焔次にしたように後から一気に挿入した。清隆は抵抗する暇もなく、気が付いたら草太の物が入っていた。 「そう言えば、清隆とこうするのは初めてだね」 草太はのんびりした口調で言う。しかし、口調とは裏腹にすぐに腰を激しく動かしはじめる。 「っあ……うあ……ああ!草太、ま、まって。ちょ、ちょっと激し……」 草太のそれはさっき出したばかりだからか、濡れていて痛くはない。 されることに慣れてきたこともあって清隆の体は簡単に草太を受け入れる。 しかし、草太の物は焔次の物より小さいが、形が少し違っていてカリの部分が鋭く感じる所に引っ掻くように擦れて痛いくらいの刺激を感じる。 その上、草太が上手いのか的確に感じるところばかりせめて来るので、清隆は一気に快楽を叩き込まれてしまう。 「実は僕、小柄だからかネコをする事が多いんだけど。タチの方も好きなんだ。男を女の子みたいに喘がすと凄く興奮するんだ」 草太はそう言って薄く笑う。 清隆の腕を後から掴みガツガツ責める。どこから、こんな力が出ているのかわからないが、がっちり掴まれていて、清隆は動けない。 「っあ……っあ!そ、草太もっとゆっくり……」 清隆は首をがくがく揺らし涙を滲ませている。 「そう言えばさっきも言ったけど。今ちょっと感じにくくなってて、イきにくなってるからちょっと時間かかるかも」 「そ、それって……」 清隆は青ざめる。 何をされたのかわからないが、焔次は何度もイかされていた。しかも、あの焔次が涙目で助けを求めていたのだ。 その上、草太はさっき出したばかり。 草太は目を細め、捕まえた獲物をもてあそぶような目をして、ペロリと唇を舐めると言った。 「清隆、いい声で啼いてね」 そうして、清隆は声が枯れるまで揺さぶられる続け、気が付いたら気を失っていた。 次の日—— 清隆と焔次が目を覚ました時、草太はすでに起きていて荷物の片付けを始めていた。 「あ、起きた?おはよう」 「お、おはよう……」 清隆は何とかそう言った。起きたものの、身体中だるいし喉も痛い。焔次も起き上がったものの、テーブルに突っ伏して辛そうに腰をさすっている。 「いつまで、寝てるの?朝ごはん食べる?」 草太は何もなかったかのように、ケロリとした顔で言う。 「そ、草太。昨日のこと……」 「え?昨日?ああ、楽しかったね!」 「あ、あの……お酒、結構飲んでたみたいだけど、大丈夫?」 「ん?全然大丈夫だよ。でも、お酒飲んだ後の記憶がちょっとあやふやなんだよね。なんか凄い、気持ちよかったのは覚えてるんだけど……。そういえば二人とも服脱いで寝てたけどどうしたの?飲みすぎた?」 「い、いやこれは……」 清隆は顔を引き攣らせる。 「それにしても、お酒飲んで、初めてあんな気持ちよくなったよ。みんなが飲み会とかしたがるの、よくわかんなかったけど。ちょっとわかったかも。またみんなで飲もうね」 「う、うん……」 草太の嬉しそうな様子に、清隆は曖昧に頷く事しか出来なかった。 隣にいる焔次と目が合う。 二人は心の中で、草太には絶対にお酒を飲ませないと心に誓った。 こうして、色々ありつつも、三人の共同生活は始まったのだった——。 おわり

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