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ビジネス⑥
スプーンを掴み ザクッとオムライスに差し入れ
掬って口に運ぶと 伊織さんは固まった。
・・あれ。
なんか不味かったかな。
口に合わない系だったかもしれない。
そりゃそうか・・。
「あの。伊織さん。もし口に合わなかったら・・。」
そう声をかけた瞬間 伊織さんは猛然と
オムライスに喰らいついた。
えー。
嘘。。。
みるみる無くなっていく。
ビールも飲まず これぞまさしく一気食い。。
米粒一つ残さず平らげると はぁ。と息を吐き
ゴクゴクと残ったビールを飲み干した。
ふと俺へ視線を戻すと ニヤリと笑う。
「・・旨かった。」
そう言って 満足気にうん。と一人で頷いた。
なんだろ。
なんか。子供みたい。
口元にケチャップついてるし。
紙ナプキンを取り 手を伸ばして伊織さんの
口元を拭くと 伊織さんは目を見開き
驚いたように パッと俺の手首を掴んだ。
え。
ああ。ちょっと出しゃばった真似だったかな。
「す・・すいません。ケチャップついてたから。。」
急いで手を引っ込める。
いや。と伊織さんもバツが悪そうに視線を逸らした。
なんだよ。
俺の心臓。。
バクバクが止まらない。
待ってって。。
おかしいってこんなの。。
冷蔵庫から缶ビールを出し プルを開けて
一気に喉に流し込んだ。
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