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鳩時計㉘

「父さん。彼を紹介する前に話しておきたい事が あります。沢木。資料を。」 沢木さんはすくっと立ち上がり 何やら資料を全員へ配り始めた。 え。 何だろう。 恋人です。だから結婚しないって 言うだけじゃなかったのかな・・。 俺の店に来た女性が資料を見て 「な・・なんですかこれは!」と大声を上げる。 伊織さんはビールをグイッと飲み干し 肩を竦めた。 「洲崎グループの不動産部署が進めている 都市開発計画だが 不正な金の流れがあり その資料全て 然るべき機関へ提出しておいた。 今 皆さんにお渡ししたのはその一部。 これで嘘ではない事がお分かりだろう。 ああ。その開発事業へ参入する企業や 関連団体も状況を重く見て 契約不履行を理由に 訴訟の準備に入っている所もあるらしい。 そうだな。沢木。」 はい。と沢木さんが頷く。 「弊社の担当が営業時代に培った人脈を利用し 集めた情報です。洲崎の社員とも繋がりがあり その経路でリークもありましてね。 いけませんなあ。社員は宝ですよ。 ブラックな体制に不満を持つ社員も 多いようですねぇ。色々と情報を頂きました。 ああ。その方々は近いうちに辞表を 提出されるそうです。ご心配なく。 全てうちで引き取らせて頂きます。」 え。。

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