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《部屋の明かり》

そうこうしているとバイトの時間が迫る。 あずまを残して行くのは心配だったけれど、あずまを食べさせていく為にもバイトは休めない。 買い置きの晩ご飯を食べるように言い聞かせ、アパートを出る。 そうして、そこはかとなくバイトも終わり、23時半、急いでアパートに戻る。 やはり明かりは付いていない。 居てくれるとは思っているけど… もし出て行ってしまっていたら… そういつも不安になる。 急いでドアを開き電気をつける。 「あずまさん!居た!」 「っ、敬大くん?おかえり」 ぱっとついた明かりに、やはり眩しそうにしている。 「ただいま」 駆け寄って、あずまを抱きしめる。 「君はなんでいつも帰ったら勢いよく抱きついてくるんだ?」 そう不思議そうに首をかしげる。 「なんでって、もう!あずまさんっ」 「ん?」 「電気消えてるから居ないのかと思って心配になるからでしょーが!」 「はは、居るよ」 離れ難い場所… この人のいい青年に甘えて… 本当は居ていい場所ではないのに。 「はぁ、夜は起きてるなら電気つけてください」 「いや、電気代がもったいない」 「大丈夫ですから、毎日ひやひやする身にもなってください」 「そう言われてもな…」 「じゃ、起きてる日は23時になったら電気つけてください!」 「23時?」 「俺が30分以内に帰りますから、帰った時明るい方が俺は嬉しいっすから」 「分かったよ」 「はぁ、良かった、晩飯食いました?」 「あぁ、食べたよ。ありがとう」 「そっか、良かった。じゃ夜食、いきますか」 帰りに調達してきた夜食が入った袋を見せる。 「なんだい?」 「たこ焼きっす」 「美味しそうだね」 たこ焼きを食べたのは何十年も前のことだ。 「こっち、あずまさんの分です、食べて風呂入りましょ」 「はは、本当に太らされそうだよ」 「もち、太ってください!」 「面白い子だ、本当に」 そう幸せそうに笑うあずまを見て、心が温まるように感じられた。

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