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第13話 個室レッスン 2
キーンコーンカーンコーン・・・
あ、チャイム!
榛に男子トイレの個室に連れ込まれた俺に、救いの手が!
「榛、ほら休み時間終わったぞ!授業始まるから!」
鍵を開けようとする俺の手を榛が掴む。
「さぼっちゃいましょっか、センパイ」
「はあ?何言ってんだよ!はーなーせ!」
「嫌です」
榛の手を外そうとするが、ビクともしない。
くっそ馬鹿力~!
パタパタパタパタ
「しー。誰か来た」
俺の口を手で塞ぎ、榛が言う。
誰だよ!こんな授業始まってから来るやつは!
足音は俺たちの入っている個室のひとつ飛ばした横の個室に入ったところで止まった。
「あ、もしもし、ごめんごめん。かおりと話したかったからさ、授業サボってトイレにこもっちゃった。体調大丈夫?」
・・・この声は!部活もクラスも一緒な松田じゃねーか!よりによってなんであいつが来るんだよ!
「松田さんみたいだね。授業サボって休んだ彼女と電話か~、ラブラブじゃん」
「んなことどーでもいんだよ、さっさと出るぞ!」
「フーッ」
「ぎゃ!」
やべぇ!
榛が耳に息を吹きかけてきて、不覚にも大きな声が出てしまった。
「・・・あき?おまえもサボり?」
なんであの一言で俺だってバレるんだよ・・・
「あー、うん。なんか腹の調子が悪くて・・・」
「ヘンなモン食ったんだろ、どーせ。あ、俺がサボってんの内緒にしとけよ。・・・あ、かおり、ごめんごめん、友達が下痢で・・・」
食ってねーよ!あー、もう・・・
「あきだってバレちゃったね。俺も一緒にいるってわかったら、大変なことになっちゃうんじゃない?」
「しー!静かにしろ!」
慌てて榛の口を塞ぐ。
「う!」
榛の口を塞いだ手のひらを舐められて、怯んだ俺の手首を掴んで榛が便座に座る。
「静かにして欲しいんだったら、さっき言ったように俺の上に座って?」
ううう。・・・従うしかないか。
榛の肩に手を置いてバランスが崩れないように太腿の上に正面から跨る。
「わっ!」
榛が少し腰を浮かせて、俺の体が落ちそうになる。とっさに榛の首に手を回してバランスを保った。
「あき、大胆だねー。自分から抱きついてくるなんて」
「違う!落ちそうになったから、しがみついただけ!」
・・・にしても、これ、顔も近いし榛にのっかってるし、こんなん誰かに見られたら高校生活終わりだな。
「あき。ね、あきからキスして」
「なっ、するわけねえだろ!」
「してくんないと、あきに襲われてるって、松田さんに言っちゃおっかな?」
俺の腰をがっちりホールドして、榛がニコっと笑う。
くっそ~!この悪魔め~!
目を閉じてゆっくり榛の唇に近付く。
うう、ダメだ。恥ずかしすぎる。
「あき、かわいい」
唇が重なりそうなところで、榛の一言に目を開ける。
・・・こいつ、ずっと目開けて・・・?
「おまえも目閉じろよ!見てんな!」
「かわいいあきもいいんだけど、その顔じゃないんだよな、俺が見たいのは」
「おい、無視すんな!」
なんで俺の顔見てんだよ・・・ほんとこいつオカシイわ。
「あき、目開けたままキスしてよ。閉じたら、即大声出ちゃうかもな、俺」
嘘だろ・・・ほんとに拷問だよ・・・
松田の電話も、榛とのこの時間もまだ終わりそうにない・・・
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