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第14話 個室レッスン 3
「ほら早く」
榛に眼を開けたままキス命令を下された俺は、ものすごい羞恥心と闘っていた。
目を合わせたらダメだ!少し目を逸らせておけばなんとか・・・
俺はなんとか目を瞑らないように、下向き加減で榛の唇に近付く。
ちゅ
一瞬だけど唇と唇が触れあう。
・・・よしっ!クリアだろ!
「・・・あき、えっろ」
「はあ?やめろよ!そーゆーの。おまえがやらせたんだろ!」
「じゃ、次は目合わせたまんまね」
「・・・ウソだろ?」
「嘘だったらよかったのにね」
ニコッと榛が笑う。
はあ~~~~~・・・
「やればいいんだろ、やれば!」
榛と目を合わせる。
う、これだけでも顔から火が出そうだ。
目を合わせたままゆっくり近付いて、さっきより唇が長く触れあう。
・・・近くで見ると、こいつほんとカッコよくなったよな・・・昔はあんな、女の子みたいな顔してたのに。
そのまま目を逸らさずに唇を離した。
「やったぞ。これで満足かよ」
「・・・」
急に黙り込む榛。
「なんだよ、まだなんか・・・」
黙り込んだ榛の顔を睨むようにして見ると・・・
「・・・え、榛、おまえ顔まっか・・・」
「・・・っ」
榛が急に立ち上がって俺を押しのけ、逃げるようにトイレを出ていく。
「あきー?行っちゃったか?」
奥の個室から松田の呼びかけが聞こえたが、俺は返事をせずに足音を立てないように廊下へ出た。
ほっ
とりあえず今日も拷問の時間は無事終わったな・・・
・・・榛なんであんな顔してたんだ?
俺は初めて見る榛の顔が気になりつつも、個室から開放された清々しさでいっぱいだった。
この日を境に、俺に対する榛の態度が変わり始める事になる。
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