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もっと俺を喰って大きく、強くなれ。

*ほんの少しカニバリズム的な描写があります。 ─────────── あー…途中から来たみんなは知らないかも知れないけど、 鬼族って食人鬼(グール)吸血鬼(ヴァンパイア)的なもののハーフのハイブリッド種族なんだけれど、 ここからはちょっと苦手な人がいるかもしれないかな? え?グロ映画とかそういう系のものは、私達の仕事ではそんなのなんて大丈夫でしょう? まぁ…皆、医者だったり、それ系の研究者だものね。 私が言ったのは、倫理的なものなんだけれど …感覚が違ってたらごめんね? ◇◇◇ イライラも止まらないしお腹も限界だから、(くりや)の方に何か無いか覗きに行く事にした。 茨木(イバラキ)のくれたお菓子は、あいつの持ってきた肉とかが酷く不味い時があるので、その時の口直しとして置いておく。 あいつはお菓子とか食べないから無くならないしな。 あいつの奇行に慣れている、皇宮(ここ)の皆は僕に優しい。 今までも時々、あいつの血以外のものも欲しいだろうからと、色々と気を使ってくれていた。 「百合(ユリ)様もこれから暫くは甘いものは駄目ですから、内緒ですよ?」 「なんですか?それ?」 「あ…すみません、そのうちに朱点様がお伝えしますよ。」 そんな不思議な事を言いつつ、僕の好きなお菓子もくれた。 ◇◇◇ ここからの話は非常に人を選ぶというか… 多分、私達の常識や価値観などが、もう完全に壊れた話だけど…大丈夫? 《シュテンは相当に酷いことが分かってるから大丈夫。》 いや、それだけじゃないんだけどね… 《ここまできてやめるのは酷いわ!》 まぁ…良いか。 あ、次はテキーラを。 こっちに来て良かったのは酒の種類が豊富な事だな。 私の実家もワイナリーを持っているし、このへんは本当に良かったな。 あいつにも飲ませてやりたい。 ◇◇◇ 厨でお兄さんやお姉さんたちから、お菓子や軽い食事などを貰い、それを持って、あいつの部屋に戻る。 あそこで食べても良かったけど、僕が居なかったら後で機嫌が悪いし、あいつの好きなもの等も、皆がさり気なく渡してくるから、一緒に食べることにした。 断じて、僕が、そうしたかったからとかじゃないからな! 彼らが部屋まで持って行くと言われたが、朱点の兄姉の問題児たちが逃げ出したとかで、忙しくしていたし、 あいつも部屋に、僕や従者以外を入れることを嫌っていたから、お菓子や軽食を抱え、あいつの部屋までの回廊を歩いていた。 暫く歩いていると、向こうから【】を纏った、変なやつらがきた。 僕の家にもいる、あいつに呪詛をかけたりしたという、良くない奴らと似たやつだ。 「スゲェいい匂いがするから来てみれば、こんなところにめちゃくちゃカワイイ子がいるじゃん。」 「あいつの【華】を付けて、の角生やしてるし、これが噂のあいつの『運命』か?」 「丁度良い。あいつは弟のくせに生意気で、俺らを差し置いて親父の跡を継ぐとかムカついてたんだよな。皆と一緒にこいつでか。」 「早く逃げないといけないけれど、この子を連れて行くのも良いわね。」 どうやらこいつらは全員が朱点の兄や姉の様だった。 全部で十人少々いたが、皇の角も【名】さえも持たないうえに、変な【青】がえた。 「じゃあお前はこっちに来いよ」 あいつの兄らしい変なやつが、僕の手を掴みどこかに連れて行こうとする。 「お離し下さい! 私は部屋に戻り、朱点様と食事をとる予定です。何かございましたら朱点様に言って、許可をお取り下さい。」 「いいからこっちに来いよ!皇子サマの命令だぜ。」 僕は朱点からあまり部屋の外を彷徨くなと言われていた。 多分こういうやつに会わせたくないんだろうと思う。 一応、こういった厄介なのに絡まれた場合の対応を教えてもらったけど、 こいつらには 効かないらしい。 【名】も持っておらず、力も弱い。 本当に朱点の兄弟とは思えなかった。 「あいつも最近は、食事を頻繁にしないといけないくらい、弱ってるみたいだし、怖くなんてないからな。ハハハハハハ………」 「「「「ハハハハハ…」」」」 「「「アハハハ」」」 どうやら最近僕のせいで、朱点が頻繁に後宮に行っている事を知っているらしい。 どう考えても、こいつらに僕が一人でなんとかするのは無理だ。 「あいつが飢えてるのはいつもの事だけど、渇きもおぼえるなんてね。」 「あはははは…は、ひぃ!」 その時、僕の後ろから恐ろしい気配を感じ、震えた。 最近ずっとそばでよく嗅ぐ匂いもする。 存在そのものが震えるくらいに怖く、恐ろしいそれは口を開いた。 「俺の嫁に何をしている?」 朱点だった。 こいつは『嫁』とか言ったけど、僕は了承していないし、そもそもそんな話は聞いていなかった。 それに…僕の【(いえ)】も大反対していた。 「ひぃッ!し、朱点…何だよ、この子がなんか沢山色々持ってるから、手伝おうとしただけだよな?みんな?」 「えぇ、そうよ。」 「もちろんだ、可愛い子にこんな大荷物持たせるなんてどうかしているもんな?」 奴らは、朱点を異常なくらいに怖れていた。 「その割には、俺のお姫様の腕には貴様の手が、痣になってついているな?」 (あ、本当だ、気づかなかったけど、結構強い力で握られていたんだな) 朱点は、恐ろしいまでの殺気を出し、やつらを見る。 それはとても兄弟に向けるものでは無い。 朱点(こいつ)が生まれるまで、皇様と后陛下にはしか生まれなかった。 素行が悪く酷いものなどは処刑されていた。 今、目の前にいる奴らも近々そうなるのでは?と言われているような奴らだった。 今まで僕は朱点のこんな面は見たことなかった。 いつも僕には『俺のお姫様』とか言って、デロデロに甘やかす。 (それに、目の前にいる奴らは皇の鬼の癖に、なんでこんなに【名】無しで弱っちいんだ?) ◇◇◇ 解説が必要なので説明するよ。 鬼族の名前の付け方は独特でね、あちらでは【名】というものが非常に強い力を持つんだ。 朱点の名乗っているものだって、通り名で本名じゃない。 《シュテンの本名は何なんだ?》 力の強いものの【名】を呼ぶことは非常に恐ろしく、許されないと呼べない。 あいつの父の皇陛下や、母の后陛下もその地位の名で呼ばれていた。 《なるほど、禁止されているのね。》 それで、鬼のΩの名前は、持って生まれた【華】の名前になると言ったが、 鬼のαは魂が持つ色を、母親のΩや后陛下などが、持つ眼でて、名付ける。 鬼のΩにはその眼が備わっているんだ。 【名】を持たないってことは、非常に弱い存在か、もしくは歪なものだ。 私も2つの名前を持っていたけれど、明らかにΩだったから、周りは百合(lily)と呼んでいたね。 《リリィにも他に名前はあるのか?》 もう一つの名前?今はまだ秘密だよ。 この話を続けたらもう少し先の方で分かるから。 その時にあいつの本当の名前と一緒に教えるよ。 《楽しみにしているよ。》 《リリィも可愛いけれど?》 《言っても男にそれはないだろう。》 《Ωなんだから可愛くても良いのよ!》 《《そうよ!》》 名前を褒めてくれてありがとう? それからそこの君、Ωは自身の持つ【華】の名を名乗ると言ったよ。 あいつの場合なら、青薔薇(blue rose)、もしくは薔薇(rose)だ。 《うぇ?!それは本当に無いな。》 因みに私の姉は紅薔薇(red rose)だった。 《あら、女の人だとなんかしっくりくるわね。》 《本当の名前が知りたくなるわね!》 《魂の色の名前なんだよな?》 うーん、なんか期待値が高いなぁ… 今日はそこまでいけるか分からないけれど、その時に言ってくれた言葉が、プロポーズかなぁ? 《《《ヒューヒュー!》》》 《ワァオ!》 《このシュテンがなんて言うのかちょっと怖いな》 まぁ、普通はαやΩに分化したら、それぞれに相応しい【名】を正式に名乗るものなんだ。 だからΩのる目を持った私からすると奴らは相当おかしかった。 力の象徴の【皇】の角も無い、魂は穢れている。 そんな奴らにあいつのとった行動は凄まじかった。 ◇◇◇ 「親父も母上も、『まだ駄目だ』と言うから見逃してやってた。目障りだった【青】も反対する。呪いまできた。 もう我慢することはやめる。」 朱点は普段の調子で事も無げに話した。 その整い過ぎた顔には何の表情も浮かんでいない。 それからとても凄まじい惨劇が僕の目の前で起こった。 まずは僕に声をかけ、引っ掴み、痣をつけた男を 引裂き、潰し、その(はらわた)なども引き摺り出して、バラバラに解体していった。 何故か彼らは鬼の癖にそういったことに免疫が無いらしく、 恐怖の為かその場で凍りつき、動くことが出来ないみたいだった。 朱点は、そのまま他の兄弟なども惨殺していった。 ただただ目の前で繰り広げれれる惨劇を、呆然としたまま声さえ上げず、見ていて処分を待つやつらに、生きたままバラされていくやつら、 正直、鬼の僕でもなかなか辛い光景だったが、朱点はそれらを平然と行い、更には彼らを喰らっていく。 お腹を空かせていた僕にも 「こいつを喰って、大きくなれ」 そう言って、その場にいたもの全てを潰して、無理矢理食わせた。 目の前で起こった兄弟殺しの上に同族喰い。 聞いていたようにこいつは強い鬼の祖の性質を持ちすぎている。 鬼族では上の身分のものからの、こういった制裁なんて当たり前だし、もともと鬼は仲間の肉を食べる。 それによって自分たちが滅びかけたくらいなのに、 これだけの血の濃い性質のものが居たなんて恐ろしかった。 僕も最後の純血の鬼と言われていたし、こういった性質がこれから出てくるのだろうか? 正直不味いし、もともと僕は肉を食さない。 なのに朱点はいつも僕に無理矢理にでもして僕に沢山食べさせる。 「……こいつらも俺も好きなだけ沢山喰って、早く、大きく、強くなれ。」 いつも僕に食べさせるときに言う言葉がより切実で、 心から僕のを苦しいくらいに待っているのがわかった。 「もっと俺を喰って大きく、強くなれ」 そう言って、血まで飲ませてきた。 こいつは何故こんなにも焦っているんだろう? 何が苦しいんだろう? あんなにも純粋で無邪気な子供の様な顔をして、好意を向けたかと思えば こんな酷く昏く、つらそうな哀しい顔をする。 こいつの考えていることや、その行動、発言など全てが理解不能だ。 だけど、僕に対する愛情は確かにあるんだと思えた。 そしてその後、非常に興奮しているこいつは僕を閨に連れ込み、いつもより乱暴に抱いた。 ◇◇◇ あら、………皆、物凄い顔している人と口抑えてる人は大丈夫? 《やっぱりそんなもんばっか食ってたからマリーは味オンチ!》 …………本当にそうだと思うね。 あれ以外持ってきてくれないんだから、閨…ベッドルームのことね。 ほぼそこで暮らす生活だったし、あいつがごはんを持ってこなきゃ動けない。 私もかなり強い力を持つΩだったから大食いだったし、夫が与えてくれなきゃ、眷属の二、三人は余裕で潰してたからね。 まぁ、奴ら下僕の場合は犯罪者とかの刑期中のやつとか、処刑待ちのやつとかだから、 あいつはお腹が空くとよく潰して、私にも食べさせたよ。 《oh……………》 《ぅぇぇ…》 あら…ごめんね?さらに気分悪くなっちゃった? 《シュテンは可哀想なモンスター…》 …そうかもしれないね。 誰からも怖れられていて、簡単に受け入れられなかった為に、その年齢ではあり得ないくらい中身が幼かった。 母親である后陛下が、ベッドルームで過ごすような生活だった事もある。 《全く、父親と母親は何を考えているんだ。》 事情があるんだけれど、それはまた先になるかな。 あいつは乳母だった茨木の母や、乳兄弟の茨木、側近の四童子くらいの、力のあるものとしか慣れ合えなかった。 そんな彼らでも、最初の頃はあいつを怖れていたそうだし。 《シュテン…》 あいつにとって百合()は、初めて会った時から自分を全く怖れない存在だったんだ。

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