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唯一
彼はいつも眼鏡をかけてる。
しかも、日替わりだ。細いフレームで知的に見えるときもあれば、赤いフレームでいかにも業界人な時もある。流石、広告代理店の経営者。ぬかりなく、オシャレなのだ。
仕事をしているときも、昼ごはんを食べてるときも、必ず眼鏡をかけたまま。会社で眼鏡を外した顔を見たことある人は、いない。
唯一、僕だけが眼鏡を外した彼の顔を知っている。
僕の上司でありながら、恋人なのだ。
今夜も僕が彼の部屋に行き、ソファーでまったり。眼鏡をかけてない彼の顔はちょっとだけ幼く見えて、僕はついキスをしてしまう。
「…なんだよ」
不意打ちに弱い彼は真っ赤になる。すぐ赤くなるとこも、僕だけが知っているんだ。
会社ではあんなにクールなのに!みんなに教えてあげたい気はするけれど、僕だけのもの。
「好きだなあと思っちゃいまして!」
ホントのことを言ったのに、彼から後頭部をたたかれた。
「ばか」
やっぱり照れる彼は可愛い。
【了】
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