6 / 13

第6話

「どお?おにいさん、似合ってる?」  やはり少年には大きかった染の服は、着させられている感があるがそれもまた似合っていた。 「お、おおぅ」 「やったぁ。おにいさんの服、良い匂いするね。僕、好きだよ」  服の裾を持って笑う少年の言葉は、はたして本心なのか、染を誘惑しようとしているのか、全く分からなかった。 「あ。一応これ作ったっつーか握っただけだけど、良かったら食べな」  テーブルを指差す先には、お皿の上に大きめの三角のおにぎりが二つ。丁寧に海苔まで巻かれている。 「あれって……おにぎり?僕に?」 「あぁ、嫌なら無理して食べるなよ。コンビニで何か買ってくる、し……」  染が話し終える前に、少年はテーブルまで早足で駆け寄って「いただきまーす」と言い終えると同時に手作りのおにぎりを小さな口いっぱいに頬張った。 「んー!まぃ!おにいさん!美味しい!!」  米粒を一つ、唇の横につけて喜ぶ無邪気な少年はさっきとは裏腹だ。この笑顔に騙されるんだろうか、と考えるがそれでも真冬の外に一人行く宛も無く眠っていた光景を思い出せば、今更引き返すなんて出来ないと、染は守る正義へ思いが傾く。 「聞きたいんだけどさ、親は?家はねぇの?学校とかは?」  口いっぱいに入っているご飯をモグモグと飲み込み、少年は答える。 「おにいさんは僕のことをそんなに知ってどうするの?警察でも連れて行く?大人に保護させて施設に入れようって考え?」  質問に質問で返すなよ。と染は呆れつつも「そんなことしねぇって」と否定する。 「なら一つ」 「ふぁに(何)?」 「名前。それだけでいいから教えてくれ」   答えを出すのに少年は時間を要した。それすら答えたくないのかと思うくらい時間が経つ。気づけば少年はおにぎりを全て食べ終えて、満足そうに伸びをした。 「名前……ね……」  何処か遠くを見て、遥か昔の記憶を辿っているようだった。 「白司(ハクシ)。それが僕の名前……」  だった気がする。と続きそうなトーンで少年、白司は答えを染に伝えた。視線は合わさない。  偽名では、とほんの一瞬疑うがその真意は分からないまま。 (とりあえず呼び名を教えてもらえただけいいか)

ともだちにシェアしよう!