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第28話 終わりは、始まり
「じゃあ、焔次。草太に入れて」
「っあ……む、無理。動けな……い」
焔次は泣きながらながら言った。ある程度慣れたとはいえ、初めて男のものを入れたばかりだ、まだ辛いのだろう足がガクガク震えている。
「大丈夫。ほら、手伝ってあげるから」
清隆はそう言って焔次に入れたまま、足を背後から抱っこした状態で移動する。
「っ!……あ……ああ!……」
動いた事で中が擦れたのか、焔次は声を上げた。
それでも、清隆がほとんど強引に移動させ、草太に近づく。
息がかかるくらい焔次は近くまで来た。草太はゴクリと息を飲む。
まだ、何もしてないのに草太の雄は期待したように固く勃ちあがり。溢れた先走りで下の方まで濡れている。
とんでもなく恥ずかしい状態なのに、草太は大きく足を広げた。
「っあ……」
赤く充溢した焔次の物がゆっくりと草太の中に割り開いて入って来た。
「入った。よくできたね。ご褒美」
清隆がそう言って焔次の頭を自分の方を向けキスをした。その途端、焔次の目が蕩けたようになる。
「清隆……」
「じゃあ、動くよ」
「っあ……!」
清隆が焔次を押して、そのまま草太に覆いかぶさった。
そうして、清隆が大きく腰を動かした。焔次の体が押されて、焔次の物が根本まで入る。
焔次の熱い物が内壁を擦って、草太の体に、痺れるような快楽が走った。
「……あ……あ」
目の奥にチカチカと星が飛んで、草太は反射的に中を締め付けた。
焔次は苦しそうにはくはくと息を吐く。
前と後ろ同時の刺激は、相当強烈だったのだろう。
シーツについた手は震えて、体を支えるだけで精一杯のようだ。
焔次の顔は真っ赤に火照り汗と涙でぐちゃぐちゃだ。
「焔次くん、気持ちいい?可愛い……好き、大好き」
草太はうっとりした表情で顔にキスをする。三人でする時、焔次はいつも清隆ばかりを相手にしていて、直接草太に触れることはほとんど無かった。
だから、こんな風に焔次が入って来るのは久しぶりだ。しかも向かい合ってするのは初めてかもしれない。
清隆が腰を動かす、それと同時に草太の中の物も動く。
「っあ……あ……ぐ……ふ……ぁ……」
二人に挟まれて、逃げ場もない焔次は揺さぶられ、首をガクガクと揺らす。もう言葉を紡ぐこともできないようだ。
最初はゆっくりだったその動き、はだんだん早く激しくなる。
清隆の動きに連動するように、草太の中も刺激されていく。
「焔次くん……焔次くん……」
絶え間なく与えられる快楽を、草太は体全体で受け止める。中に入っている焔次の形を感じるだけで体の奥がうずうずしてきた。
全身が熱くてしかたがない。
体が敏感になっているのか、シーツが肌に擦れるだけで感じてしまう。
頭がぼんやりしてきた。
「あ……あ……」
「もう……い……く……っあ!」
限界はすぐに来た。草太はそう言うとビクビクと体を痙攣させた。両腕で焔次を抱きしめると中を思いっきり締め付ける。
「っあ……!ああ!」
強い刺激に焔次も限界がきたようだ。草太の中で濡れたような感覚がした。それだけで草太の中は焔次の物を搾り取るように蠕動する。
快楽が波のように押し寄せ、草太はブルブルと体を震わせながら、その強烈な快楽にもう何も考えられなくなった。
「草太……」
グッタリとしてしまった焔次の後ろから、清隆がそう言った。
草太は顔を上げる。
清隆と目が合った、その目は欲に満たされ獣のように鋭い。
「清隆……」
「やっぱり。悔しいけど草太はそうやって焔次としてる時が一番可愛い……」
清隆は愛おしそうに草太の頬を撫でる。そうして、満足げに続けた。
「足りないと思ったのはこれだった。これが見たかったんだ……」
草太は全てを悟った”もう、逃げられない”んだと。
むしろ何で二人から離れようと思ったのかわからなくなる。
そうして、清隆が微笑みながら言った。
「草太。もっと……もっと気持ちいいことしよう?セックスは好きだろ?」
草太は、自分がどんな表情をしているのかわからなかった。
しかし、清隆から差し出された生贄 を愛おしそうに抱きしめ、ゆっくりと頷く。
——それから、三人はたがが外れたようにセックスした。
何度も体勢を変え、何度も欲を吐き出す。
こんなに何度も出来るものなんだと驚くくらい、何度もした。
最後には焔次を下にして草太が焔次の中を犯す事までした。同時に清隆は後から草太を犯す。ぐちゃぐちゃになったそこをかき回すと、焔次は女の子みたいな声で嬌声を上げて善がる。それは、頭がおかしくなるんじゃないかと思うくらい気持ちよかった。
何も出なくなるまで欲望を吐き出し、ドロドロになるまでその行為は続いた。
草太が焔次にキスをすると、清隆も割り込んでキスをする。
最後には、今誰に入れているのか誰が中に入ってきているのかもわからなくなった。
体液でぐちゃぐちゃになると、まるで三人の境界線がなくなったように感じた。
三人は意識が無くなるまで、一つに溶け合った。
目を覚ますと、いつの間にか翌日の夕方になっていた。
草太はこんなにぐっすり眠れたのは久しぶりだと思う。
他の二人も起きたのでシャワーを浴びる。
焔次が清隆と一緒に入りたいと言って、それを聞いた草太もそれに追随した。
「じゃあ、三人で入ろう」
最終的に清隆がそう言って。三人でシャワーを浴びる。
シャワー室は普通より広い目だったが、男三人だと流石に少し狭かった。
その後、三人は外に食べに出かけることにした。作るのも材料がなかったし、お腹がすきすぎて、出来上がるのを待つのも面倒だったのだ。
「暗くなるのが早くなってきたね」
道すがら、清隆がポツリとそう言った。
確かにいつもならまだ暑さが残っていたのに、涼しい風が吹いていて季節が変わってきているんだと感じる。
「本当だ、もう夏も終わりだな」
焔次が、空を見上げて答える。
草太もそれを聞きながら、ぼんやりと空を見上げた。
太陽は建物の合間に沈み始め、空を赤く染めている。道にはサラリーマンや学校帰りの学生、買い物帰りの主婦が歩いていた。
そこにあるのは、あまりにも平和でありきたりな風景で、昨日の事がまるで夢でも見ていたような気がしてくる。
昨日の事は、誰も何も話していない。昨日、三人の関係は変わったのは確かだが、不自然なくらい誰も何も言わないのだ。まるで、ずっとこうしていたかのように。
草太は改めて昨日の事を思い出す、無秩序で混沌として支離滅裂で猥雑、本当に滅茶苦茶だった。少し後悔する、きっと僕達は二度と普通の生活には戻れない。
草太はポツリと呟いた。
「ウロボロスみたいだ……」
「なに?」
草太の言葉に、清隆が聞く。
「いや、僕たちの関係と似てるなって思って……」
ウロボロスとはよくゲームや漫画で使われている、抽象的な言葉だ。
ヘビがモチーフで複数のヘビが輪になって、尻尾に噛みついているイラストが有名だ。
グロテスクなヘビが仲間同士でとぐろを巻き、噛みついている姿はもおどろおどろしい。
草太は、清隆に簡単に説明する。
「ウロボロスね……」
清隆がスマホを取り出した。どうやら検索しているようだ。
何度か画面をフリックすると、検索結果が出る。
画面には、ヘビがうねって輪になった画像が映し出される。ヘビは絡まり合ってお互いの尻尾を食べていた。詳しい説明を見ると、脱皮をする事から不老不死というような意味もあると書かれている。
出口もなくグルグルと同じところを回っている姿は、グロテスクで今の自分達そのもののようだ。
清隆もそう思ったのか「本当だ……」と自嘲気味に笑う。
「うぇ、気持ち悪い……」
横から覗き込んだ焔次が、画面を見てそう言った。
「本当、気持ち悪いよね……」
草太はクスクス笑いながら言う。自分たちの関係が異常だと改めて突き付けられたようで、もう笑うしかない。
「あ、でもウロボロスって”永遠”って意味があるんだね」
しかし、清隆がふとスマホを眺めてそう言った。その言葉に草太は顔をあげる。
「へぇ……悪くないかも」
焔次が追随するようにそう答えた。
「あ!なあ、あれ……」
唐突に清隆がどこかを指さしてそう言う。
何だろうと思って見るとそこには不動産屋があった。
清隆は嬉しそうにそこに駆け寄る。
「どうしたんだ?」
「いや、最近ずっと焔次の家にいるからさ。いっそのこと三人で一緒に暮らしたらどうかなって思って……家賃を出し合ったら結構いい部屋に住めるんじゃないか?」
焔次が聞くと清隆がそう答えた。
確かに草太は一時期焔次の家に通っていた時、自分の部屋にほとんど帰ってなくてただの物置部屋になっていた。
「それ、いいな。そうしたら、もっと大きなベッド買おうぜ」
焔次も清隆を追いかけて同意した。
草太はそれを見ながら、さっき清隆が言った”永遠”という言葉を頭の中で反芻する。
そして”悪くない”と言った焔次の言葉も。
「確かに……悪くないかも……」
草太はそう呟く。
「ねえ、草太。草太はどんな部屋がいい?」
不動産屋の壁に貼られている間取り図を指さして、清隆が言う。
草太は、二人の所に駆け寄る。
「そうだな。自分の部屋は何でもいいけどキッチンが広いのがいいな」
そう言った草太の心に、もう後悔はなかった。
おわり
「百舌の早贄はウロボロスの輪で惑う」はこれで完結です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
アトリエブログ2020/1/29であとがきのようなものをのせてます。よろしければ読んでやって下さい。
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