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無愛想オーナーの本性

「はぁぁー……とりあえず助かったぁ……」 あの怖いけど親切なオーナーさんのおかげでしばらくの生活はなんとかなりそうだ。 まだ不安はかなり残っているけど。 その怖いけど親切なオーナーさんは明日の下準備してから行くから先に行ってろ、と告げてまたキッチンの奥に消えてしまった。 そういえば部屋、どこ入れば良いのか聞き忘れちゃったな…… 控え室の隅にあった階段を登って、一番手前の扉を開ける。 「…………えっ、」 確かに顔は怖かったし、口も悪かった。 エプロンを着けていなければ「そういう」危ない仕事をしてる人にも見えた。 だけど……これは…………正直、理解し難い…… 一番手前の部屋。 最初に目に付くこの部屋にこんな物を置いているのはあえてなのか。 ……うん、絶対そうだ。 一見綺麗に片付けられた部屋。 クイーンサイズの真っ白なベッド、床にはムチ、様々な種類の目隠しが仕舞われてるガラスの引き出し、赤いロウソク、複数の手錠、卑猥な道具が沢山入っている収納ボックス。 こんなに綺麗に性道具を収納する人はそうそういないだろう。 何に使うのか何となく分かるものから、見たことないようなエグい形をしたものがずらっと部屋中に置かれていて、さっきまで安心していた気持ちが一気に冷めていく。 …………もしかして俺、本当にヤバい人の所に来ちゃった……? 慌てて部屋を出ようとすると、一瞬クラっと目の前が霞んで見えた。 「んな気になんなら、試してみるか?」 「っひ、!?」 急に後ろから聞こえたバリトンボイス、今日何度目かの悲鳴をあげる。 やばい……!勝手に部屋開けたこと怒られる……!! ジリ…と後ずさると近くにあったムチが踵に当たる。 ひ……っ、俺、今から何され…… 「っふ、怯えすぎ。冗談だ。お前みてぇな貧乳抱いても何のメリットもねぇだろ、バーカ」 「は、はぁ…………」 それは喜んでいいのかどうかは微妙だが、手早く部屋から出る。 「お前の部屋はそこ真っ直ぐ行って左。ドアに「空き部屋1」って書いてあるはずだ。風呂とトイレはその向かい。飯食うのは基本下な」 「は、はい!あの、本当にありがとうございます……!」 めっちゃ顔怖いけど。変な趣味を持った人だけど、やっぱり親切で良い人だ。 「……ふ、あぁ。礼は明日からの働きで返せ」 あ、もしかして今笑ったのかな……見たいな…… あれ?この人こんな顔だったっけ…… ふと足元を見ると床がぐにゃんと歪んで見えた。 おかしいな……俺、疲れてるのかな 「どうした、眠いのか?…今日は特段と冷えるそうだ。毛布は押し入れにある、好きに使え」 「は、はい」 「それともう一つ………」 もうほぼ原型を留めていない視界の隅で黒髪が微かに揺れた 「知らない人には着いていくな、って教わらなかったのか?」

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