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第46話 好きになったら 2

翌日 ケツも痛いわアソコも痛いわ体中どこもかしこも痛い俺は、39度近い発熱で部活を休んだ。 朝行ってないけど、あいつ寝坊しなかったかな・・・とか一瞬考えて、すぐに榛の事を考えるのを放棄した。 昼過ぎになってスマホを見ると、榛からの連絡は無くて、松田に『熱あるから練習休む』と送ったメッセージに『了解』と返信があっただけだった。 ピンポーン もう一度寝ようと思った矢先、インターホンが鳴って、俺は慌ててベッドから起き上がる。 もしかして、榛・・・? 体が痛いのも忘れ、足早に玄関へ向かう。 ガチャ 「よお、元気そうじゃん」 勢いよくドアを開けると、そこにいたのはジャージ姿の松田だった。 「なんだよ、おまえか・・・」 「なんだよ、ってなんだよ。せっかくお見舞いに来てやったのに」 榛じゃないとわかって、また急に体が怠くなってくる。 「あれ?やっぱり元気じゃねーな」 「当たり前だろ。熱あんだよ。元気なわけねーだろ」 松田と一緒にリビングのソファに並んで座る。 「ハイ。差し入れ」 ソファに寄りかかった俺の腹の上に、スポーツドリンクとゼリーが入った袋が置かれる。 「さんきゅー・・・」 「礼なら高杉に言えよ。それ、高杉からだし」 え?榛が? 「あき熱で休みだっつったら、自分は行けないからそれ届けてくれって」 「・・・そーなんだ」 「高杉、いいやつじゃん。たまに怖い時あるけど。お前愛されてんじゃん」 松田・・・俺、愛されてなんかねーよ。『気持ち悪い』って言われたし。そもそも、榛は俺の事なんか好きじゃなかったんだよ。 ・・・言えないけど。 「なあ、松田はさ、彼女の事好き?」 「はあ?なんだその質問。好きだから付き合ってんだろ」 ですよね。 「お前だって高杉の事好きだから付き合ってんだろ?あんな大勢の前で告白なんかされちゃってさ。男どうしなのに全校生徒公認のカップルじゃん」 そうでした・・・。今思い出しても恐ろしい・・・じゃなくてめちゃくちゃ恥ずかしい。 「俺は、好きになったんだけどな」 榛は・・・違うんだよ。 「高杉だってお前の事相当好きじゃん。冗談であんな告白できねーだろ」 それは、俺を困らせるために・・・ 「それにさー。あきにちょっかいかける度に、すげー顔して睨んでくるんだぜ、あのイケメン。すーげぇ嫉妬深いよ、こえーわ」 「嫉妬・・・?」 「なに?本人気付いてねーの?みんな知ってるけど」 榛が、嫉妬?俺のこと、好きじゃないくせに? 「あ、やべ。それ渡したらソッコー帰ってくれって、高杉に言われてたんだった。心配しなくても、誰もあきなんか狙ってねえっつーのにな。じゃ、お大事にな。念の為、明日も休んで寝てろよ」 そう言って松田は帰って行った。 なんで?榛、俺の事なんか心配しなくてもいいのに。 袋からスポーツドリンクを取り出してひとくち飲む。 ・・・ん? よく見ると、ペットボトルのラベルに油性ペンでなんか書いてある。 『酷くしてごめん』 なに・・・コレ・・・。 あいつ、何考えてんの?ますます意味がわからない。 ガチャ バタンッ 玄関のドアの音がして、誰かが入ってくる気配がする。なんだよ松田、まだ何か用あんのか? 「松田?忘れ物?」 しんどくて体をソファに預けたまま、振り返らずに声をかける。 「あき」 「・・・」 声で、わかる。榛だ。 呼吸がうまくできなくなって、心拍数が上がってくる。きっと熱のせいだ。 「榛・・・なに?あ、差し入れありがとな」 「なんで松田さん、家に入れるの?」 「は?・・・・・・ぐえっ!」 ソファの後ろから榛の腕がぎゅうっと首に巻きついてくる。 「は・・・は、る、・・・くるしっ」 苦しくて榛の腕をぺしぺし叩いて、ギブ、と訴えると、締めつけが少し緩くなる。 「俺が最後って言ったから、もう別の男誘ってんの?」 「・・・は!?」 なんでそうなるんだよ! 「だったら最後にしない。他のヤツにどうこうされるくらいなら、俺があきを虐め続ける」 「・・・は?え、と・・・でも榛、俺が気持ち悪いんじゃ・・・・・・ふぁっ!あ・・・」 突然うなじに、濡れた柔らかい感触が這って、榛に舐められているとわかった。 「あ、やめ・・・」 ぞくぞくっと背中に快感が走って、体が震える。きっと・・・熱のせい。 「あき、気持ち悪い?」 耳朶を甘噛みしながら榛が囁くように聞いてくる。

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