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帰る場所が無くなりまして。
…………さて、夕飯はどうしようか。
必要の無くなった合鍵をポストに落とし意外にも冷静にそんなことを考えていた。
真田 理人。21歳。
趣味は映画とカフェ巡り。
至って平凡な男子大学生。
つい今朝まで中学時代の友人の家に居候していたのだけれど、いつも通り帰って来ると部屋の電気も付いていなく誰も居なかった。
サプライズかな〜、なんて間抜けな発想で合鍵を使って入ると家具一式無くなっていて一枚のメモ帳しか残っていなかった。
『すまん。訳あって家を売ることになった。
お前の分の荷物はまとめて輸送したから。
合鍵はポストに入れといてくれ。じゃあな』
訳ってなんだよ、本当にサプライズじゃんか。
こうして俺は何の前触れも無く、ホームレスへの道を余儀なくされた。
……相談くらい、してくれても良かったじゃん。
なんて。今更言っても遅い。
目の前のアパートにはもう友人は居ないから。
と、とりあえず飯……っ
日が落ちてすっかり暗くなりかけるいつもの帰り道。
不幸にもパラパラと小雨が降り始める。
夕飯のついでに傘も買おうと近くのコンビニに向かいつつ、この後の事を考える。
実家から大学はあまりに遠く、さすがに始発でも通える距離じゃない。
かと言ってこの近くに知り合い居ないし。
となると、あとはホテルか……。
この近くで予約無しで行けるところと言えばどこだろ
『ラブ アイランド 全室統一休憩1時間900円、フリータイム3000円から……』
うわ、ラブホか……でも近いところはそこくらいしかないし……仕方ない、よな。
21歳、初めてラブホに入ります。
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が、
ラブホに来たはいいものの、学生は駄目と追い出された。
どうしようか……ここまで来といてまさかの入室禁止とかついてなさすぎる。
こんなことなら、今夜だけでも友人の部屋で寝かせて貰えばよかった。
ザアア……
雨の勢いは強くなってこの調子じゃしばらくまともに歩けないな。
雨宿り、して行くか。
ラブホ街から少し離れた街灯の多い大通り、一際オシャレで目立つカフェに寄りかかって雨が収まるのを待つ。
「……おい、そこ邪魔なんだけど」
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