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57.二足のわらじ

 やはり照磨(しょうま)だった。景介(けいすけ)の席に腰かけ、課題に勤しむ頼人(よりと)を撮っている。 「先輩、あの~、これはどうすれば?」 「ん? ああ、それはね……」  撮影しながら解説をしていく。器用だ。いや異様だ。頼人はなぜああも平然としていられるのか。クラスメイト達も同種の疑問を抱いているようだ。雑談を交わしつつもちらちらと二人の方を見ている。しかし、誰一人として踏み込もうとはしない。ここはやはり自分達が。 「っ!?」  深呼吸をしてからなどと及び腰になっている間に景介に先を越されてしまう。 「ちょっ、け、ケイ――!?」  何かを叩くような音がした。景介の仕業だ。自席に手をついて照磨を(にら)み付けている。やりすぎだ。大慌てで後を追う。 「いい加減にしてください。迷惑なん――」 「ああ、いいんだよ」 「なっ……!」 「「「「「「えっ…!?」」」」」」  頼人から発せられた想定外の返答に景介だけでなくルーカスも、周囲の生徒達までもが面食らう。 「柄じゃないんだけどさ、モデル? やらせてもらうことにしたから」  初めて横川(よこかわ)の地を踏んだ日、照磨は言った。『報酬は頼人でいいよ』と。無論、了承などしていないが、照磨があの一件をネタに頼人に迫ったという線は十分に考えられる。 「どうして? どうしてOKしたの?」  頼人のことだ。仮にルーカスが予想した通りであったとしても(にご)すだろう。偽りの気配を感じた時。その時は止めに入ろう。全身全霊をもって。決意を胸に返事を待つ。  すると頼人は照れ臭そうに頬を掻いた――。

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