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第1話 始まり

 天蓋付きの大きなベッドの中、切れ切れの喘ぎが続く。亜麻色の緩やかなウェーブの髪が揺れ、翆玉の瞳から涙が零れ落ちる。 「ひ......もぅ......やめ......て......うくっ....」  少年がその細い腰を逞しい青年の手に鷲掴みにされ、深々と長大な凶器のごとき雄を秘奥に咥え込まされ、容赦なく揺すぶられている。 「あ......あぁ、ゆ...許し.....て、テオ...兄さま.....あひっ.--」 「あぁ?...ルシアン、君は『女の子』なんだろう?中でイクんだよ。僕の精液でお腹の奥まで満たしてあげる」 「イヤ....いや......だ...ひぁぁっ!」  青年の指に胸の薄紅の突起を抓りあげられ、細い喉が仰け反り、背中がしなる。 「君の身体はそうは言っていないよ。ガルシア-シンクレア-サルディア......こんなに美味いしそうに僕を奥まで呑み込んで......君の可愛いいやらしいオモチャもすごく悦んでる」   ニヤリと笑って、青年は震える唇を指先でなぞり、少年の幼さの残る淡色のぺニスを扱き上げた。 「あっ.....あぁっ!」  痛いほどに限界まで屹立していた少年のそれは呆気なく白濁を吐き散らし、その腹を汚した。  少年は肩で荒い息をしながら、絶望に満ちた眼差しで自分を犯す男を見つめる。整った鼻筋、鷲のように鋭い眼差し、男らしい口許には酷薄な笑みが浮かんでいる。     青年は、いつものように優しげな声音で、少年の耳許に囁く。 「もぅすぐ子どもを産める身体になる。....そうしたら、すぐに婚礼の儀を行おう。サルディアの王女ルシアンとアルナガルの王太子テオドール2世の婚姻だ。諸国の王族も招いて、大々的に執り行わないとな」   「許して......テオ...兄さま...あぁ、あぁあぁあぁっ!」  剛直そのものの雄に容赦なく内奥を突き上げられ、敏感な部分を擦り立てられ、少年は喘ぎ、啜り泣く。  吐息とともに青年の動きが激しくなり、ひときわ大きく少年の背がしなった。細い肢体がガクガクと震え、大きく痙攣を繰り返す。  否応なしに絶頂に押し上げられた少年の目は完全に見開かれ、だがその視界は真っ白に染まり、何も見えていなかった。 「おや、もぅ飛んでしまったのかぃ? いいよ、存分に狂わせてあげる。君に理性は必要無いからね。僕の可愛いルシアン。淫らで愛らしい僕の花嫁にみんなきっと感激するよ」      青年は少年の肢体をベッドに横たえ、両脚を大きく開かせその肢体にのし掛かるように腰を進めた。一層深いところまで雄を突き入れられ、激しく捏ねられ、少年の秘奥は襞を抉られる快感にわなないていた。  少年の秘奥の粘膜は青年の雄に淫らに絡み付き、きつく締め付け、その質量を貪っていた。  背骨を駆け昇り脳髄を焼き尽くす焔に身体の奥深くに激しく渦巻く熱に、少年は全身をくねらせ、身悶え、よがり泣いた。 「いや...いや....イく....イっちゃう......また.....あぁ...あぁっ......イ...イくぅ!」  やがて、少年が愉悦の淵の奥底に沈み、完全に意識を手放すと、青年は、ゆっくりとその身体から離れ、薄紅に染まった肌に指を這わせ、閉じた瞼にそっと口づけ、呟いた。   「おやすみ、ルシアン。いい夢を......」 ――――――――  王宮の奥深く、楽園のような色とりどりの花が咲き乱れる庭園の傍らにある蕭洒な造りの離れに、その少年は囚われていた。  少年の母国、サルディアはアルガナル帝国の侵略を受け、占領された。  侵攻してきたアルガナルの軍隊に捕らわれた王妃は、ひとりの幼子を腕に抱いていた。近隣諸国にも美女と名高かった王妃は、本国の王の元に送られ、妾とされる運命だった。  王の戦死によってサルディアの軍隊は散り散りになり、逃げた王家の者達は、みんな追手に捕らわれ、牢獄に幽閉され、王子達も捕虜として本国の強制収容所に送られた。 ―その子は、姫君か?―  侵攻してきた軍隊の総大将は、アルガナルの第一王子、テオドール-サイラス-アルガナル。その苛烈な戦ぶりと圧倒的な強さからアルガナルの若獅子と呼ばれ、畏怖されていた。  黄金の鎧を身にまとった王子は、サルディア王妃と幼子を前に君主の椅子に座して、問うた。  。     ―姫君でございます―  傍らにいた乳母が咄嗟に嘘をついた。  幼子は母に似て、透き通るような肌に薔薇色の頬、桜桃の唇、翆玉の瞳......とても愛らしく、その微笑みは天使のようだった。  テオドール王子は頷いて、俯いて平伏す王妃に言った。   ―姫が成人したら私の嫁にする。承知するなら、本国に送られた者達も母君も命は助ける―  王妃は他国の牢獄にいる王子達を思い浮かべた。そして決意した。震える唇で王子に懇願した。  ―承知いたしました。......でも、その子は身体が弱く、気難しいので側に仕えるものは、そのままで......―  テオドールは承諾し、乳母と幼い姫を王宮の離れに住まわせた。サルディアの者は皆、固く口をつぐみ、戦争に明け暮れるアルガナルの者達は気付く暇も無かった。  時おり訪れるテオドールにも、その愛らしさゆえに姫(王子)は、特に疑われることもなく、無事に十三歳になった。  

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