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第4話
目が覚めた。外はすっかり明るい。鳥の声と波の音が聞こえる。
そして隣にコウが寝ていて、ビックリした。
いつの間に来たんだろう、飲み過ぎたせいか全く気付かなかった。
「んん…ああ、タクミ、おはよう。起きたんだ、
よく眠ってたな、アハハハ」
鼻先を俺の顔に寄せて、いつものように笑っている。
この目を細めた笑顔がたまらないんだ…
「腹、減ったな。コーヒー飲もうぜ。久しぶりに豆、挽くかな~」
軽く伸びをしてキッチンに向かうコウ。
俺は少し、頭がボーッとして、口の中がカラカラだ。
コウがすごく幸せそうに笑うから、
つい俺も笑い返してしまう。
「おいタクミ、今日は天気もいいぞ。シーツ洗濯しようぜ!」
「お、おう、そうだな」
「タクミ、今晩は新しいシーツだ、気持ちいいぞ~!」
俺も、のそのそベッドを出る。
窓を開けると、青い空と海だ。
そう、俺たちは、インターネットでできる仕事で会社を立ち上げて、3年前からこの海辺の町に越して来たのだ。
鼻歌混じりにコーヒーを淹れるコウ。
コウは、どんな朝も、起きた瞬間から機嫌がいい。歌ったり、冗談言ったり、
俺を笑わせようとしてくるんだ。
ああコウ、大好きだ。
やっぱり俺は好きで仕方ないんだよ。
コウが俺と一緒にいることを選んでくれて、俺を笑わせようとしてくれて、幸せなんだ…
俺は、何を悩んでいたんだろう。
…何を?
って、夜中のコウの、女からのメールだ。
思い出した。
「昨日はもうさぁ、参っちゃったよ。昔の同僚がこの先の温泉宿に彼氏と来ててさ。一緒に夕飯食べて帰って来たんだけど、あいつらその後揉めたんだとさ。原因は俺だって。
全く、ゲイ舐めんな!ってんだよ。女に手出さねーって。気軽に呼び出しやがって。
なー、タクミ!お前も腹立つだろ?
俺はタクミとゆっくりイチャイチャしたかったのにさ~」
先回りして、さりげなくフォロー切り出す技術とか…。俺もそんな風にできたら…
「あんな夜中に、おかしくないか」
「おかしいよなあ!俺もおかしいって思う!
でも、埋め合わせしてくれるらしいぜ。新規案件、小さいけどあるって。
どうよ、俺!デキる男はタダじゃ済まさないぜ!俺って、すごくない?褒めてくれよ、タクミ~」
「お、おう、そうなんだ、それはよかった」
「さ、タクミ!はい、これ、
コーヒー淹れたて!美味しいぞ~!
…ん~旨いなあ、どこの豆だっけ?」
「角のコーヒー店のグァテマラだろ、こないだ買ったヤツ。香りがいいな」
すっかり今日もコウのペースに乗せられちまった。これだから人たらしは…
いい日曜になりそうだ。
やっぱり今日も、俺は、コウから離れられないんだ…
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