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第2話

(あの毛布の中にいるのは人に違いない)  生きているか死んでいるか分からないけれど、気づいてしまったからには無視できないのが染だった。  小さい頃から背が高くて、イジメられた経験は無いのにイジメから他者を救った回数は数え切れない程ある。今回も本能的か慣れなのか、救わないといけないと染が思った時には、もう自身の片手が毛布を優しく取り払っていた。 「……え」  驚いた。目を見開いてそれは驚いた。  包まれていたのは、少年だった。  それも素足が見えている。毛布以外に少年の身を包んでいるのは、これまた白い、少年の身体には大きすぎるサイズらしい長袖のポロシャツがたった一枚だけ。 「んぅ……ま、ぶし……」  綺麗な顔を歪ませて、少年はゆっくりと起き上がり姿を完全に表した。声変わりはしたのだろう。それでも高い音で言葉を紡いでいるのが分かる。身長は160くらいだろうか。髪はオフホワイトに染めている…?  そんな事よりも惹かれる少年の肌は、透き通るような白色でシミ等の汚れは一切知らないみたいに美しかった。 「なぁに?おにいさん、僕に何か用?」  見つめる瞳は、くるりんと大きく色が灰色だった。  小さな鏡みたいにその瞳の中に自分の焦る姿が見えた。 「あっ……と、こんな所で眠ってたら、寒くて凍死しちゃうよ?」  少年の美しすぎる容姿に戸惑いを隠せないまま、染は救いになる言葉を掛ける。 「寒い?」 「そう、今日は風も強いし早くお家に帰りな。ね?」  染の言葉に少年は口角を上げてニヤリとする。毛布を自身の細くて薄い両肩に掛け直して染にグッと近づくとお互いの吐く息が空中で混ざり合いそうな距離まで少年は接近する。 (近い……)  ただ相手を心配しているだけなのに染は何故か緊張している事に気づく。少年の白い息と共に吐き出された言葉が、頭の中で木霊する。 「なら……おにいさんのお家に泊めてよ」  天使のような少年と出会って数分。雪がチラつき始めたこの瞬間、初雪のニュースが街中に飛び交っていた。

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