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第2話

「このナイトを早めにどうにかするべきでしたね」  アルフレッドが動かしていた黒のナイトを恨みがましく見つめる。これさえ邪魔をしなければシェリダンはまだ動くことが可能であったが、それもアルフレッドの策の内なのだから仕方がない。  シェリダンが遊びという遊びを知らなかったためにアルフレッドが昔兄と遊んだチェスを教えて、今まで幾度か対戦をしたのだがどうにもシェリダンは負けず嫌いだ。その上頭の回転は流石に若くして元宰相補佐官であったためにすこぶる早い。アルフレッドが気を抜いているとあっという間にキングを倒されてしまいそうだ。だがシェリダンには甘いアルフレッドも遊びは本気でやらなければ楽しくないという持論を持っているので、わざとシェリダンに負けてやることはない。なのでシェリダンは今まで一度としてアルフレッドに勝利したことがなかった。ムゥッと盤を見つめながらあれこれ駒の動きを再現して考えているシェリダンは大変可愛らしいが、彼は一つ大切なことを忘れている。 「さて、俺が勝ったわけだが。シェリダンにはどんなお願いをきいてもらおうか?」  その言葉にシェリダンの肩がビクンと跳ねた。どうやら思い出してくれたらしい。  いつもは普通に対戦をして終わるのだが、今回は一つの賭けをしていた。曰く〝負けたら何でも一つ言うことをきく〟というありがちなものである。  その約束が功を奏したのか、シェリダンの頭は今まで以上に冴えわたり、アルフレッドも危険を感じるほどであったが、負けは負けだ。 「……そういうお約束でしたから、お聞きいたします」  正直アルフレッドがどんなことを言ってくるかわからないシェリダンは内心ビクビクしていたが、王妃という肩書を持っていても男だ。男に二言はない。

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