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第15話
晴臣はだいぶ飲んで、飲んだら立たなくなるんだと言って添い寝だけしてくれないかと言ってきた。俺は腕枕をしてあげた。そして帰りがけに個人の連絡先を交換した。ほんとはNGなのだけど俺はどうやら晴臣に恋してしまったらしい。胸がキュンキュンと苦しくなる。
次の日に遥香ちゃんからLINEが来ていることに気が付いた。今度、美術館でも行かないか。とメッセージがある。俺は好きな人がいるってメッセージを返した。だからデートは出来ないことも。遥香ちゃんは付き合ってないんだったら私にも可能性があると思っていいんだね。と言うがそれはないと思った。俺は男同士の恋愛に夢中になってしまった。晴臣以外は考えられない。
1か月後、例の暴力団のチンピラたちが事故で病院に緊急搬送されたことを知った。近所のおじさんの話では雪道を車で酔っ払い運転して倉庫に突っ込んだんだという。チンピラたちはこの辺りで有名だ。なんでも詳しく訊くと1人が死亡して2人が意識不明だそうだ。俺はデリヘルを辞めた。神はいるんだと思った。
桜の花が散る頃、指定しておいた美術館に行くと晴臣が嬉しそうに俺の肩を抱いた。
「お前さあ、人前で恥ずかしくないわけ?」
「あ、野風が嫌ならベタベタしないよ」
俺は晴臣の頭をぐしゃぐしゃとした。可愛い奴だ。
「いいよ、その代わり、お昼奢れよな」
俺たちは周囲の人の視線を浴びながら歩いた。
終わり
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