46 / 121

ビジネス⑦

なんだか顔が火照る。 屋上には気持ちいい風が吹いていて クールダウンにはちょうど良いかもな。。 柚はテーブルを出し アウトドア用の椅子を 二つ並びでセットし テーブルの上に つまみの チーズとサラミ。スモークサーモンのマリネを 置いて グラス二つに赤ワインを注いだ。 「ワインは伊織さんが普段飲んでいるような いいヤツじゃないですからね。」 そう念を押し グラスを渡す。 缶酎ハイよりはいいだろうと思ったんだけど。 伊織さんはドカッと椅子に座り 長い足を 投げ出したまま ワインをぐびっと飲んだ。 「ワインの味など最初からわからない。 高い物を旨いとする風潮も理解出来ないし これは別に不味くも無いだろう。 好きな物を飲めばいいだけだ。」 そう言うと ふと夜空を見上げる。 「こんな風に空を見上げる事も無い生活を していると こういう時間もたまにはいい。 それだけで 味も二割増しというもの。 そうだろう? だから君も屋上飲みとやらを 提案したんじゃないのか。」 そう言って サラミにフォークを刺すと 口に入れ モグモグと食べ始めた。 なんかちょっとわかってくれたみたいで嬉しい。 手に持つグラスワインをグイッと飲み干し 自分のと 伊織さんのグラスになみなみ注ぐ。 この人。 味覚は俺と近いかもしれない。 最初はからかい半分。 でも その後 何処に連れて行っても 気に入った物はよく食べるし 酒も飲む。 出汁割もそうだし この間は生ホッピーを ぐびぐひ飲んでたし。 今もそう。

ともだちにシェアしよう!