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第3話

「あ、すみません。ちょっと体調が優れなくて……はい、はい。念の為検査しに行きます。はい。失礼します」  思い通りに動かない手で会社に休暇の電話をして、ポケットに携帯を入れる。密かに忍ばせていたカイロも染にとっては気休め程度の温もりしか得ることができない。 「無理しなくていいんだよ?」 「もう遅い。ほら、行くぞ」  少年の腕を掴み、染はさっきまで通ってきた道に振り返り歩きだそうとする……はずだった。 「んひゃ!!冷たっ……!」 「え……」  掴む腕を思わず離す。掴まれた腕もまた、思わず振り払った。 「な、んだ……」  染は悴む指先から広がるジンジンとする感覚に目を丸めて、その原因となる少年を見た。 「おにいさんの手、冷たすぎ。びっくりしちゃったよ」 「いや…えーっと。ごめん。俺、冷え性で……」 「でも」  少年は駆け寄る。二人の距離は縮まり、小さく染に呟いた。 「気持ちいい」  染の冷たすぎる手と少年の熱い手が重なり、互いの温度を感じあった。隣に並んだ少年の表情は染からはっきりと見えないが、嬉しそうに心が踊っているのが歩いている様子で分かる。  染からしても少年の温もりは気持ち良く、家までの帰り道、繋いだ手は決して離そうとしなかった。  雪はシンシンと降り注ぐ。二人が出会ったことが合図になり歓迎するように空から地上へゆっくり落ちていく。まだ、積もらない。

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