65 / 116

65.花、開いて(☆)

「ケイ……はぅ……んっ……」  唇が触れ合う度にカーテンのリングランナーが(ひか)えめな音を立てて左右に振れる。薄っすらと目を開けると出入りを繰り返す光が景介(けいすけ)の顔を照らしているのが見えた。黒い睫毛(まつげ)に光の粒がのっている。  ――美しい。  そう思う一方で崩したいとも思う。相反する感情に戸惑いながらもカメラを右太股(ふともも)の横へ。景介の後頭部に触れる。 「ケイ、舌――っ!?」  背が大きく跳ねる。手だ。手が服の中に入ってきている。冷たく骨ばったそれに(へそ)(あばら)をなぞられる。身体が強張っていく。緊張しているわけでも恥ずかしがっているわけでもない。  ――警戒しているのだ。  手が胸まで届く。満遍なく撫で上げ先端を摘まんだ。やわらかだったそれが硬さを帯びていく。 「っ!? る、ルー……?」  景介の腕を掴んで止めた。  ――やはり求めていた。  愛らしい自分を。胸の先で女性のように悦ぶ自分を。 「……ごめん」  いずれは応えられなくなる。ならばいっそ最初から応えずにおいた方がいい。代わりに励む。落胆させてしまう分。いやそれ以上に。全身全霊をもって景介を愛する。大切に、大切にする。 「……っ」  自身でも薄らと感じている違和感。それらには目を(つぶ)り事を進めていく。 「舌、出してもらってもいいかな?」 「あっ、ああ……」  景介は息を呑んだ後、おずおずと舌を出した。しっとりと濡れた桃色のそこからは芳醇(ほうじゅん)な香気が漂う。 「んっ……」  誘われるまま舌を触れさせると味蕾(みらい)が甘さを感じ取った。 「ッ……!」  先ほどの決意はどこへやら。獣のように(むさぼ)り出す。 「――っ! ………~~ぁっ」  吸い上げていく。蜜を(しぼ)り取るよう緩急をつけて。 「はぁ……ぁ……んンッ……!」  低く抑揚を感じさせない声が甘美なものになっていく。ズボンがきつい。中心が痛いぐらいに張り詰めているのが分かる。しかし、ここではまずい。ソファでするにしても体勢が限られ、景介に余計な負荷をかけてしまう。 「ケイ、こっち」  (わず)かながらに残った理性で景介の腕を引き、自室に向かう――。

ともだちにシェアしよう!