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66.酔い、酔わされ(☆)

 この部屋も彼の作品で埋め尽くされている。 「ルー……」  しかしながら、今の景介(けいすけ)には3年ぶりに入ったルーカスの部屋を眺める余裕もないらしい。ブレザーとネクタイを乱雑に脱ぎ捨てる。床に落ちゆくそれらを目で追っていると肩を押された。  抗わずそのままベッドに倒れ込む。景介も続きベッドが軋んだ。向かい合いどちらともなく口付ける。熱く、呼吸もままならないが不思議と満たされていくのを感じた。 「はぁ……はぁ……」 「ごほっ、……んっ……」  個々のペースで乱れた呼吸を整えていく。その最中、彼の首筋に意識が向く。ライトブルーのワイシャツに白いそれがよく映えている。空手で鍛え上げられた肩。広く(たくま)しいが、鎖骨と肩の間にある肉はやわらかそうで食めばミルクにも似た味わいや香りを(たの)しめるような気がした。 「……っ、………」 「あ? なっ、ンだよ……」  カメラをベッド横、白い木製のチェストの上に置く。 「ルー……? ……っ!? 待っ――っぁ……ッ!」  やわらかくもなければミルクのような味も香りもしなかった。だが、興奮はおさまらない。そればかりか一層昂っていく。スパイスになってしまったのだ。頬に触れる首の脈、鼻孔(びこう)(くすぐ)る汗の香りが。 「あっ! はぁ……、あっ、~~ッ、ぁ……ッ!」  首筋に(かぶ)り付きながら景介の太股に陰茎を押し付ける。温みと硬さを感じ取った直後、蜜が漏れ出た。乱雑にズボンを脱ぎ捨てる。黒く変色した紺のボクサーパンツは春の暖かな室内でもひんやりと冷たかった。 「んっ、……はっ……る……ぅ……んっ……」  荒々しくキスをしながら景介のズボンも脱がし床に落とす。 「はぁ、はぁ……っ……ん……ッ」  (あら)わになった白く引き締まった太股(ふともも)を前に重たくなった唾を呑み込んだ。そんなルーカスの目を見て景介は言葉を失う――。

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