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第1話【義賊との出会い 零】

 その日は雪が降っていたのを、ステラは憶えていた。それはこの国の気候を考えると、酷く普遍的なことだ。  スノースと呼ばれるこの国は、雪が融けることはない。雪が降るのは何も特別なことではないし、珍しいことでもなかった。  だからその日が『雪だった』と印象づいているのは、稀なこと。当たり前を特別だと感じる、奇跡みたいな思い出。  降り込める雪を豪奢な馬車の上から眺め、自身を見上げて笑みを零す国民に向かって、手を振る。  吹きすさぶ冷たい風を頬に感じながら、ステラは無表情のままひたすらに手を振り続けた。  始まったばかりの幽閉生活を嘆き、知ってしまった残酷な未来に想いを馳せながら……ただ、ひたすらに。  ――そしてその日の小さな出会いが、限りなく終わりに近い始まりを連れてくると……ステラは知らなかった。

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