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第1話
すごい辛くなったときに、
はなし聞いてくれる人って、
いる?
俺は…
誰かいるのだろうか。
昔はいたような気がするけど、
今はどうかな。
高校以来の親友のあいつ?
いや、久々に連絡して、いきなりこんな話もどうなんだ。脈絡なさすぎだろう。
元カノとか元カレとか?
いやいや、今さらねえ…
いつものバーのマスターとか?
んー、
あの人、ストレートだしな…
…いや、そうね、そうだよね、
やっぱ、ないわ。
っつーか、誰かに話したところで、
実際、何か変わる?
何も変わらないよな、
話せばどーかなるとか、そーいうことじゃないよなー…
ってことが、
まあまあ長い人生経験を経て、わかったっていうのかな…
年食うって、意図せず恥ぶちまける行為を自制できるとか、良いこともある。
それでも、
心が痛いときは痛い。
ほかに言いようもないよ
悲しいな…
恥さらさずにいられるようになっただけ、自分が成長したのかな、
とかいう思考に切り替えて、感謝すべきなのか…
いやいや、成長してないから、こうウジウジ悩んでんだろ…
てか、俺、弱気になってんのかね?
土曜の夜遅く、なかなか帰って来ないあいつ、付き合い始めて、そろそろ5年経つ二歳年上の彼氏、コウを部屋で独り待っていると、時々こうなっちまう。
グルグルと終わりのない、俺の中のドロドロした感情が、頭の中を支配し始めるのだ。
コウは、こんな風に悲しんだりドロドロしたりすること、あるのだろうか。
俺は、何度もあいつに心掻き乱される。
出会ってからこれまで、何度も何度も。
理由はいつも同じことだ。要は俺の嫉妬だ。そのたびにあいつを責めてさ。
あいつには、恋人がいっぱいいて、俺はそれを全然知らなかったんだ。
ベッドの中でもスマホ手放すことはない。
あいつにとっては、たくさんの恋人を垂らしまくるのが大事で、それが幸せなんだろう。
俺は、正直、恋愛経験は豊富な方ではない。
一度つきあえば一途で、短くとも三年くらい、1人の相手とマジメに付き合う。
…そういうのって、重いのかな…
コウは、いつも幸せそうで明るくて、
そこに、常にたくさんの恋愛をまといたがるんだ。
俺はそういうの、信じられない。
そして、嫌だ。
それなのに、あいつの軽くて甘い言葉に溺れて離れられないでいる。
俺がおかしいの?
嫉妬深すぎるの?
本当に好きなら、1人の人を大切に思って、大事にするんじゃないの?
本当に愛しているなら。
あいつは、
俺のことを、ホントは愛しているわけではないんだろう。
口ではたびたび、愛していると言うけれど。
分かってるんだけど、そう考え込むたび、悲しい気持ちが溢れだして、
時々あいつを、責めてしまうんだ。
責めたところで、何も変わらないのに。
人は、変わらない。
あいつは、出会った頃も今も、平気で俺に嘘をつく。クソみたいな嘘を。
「タクミの言うことはわかるよ」
っていいながら
うざがってる、こんなこと言う俺を。
「わかるって、何を?コウが俺を全然愛していないってこと?それだけだろ?」
「何言ってんだよ。こんなに愛してるの、タクミが一番よく知ってるだろ?」
そして俺を抱き寄せてキスだ。
俺は、コウから離れられない。
あいつはそれをよく理解して、この態度だ。
全く、話にならない。
もう一度、俺を抱き締め、キスをして、
「じゃ、な!」
って笑って出かけるんだ。振り返りもせずに。
バカみたいだ。
相手を変えるなんてこと、どんなに求めても、この世では、できる術はない。変えられるのは、自分自身だけだ。
本当に幸せになりたいなら、もう別れるべきだ。
分かってる。
だってさ、5年だよ。
小学校ならそろそろ卒業だし、
大学生なら卒業しちゃってる。そんな年月だ。
そんな長い間、決意できすに去れないって、どういうことだ?
執着か。情ってやつか。
惰性、だとか?
もし、俺が友達からこんな話、聞かされたら、迷わずこう言いたいね、
「早く別れた方がいいんじゃない?」
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