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第1話

いつもの時間に同じ奴と同じ道のりを歩く。 淡いピンク色の並木道を横目に歩いていると、ふと違和感を感じた。こんな景色を目にすれば隣から今日も桜が綺麗だとか呑気な間延びした声が聞こえるはずだが、何故かこいつはこの日に限って静かだった。 俺が返事を返そうが返すまいが構う事なく話し続けてるこいつがこんなに静かなのは珍しい。もしかして体の具合が……悪そうでもないし、何か心配事でもあるのだろうか? なんて色々勘ぐりながら何度か視線を向ければ、そいつの足が突然止まった。 「おい愛次郎どうし……」 「ねぇ礼ちゃん。タクちゃんの事さぁ、どう思う〜?」 「は?」 軽く振り返り聞けばこの質問。 ……ったくいきなり何を言い出すのかと思えば……。 何故今その質問をしようと思ったのか読み取ろうとするが、可愛さを狙っているのか首を傾げて強請る様な視線を向けてくるだけでそれ以上は何も言わない。 結局、意図が分からない俺は態と盛大なため息を吐いて見せ、無視して再び足を前に向けようとした。 「ったく何だそれ。んな事より早く匠んとこ……」 「えぇ?礼ちゃん待ってよぉ!ねぇどう思うの〜?大事な事なんだけどぉ。」 気になる事があればこれ、こいつの悪い癖。 強く引かれた右腕には、しっかりとこいつの両腕が絡まっていて。振りほどこうと力を入れても一向に離す気配がなく、俺の顔をガン見したまま動こうとしない。 「おい愛次郎、いい加減にしろ。匠が心配すんだろうが」 「タクちゃんに心配かけるのは礼ちゃんが答えないせいでしょ〜?ねぇ、どう思っ……」 「匠はお前より大切な幼馴染みだ」 率直に言わなくてもこいつなら分かるはず。 真っ直ぐ目を見て答えてやると「ふぅん?」と興味なさげな返事をして腕を解いたかと思えば小さく跳ねて俺の前に立つ。見上げてくるその顔には、いつもの無邪気なものではなく目を細め何かを含んだ嫌味ったらしい笑顔が貼り付いていた。 その顔が妙に腹立たしく、胸が騒つき居心地が悪い。 すると何を思ったのか人差し指で俺の心臓を指し、言葉を紡ぐ。 「ね〜ぇ礼ちゃん、俺ねぇ……タクちゃんが好きなんだぁ」 「?! 愛次郎お前っ……!!」 その聞こえてきた言葉に胸が騒ついた理由を理解したと同時に匠への気持ちが溢れ、気が付けば胸ぐらを掴みこいつを怒鳴りつけていた。 「なぁに? だって俺タクちゃんが大好きなんだもん〜、仕方ないでしょ〜?」 掴んだ俺の手を解こうとはせず、その手に両手を添え、このふざけた口調とは真逆の顔で言ってのけた。

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