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「浩也くんになら何をされても嬉しいよ」
「でも……」
「大丈夫だから。こんな風になっちゃて、説得力無いかもしれないけど……好きだから、触れて欲しい。僕も、浩也くんに触れたい」
そう囁いた日向が首の付け根へとキスをしてきたから……浩也の胸は言いようのない温かい気持ちに包まれる。
「ありがとう」
と言いかけた時、それより早く「あっ」と微かな声を上げた日向が指で前方を差し示した。
「流れ星」
「ああ」
つられて視線を前に移すと、小さな光が流れて消える。
「星、今日は綺麗に見えるな」
「うん。本当……綺麗」
いつの間にか、星空を見上げる事すらしなくなっていて……久々に見た空の煌めきに暫し浩也は足を止めた。
『退院したら、一緒に星を見に行こう』
「そういえば……約束、してたな」
幼い頃の口約束を思い出して呟くと、「うん」と答える日向の声が耳元へと響いてくる。
「今度、見に行こう」
その時には、図鑑と懐中電灯と、何か温かい飲み物を持って、どこか小高い丘の上で並んで星を眺めたい。
「ヒナ、好きだ。いつも……ありがとう」
謝罪の代わりに礼を告げると、頷く気配が伝わってきて、「僕も……星、見に行くの楽しみにしてる」と答える日向の声が僅かに震えているのが分かった。
「泣くな」
告げながら、振り向いた浩也は日向の頬へとキスをする。すると、「だって、嬉しくて」と答えた日向が抱きつく腕へと力を込め、「大好き」と恥ずかしそうに小さな声で囁いた。
おわり
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