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第5話

「おにいさーん。服何でもいいから貸してくんない?」  お風呂から出てきて第一声。リビングに入ってきた少年はバスタオル一枚を身に纏っただけ。さっきよりも白い素肌が多く見えて、太腿まで足が見える姿に何故か染の心拍が早くなる。 「こ、これでいいか?」  寝室から染が持ってきたのは、何処の動物だと聞きたくなるほど毛深いもっこもこなスウェットの上下とパンツ。 「こんなの着たら暑くすぎて干からびちゃうよ!おにいさんさ、Tシャツとか無いの?半袖ね。下も短パンでいいんだけど」 「え……だって寒いだろ?このスウェットマジで暖かいから着ろよ」 「だーかーら!僕はおにいさんみたいに冷え性じゃないの!なんなら体温高くて困ってるのに」 「そんな怒んなって、どっかあると思うから待ってろ」 「せっかく一番のお気に入り貸してやろうとしたのに」とぶつぶつ呟きながら染は、ベッドのある寝室へ戻る。  寝室の中は温かい。今みたいに寒い季節になると24時間暖房を稼働させている。電気代が……なんて言ってられない。染には唯一のくつろげる空間だから。 「ちょっとデカイかもしんねーけど、ほら」  少年に再度差し出した服は望みどおりの半袖短パン。 「ありがと」  少年は羽織っていたバスタオルをその場で床に落として、染の手から服を取った。 「っな……」  先に渡していた下着以外に何も纏わないそのほぼ裸体の姿に開いた口が塞がらない。細い線は美しく、白く、守ってあげたくなる肉の少なさで、一番際立って目についたのは少年の首筋だ。 「痣……?」  白い肌の中に一箇所、青紫色に染まった部分を見つけた。 「あぁ、これ昨日の夜の相手に付けられたんだよね。散々付けるなって言ったのにあのオッサン、やりやがって……」  そう答える少年の言動で分かる。きっと行為は合意の上で行ったんだろうと。しかも相手が男だという事実も知り、この目の前にいるのはもしかすると天使に見せた悪魔なのかもしれないと、染の背筋は凍った。

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