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第1話

 地面に這いつくばっているでかい図体を蹴り上げれば周りからは悲鳴が起きる。  ひぃ、だなんて男の癖になよなよしい。中にはキャ、だとか言ってる奴もいるのだからここは少し異常だ。  まあ、売られた喧嘩はその場で高額買取できたので気分上々、満足して屋上に向かう。 「相変わらず容赦ないねぇー」  隣でヘラヘラと笑っているのは幼馴染で悪友でもある桐だ。ちらりと睨めば、おー怖、と思ってもないだろう言葉が投げかけられる。  お前は相変わらず脳天気なやつだよな。 「そーいやぁさぁ」  飴を俺にも渡してきながら急に口を開いた。何かと視線を向ければ楽しげに目を細める。 「今日、Sクラスに転入生が来たらしいよぉ」 「転入生?」  珍しいな、と口には出さず顔をしかめれば、それだけで伝わったのか、だよねぇ、と返事が来た。屋上についてすぐ、どこから出したのか双眼鏡を構えて辺りを見渡す桐。 「たしかそろそろ案内がー......お、はっけーん」  桐の見ている方向をじ、っと見てみると、確かになにか人のような影が見える。 「どんな奴だ?」 「んー、見てみなよ」  説明しづらいと思ったのか、双眼鏡を俺に手渡して場所を譲られた。遠慮なくそのレンズを覗いて影が見えたところを見てみると、人が2人。1人は俺も見た事ある、1年Sクラスの担任だ。 「すげー可愛くね?」  桐の言うことに反応も出来ず、その転入生をただじっと見つめる。金に近い茶髪はふわふわしていて、ニコニコ笑っているその顔は今まで見てきたどんなやつの顔よりも毒気がなくて純粋で。ちらりと見えた青い目には引き込まれそうな力があった。 「フジ?」  おーいってば、とか声掛けてくる桐のことも忘れ、無意識に呟いた。 「アイツ、絶対手に入れる」

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