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第2話 発覚
ガルシアが十三歳になった日、テオドールは王宮の自分の部屋にガルシアを呼んだ。
ガルシアは、テオドールが見立ててくれた緑色のサテンに金の刺繍の施されたドレスで、分厚いオークのドアをくぐった。
「待っていたよ、ルシアン。誕生日おめでとう」
「ありがとうございます、テオ兄様」
テオドールは、いつものように、大きく手を広げてガルシアを迎え入れ、ハグして、その白桃の頬にキスした。ガルシアも、親愛のキスをテオドールの頬に返した。
「すっかり綺麗になったね。ルシアン、僕の可愛い花嫁に相応しい娘だ」
テオドールの言葉に、ガルシアはさっと顔色を変えた。ガルシアは当然のことながら、自分が『男の子』であることを知っている。
生き延びるため、母や兄の生命を守るために、女の子の振りをしているだけだ。物心ついた頃から、乳母のマナや傅役のハシムからこんこんと聞かされてきた。
―何があっても露見してはいけない―
それは、自分ばかりでなく、家族皆の死を意味するのだ。
「ありがとうございます、テオお兄さま」
ガルシアは、声が震えぬよう慎重に言葉を継ぎ、会釈した。その目の前で、テオドールの眼が昏い輝きを帯びていたことに気付かなかった。
テオドールは、ガルシアが頭を上げると、その眼をじっと見つめ、おもむろに執事のコーエンに告げた。
「ルシアンの花嫁修業を始めることにする」
「えっ......」
言葉を発する間もなく、チクリ......と首筋に針のようなものを刺された。唐突に危機感に捕らわれて、ガルシアは身を翻えそうとしたが、身体に力が入らなかった。
崩折れるように差し出されたテオドールの腕の中に倒れ込んだ。
「兄さま......何を....」
怯えて唇を戦慄かせるガルシアにテオドールは暗く笑って言った。
「大丈夫だよ、ルシアン。僕の花嫁に相応しい『女の子』に生まれ変わるだけさ」
「な......」
言葉を失ったガルシアの身体を軽々と抱き抱え、ベッドに横たえると、ゆっくりとドレスを脱がしにかかった。
「止めて、兄さま......」
口許まで痺れて上手く動かない。ガルシアは、テオドールの手がドレスを剥ぎ取り、下着のシュミーズとペチコートを脱がしにかかるのを四肢を投げ出したまま、じっと見ていた。
下着の中には、平らな胸と......女性にはあるはずの無いものが存在している。
「ルシアン......」
溜め息混じりにテオドールが囁いた。
「君の身体に、何故こんなものが着いているんだい? まるで男の子のようじゃないか」
「テオ兄さま......」
ガルシアは全身から一気に血の気が引くのを感じた。テオドールの手が、ガルシアの未だ幼い男性器を撫で回していたからだ。
「僕を騙していたんだね、ルシアン......」
地の底から響くような恐ろしい声音だった。囁きながら、テオドールの手がガルシアのぺニスを剥き上げ、露出した淡い色の亀頭を抓った。
「ひ......!」
ガルシアは痛みと背筋を走る電流に身を仰け反らせた。
「ルシアン、女の子の君には、こんなものはいらないね。いっそ取ってしまおうか......」
小さな睾丸とぺニスを弄ぶテオドールの手に、ガルシアは身を打ち震わせた。
「許して.....テオ兄さま......」
テオドールは、色を失い真っ青になったガルシアの唇にゆっくりと口づけた。
「ルシアン......君はちゃんとした『女の子』にならなきゃいけない。母君やお兄上達のためにも......」
「ごめんなさい、テオ兄さま。許して......」
ガルシアの両の眼から溢れ落ちる透明な滴を指
で拭って、テオドールは微笑みながら囁いた。
「......取ってしまいたいところだが、これは君の罪の標として残してあげよう。だが、今後一切、僕の赦しなしに触れてはいけないよ、いいね?」
ガルシアは恐ろしさに身を震わせながら、悪魔のようなテオドールの囁きに、ただただ頷いた。
テオドールの指が優しくガルシアの髪を撫で、もっと恐ろしい言葉を口にした。
「本当の『女の子』になれるよう、赤ちゃんを産めるように、ルシアンの身体を作り替えてあげる。花嫁修業の第一歩としてね......」
ガルシアは恐怖のあまり、意識を手放した。
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