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いいよ

「お前、俺のこと好きなんだろ」 「は?」 「こないだの手紙のやつだろ。セーラー服着てた。男の娘ってやつなのか? はやりの」 「え。確かに俺だけど、それはちが、」  否定の言葉を吐く前に、唇を塞がれていた。  お互いに目を開けたまま、近すぎて見えない健吾さんの目をじっと見る。笑っているような色だと思った。からかわれているのかなんなのか、取り敢えず彼が俺のことを本気で好きとかそういうのはあり得ないってことだけは判る。  判るんだけど……。  ぽかんとしてたもんだから、すぐに舌が中に入ってきて、一本一本の歯の根本を確かめるみたいに探られて、それからちろちろと上顎をさすられる。濃いキスどころか軽いキスも未経験の俺はひとたまりもなかった。 「っぁ……ふあ……っ」  弄られ続けて腰が抜けて、そのまま床に押し倒される。  好きなんだろって、なにを根拠に……。  あ、あれか? 俺が名前も知ってて、泣きながら抱きついてとかそんな状況だからか?  でもそんなんで男抱こうだなんて、普通思うか? 確かに告白っぽいシチュで罰ゲームしたし、それで怒られても仕方ないって思うけど、でもこれはやりすぎだろ。  それとも、まさかだけど、この人、ホモ? まさか。  口が解放されたと思ったら、いつの間にかトランクス下げられてて中から俺のムスコさんがこんにちはしてた。  ふっと笑み零れた息が先っぽにかかって、そんなささやかな刺激でそこはぴくんと動いた。  うえ、勃ってるとかっ。  恥ずかしくて両手で顔を隠そうとした瞬間に、腕を拘束される。これもいつの間にか解かれていた腰紐でぐるぐると両手首を巻かれて、これじゃ完全にレイプだ。 「キスだけで勃ってるうえに縛られて涎垂らすなんて、そんなに期待してた?」  淡々とした喋り方なのに、愉悦が含まれているのが判る。言われた通り、鈴口からは透明のものが溢れていて、それを見つめられているのを視認したらまた更に溢れてしまった。 「嘘、だ……だって俺、好きな女の子いるし、ホモじゃねえし」 「ふうん、俺もホモじゃないけど、大丈夫、ちゃんと抱ける」  大丈夫とかちゃんととか、全然嬉しい内容じゃないんですけど。多分初めてのキスが気持ち好すぎて興奮してるだけであってけして男に抱かれたいとか抱かれてもいいとかそんなんじゃなくてですね。  あわあわと、思いは言葉にならずに脳内だけを通り過ぎていく。そうこうしている内に健吾さんが自分のTシャツを脱いで、均整のとれた上半身に見惚れていると、近くのカラーボックスから取り出したボトルの中身を手のひらに出しているのが目に入る。  片足を持ち上げられて肩に担がれて、トランクスから抜かれた足の付け根が丸見えで。 「や、やだ……み、見ないで」  焼けるように顔が熱くて、縛られたまま必死でそこを隠そうと腕を伸ばす。その間に健吾さんの手が竿を握り、上下に擦られてくちゅくちゅといういやらしい音と共に急激な快楽が俺の脊髄を走り抜けた。 「んんっ……やぁっ」  時折鈴口に指を押し込むようにされながら、強弱を付けてかかれる。  人の手でされるだけでこんなにも気持ちいいなんて知らなかった。  呆気なく絶頂が訪れて、自分で自分の腹を汚していく。知らない間に浴衣は全開にされていて、肌着まで莉央のものであることを思い出して、安堵した。  綿だから水洗いできるけど、自分の精液がかかっていたらと思うと後ろめたい。このまま汚さないようにしねえと……。  縛られている上に絶頂の余韻でぐったりしている俺の竿から手が離れて、そのまま袋から下へと下りていく。蟻の門渡りを辿られて、また中心が芯を持ち始める。  何をしようとしているかに思い至る前に、ぐいと指先を捻じ込まれていた。 「あ、いや、それはっ」  ほんの少しだけなんだろうけど、異物感が凄い。ぬるぬると抽挿される指は俺の拒絶なんて何処吹く風で、ずっと続けられてのたうっている間にだんだんと変な気分になってくる。  屈み込んできた健吾さんが、また唇を塞ぐ。今度は最初から上顎を攻められて、意識が蕩けていく。  もう片方の手が、また竿をしごく。粘性のある淫らな音に耳から体内を犯されて、入れられている指が中を広げていっても、キスが、これは気持ちいいことなんだよって体に言い聞かせているようで、もう拒否できない。  なにより、今ここでやめられたら耐えられないような気がして、もう俺は抵抗する気持ちが萎えきっていた。  お互いに、好きとかそんなんじゃなくて。ホモとかでもない。それなのに、体はちゃんと反応するなんて、男ってどうしようもねえな。  もしもこれが、ナンパしてきた二人だったら。それだったらないんじゃねえかなって思う。だけど試してないから判んなくて、でももしもあいつらにされてもこんな風にとろとろになっちゃうなら、俺の方こそホモの素質あるんじぇねえのって疑うレベルだ。  ずっとキスだけは続けられたまま、いつの間にか竿が自由になっていた。もう少しっていう快楽を与えられたまま放置されたそこは天を向いたままで、今度は散々中から広げられた穴から指が抜けていく。  もしかして、いよいよなのか? びくんと体が強ばったのが伝わったのか、健吾さんが少し顔を上げる。焦点の合う位置で俺の顔を覗き込む瞳には、情欲の炎が揺らめいている。  少なくとも今、俺の体は欲しがられているんだ――そう認識したら、なぜだか口元が綻んでいた。 「初めてのキスも、初めてのえっちも男相手だなんてサイテーだけど……」  腹筋で少しだけ上半身を浮かせて、不自由な体のまま、触れるだけのキスをした。 「いいよ。健吾さんに、俺の初めて、全部あげる」

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