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第45話 好きになったら 1

榛と一緒に眠って、寝苦しくて夜中に目を覚ますと、ふたりの頬がくっつきそうなほど顔が近くにあってドキドキしてしまう。 抱き枕と勘違いしてるんじゃないかと思うくらい、俺の体に腕と足を絡ませてスヤスヤ気持ちよさそうに寝てやがる・・・。 くっそ、俺は苦しいのに・・・ 巻き付いている腕と足を退かして、榛に背を向けた。 ・・・けど、またすぐに榛に捕まって、結局寝苦しいままだった。 まあ、俺が甘えろって言ったんだからしょうがねーか・・・。 榛の心臓の音が背中に響いてきて、さらに寝苦しくなった。 朝目覚めると、榛の寝顔が間近にあった。 閉じられた瞼から伸びた長い睫毛が妙に色っぽくて、なんだかイケナイ気持ちになってしまいそうになる。 榛、ほんと綺麗な顔してんだな。無防備な寝顔が・・・なんか可愛い。 「榛、俺も・・・・・・好き」 思わず口から出てしまった言葉に、めちゃくちゃ恥ずかしくなる。 榛が寝ててよかった。こんな恥ずかしい事、面と向かって言うことなんかできな・・・ 「ほんとに?」 え!? 目をパチッと開けて榛が俺をじっと見る。 「は・・・る、起きて・・・?」 「あきの視線が熱烈すぎて、目開けれなかった。で、ほんとに俺の事、好き?」 「え!?」 聞かれてた、よな。 もう、ごまかせないよな・・・。 「・・・うん。榛が、好きだ」 「・・・・・・そっか。・・・好きになっちゃったんだ・・・」 榛はそう言って、表情を曇らせながら黙り込んだ。 なんだよ・・・。好きになってって言ったのは榛じゃん。なのになんでそんな顔すんだよ。 「なんで、なんにも言わねーの・・・?」 俺が聞いても、榛は何も答えてくれない。 意味、わかんねぇ。 「あき・・・」 しばらく沈黙していた榛が唇を重ねてくる。 唇をなぞるように、触れるだけのキスを何度も落とされて、俺はそれだけじゃ足りなくなる。 自分から唇を開いて、少しだけ舌を出して榛を求めた。 「あき、マジで男、好きなの?」 俺の舌を避ける様に榛の唇が離れる。 「そうだと思う。・・・イヤ、きっとそうなんだ。でも、男だから榛を好きになったんじゃ・・・」 「気持ち悪い」 ・・・え・・・? 榛、今なんて・・・? 「俺が本気で、あきを好きだと思ってたんだ?」 榛は、あの歪んだ笑顔で俺を見下ろす。 「榛・・・?」 「俺が、あきの事なんか本気で好きになるわけないじゃん。ホモじゃないんだからさ。からかってるだけだって普通わかんだろ?何真に受けちゃってんの?」 俺は、状況が飲み込めなくて、ベッドに寝転んだまま動けなくて、覆い被さる榛の歪んだ笑顔をただ呆然と見ている事しかできない。 「ああ、でも、せっかくだし最後にもう一回気持ちよくしてやるよ」 その後、俺は榛にどう抱かれたのかもわからないくらいぐちゃぐちゃになっていて、気付いたらどっちのものかも分からないくらい混ざり合った精液で体はベタベタになっていて・・・ 抱かれている間、今にも泣きそうな顔をしていた榛から目が離せなかった。泣きそうなくらい嫌なら、もう俺なんか抱かなきゃいいのに、そう思っていた。 榛がいなくなって、ひとりになったベッドの上で何が何だかわからなくて、冷静になろうとすればするほど頭が混乱してくる。 なんで? 榛の事、好きになっちゃいけなかった? 好きになってって言ったのは、あいつの方だろ・・・? 『気持ち悪い』 ・・・そう、だよな。 榛は元々、女とセックスしてたんだ。俺とは違う。 やっぱり、復讐・・・だったって事か。男なんか本気で好きになるわけないよな。ゲイの俺をからかってただけ。 ショック・・・?悲しい・・・?苦しい・・・? どれも当てはまらない。 『気持ち悪い』 俺は、その言葉がなんだか心に引っかかっていた。

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