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第16話 文化祭の災難 1

夏の間ずっと榛に避け続けられて、季節は秋になっていた。 秋のイベントと言えば文化祭。パリピなやつらは浮き足立っているが、平凡一直線の俺にとっては、一日中焼きそばを焼いているただの日だ。 「じゃあ、明日は例年通り、バスケ部は焼きそば売るからな~。頑張って部費の足しにしよーぜ!」 キャプテンが張り切っている・・・。どーせその金、遊ぶ金になるんじゃん。 早く3年引退しろよ。 文化祭当日 朝からテントにバーベキュー用の鉄板やらを用意して食材を切る。 そして、なんで榛とふたりだよ!気まずいだろ! 「榛、クラスの手伝いしなくていいのか?」 「ウチ、出し物、展示なんで」 「そ、そーなんだ。俺のクラスはメイド喫茶だから、男子あんまいらなくてさ・・・」 「・・・・・・」 ものっすごい気まずい・・・! 早くみんな来いよ~! 「いや~、売れたな。さすが樫村!おまえのヘラさばき、見事だったぞ!」 「・・・アリガトウゴザイマス」 ほとんど俺に押し付けて、みんな遊びまくってたじゃねーか!・・・まあ一緒に回るヤツもいないしいいけど。 「この後、ビッグイベントが控えてっからな。高杉、がんばれよ!」 文化祭の目玉と言えば、そう、ミスターミスを決める投票の結果発表。 榛、性格は歪んでるけど、イケメンだもんな。3年女子と付き合っちゃうくらいだし。 ま、俺には関係ない。 全校生徒が体育館に集まり、まず今年のミスが発表される。 3年の清楚系の女子がミスか・・・。知らない人だけど。 「続いてミスターの発表です。ミスターは・・・」 「1ーA 高杉 榛くん」 キャー!と女子からの黄色い声援が飛び、榛がステージに上がる。 おいおい、おまえら騙されてんぞ、あの甘いマスクの下は歪んだ性癖の変態だぞ。 「高杉くん、一言お願いします」 「あー、ありがとうございます。あの、ちょっといっすかね?」 「どーぞ」 司会の2年からマイクを借りる榛。 「俺、この場で好きな人に言いたいことがあって」 キャー!とまた歓声が上がる。 こんな中で告白か?狂ったヤツはやる事が違うな。相当自信あんだろうな。 俺が避けられてたのって、好きな人ができたからおもちゃがいらなくなった、って事だったんだな。 「好きです。ずっとあなたの事ばっか考えてました」 キャー! おいおいおい、この中でひとりだぞ、選ばれるのは。みんなして期待してどーする。 「樫村 あきさん」 シーン。 ほらな、言わんこっちゃない。 誰だよ、樫村って。 「え・・・俺・・・?」 会場全体が俺に注目している。 え、何が起こった?

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