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第2話 ときめきとは
放課後、部活の時間。
俺にとって、ここ最近一番憂鬱な時間。
嫌でも榛と顔を合わせなければいけない、最大の試練の時。
「榛ー!ナイッシュー!」
「あざーっす!」
小学生の時からずっとバスケをしていた榛は、1年の中でも技術は頭一つ分飛び抜けていて、引退を間近に控えた3年生の期待を背負っていた。
トゥンク・・・
榛の活躍を見ていると、胸が苦しい。
幼い頃の榛が思い浮かぶたび、目の前の榛の成長が俺を混乱させているからに違いない。
「樫村さんっ!」
(・・・え?)
ドゴッ
後頭部に重い衝撃が走る。
「だいじょぶですか!?」
「あき、無事か!?」
いっっってぇ・・・チームメイトの心配そうな声が聞こえるが、鈍い痛みが頭を揺らして声が出ない。
「ごめん、あき、大丈夫っ?」
榛が慌てて駆け寄ってくる。頭を抱えて蹲る俺を不安げな顔で覗き込みながら、俺の手を包むように大きな手を重ねられて・・・
トゥンク・・・
なんなんだ、このトゥンクは。これの度に胸が苦しくてなんて言っていいかわからない感情になる。
「榛、今はもう、あきじゃない。樫村先輩って呼ばなきゃだろ?」
「っすいません、樫村先輩、俺のノーコンで当てちゃってほんとすいませんでした!」
「いや、俺がぼーっとしてたのが悪い。謝んな」
なんで榛が謝るんだよ。俺が注意力散漫だったからなのに。
「樫村、ちょっと抜けて休んでろ」
「すいません」
キャプテンにそう言われ、マネージャーが持ってきてくれた冷却パックを受け取り体育館の隅に座った。
プレー中に時々、俺の方を気にする榛の視線を感じる・・・
俺の事なんか気にしなくていいのに。
ちらっと榛を盗み見た一瞬、バチッと目と目が合う。
トゥンク・・・
・・・なんだよ、マジで、このトゥンクは!も~~~!
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