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お仕置きだから
へにゃへにゃの体を抱き込むように片腕で支えたまま、リモコンで施錠して今度は玄関の鍵を開けている。絶え間なく続いている振動音ももう馴染みすぎてBGMと化していて、中に入るなりスラックスを開いて自分から脱いだ。
この部屋で何も履くな。最初に言い含められた通りに体は動く。先走りで湿ったボクサーパンツが恥ずかしい。洗面所に置いてある籠に引っかけて、二人で一緒に手を洗う。
「もうちょっと我慢してろよ」
耳元で優しく囁くのは嬉しいけど、興奮してまた溢れ出したものが、覆いをなくして腿に垂れるのが切ない。
いつもの場所から取り出したものを持って、ベッドに一緒に腰掛ける。膝の間で抱かれているのにまた興奮して、後ろに当たる彼のものが硬くなっているのに気付いたらもうダメだった。
「っあ」
もうちょっとだったのに。折角の我慢を帳消しにする勢いで、とぷとぷと先端から白濁が零れていく。とっさに伸ばした手のひらに受け止めたものの、背後を振り返って顔を見るのが怖い。
解放の余韻じゃなくて恐怖でカタカタと震えがくる。でも一旦萎えてしまったというのに、体内に入った物が与えてくる刺激に反応して、またそこは芯を持ち始める。
いいつけを守れなかった。どうされるのかよりも、今顔も見れない健吾さんが呆れてもう帰れって言わないかってことの方が心配で、震えが止まらない。
「け、健吾さ……ごめんなさい。ごめんなさいっ」
顎も震えて、うまく喋れない。だけど腰の後ろにあるものが萎えていないから、それをよすがにして謝り続けると、立つように促された。
「風呂行くぞ」
かくして、自分の両手に欲望の残滓を溜めたまま移動する羽目になったんだった。
バスチェアに腰を下ろした俺の上からぬるま湯が注がれて、手のひらの残滓や腿のぬめりを洗う。
入る前にシャツも脱がされていたけど健吾さんはそのままで、シャワーを止めて出ていくから、脱いでくるのかと思って静かに待っていた。
浴室だから、車よりも音が反響して大きく聞こえる。直接的な刺激に加えて更に脳をかき混ぜられている気分だ。股間がまた滴を零していて切なくなる。
そのまま全身洗うのかと思っていたら、裸になって戻ってきた健吾さんは俺の背後に回って膝を突いた。長い腕に囲われてどきどきする。けれど、その手にある新しい器具に戸惑ってしまう。
ぐっと竿を握られて、鈴口が開く。表皮より色の濃いピンクを見せつけられて、他に誰も見ていないのに顔に血が集まる。
前に装着されたものと、形は似ている。用途も同じなんだろうけど、前のより長いし、若干太いように見える。
鈴口に押し当てられて、また震えが蘇った。
「や……やだよ、健吾さん。無理ぃ……っ」
「お仕置きだから、黙ってろ」
予めゼリーは付けてあったみたいで、先走りで濡れているから余計にすんなりと飲み込まれていく。だけどそれは客観的な見た目だけの話で、実際は狭い管の抵抗を力で捻じ伏せて強引に差し込まれているにすぎない。
無理矢理に開かれて、痛いよりも苦しい。
「ゃぁああっ」
その腕をそれぞれの手で握りしめて、テレビで見た出産シーンみたいに足を開いて泣きながら喚いた。抜けるときの刺激が性感になるのは経験済みだけど、こんなに奥まで入れられたらただ痛いだけだ。
と、唐突に、健吾さんの持っている部分から、床にぽたぽたと金色の液体が零れた。つんと鼻を突くアンモニア臭で、これは尿だと知れる。膀胱まで達しているってことなんだろう。
「いやっ、やだ、健吾さん」
「あーあ、おもらししちゃったな」
判っていてわざとやったんだろう。くすくすと耳の後ろで笑う声。自分では止めようもなくて後から後から零れては排水口に流れていくそれを見ながら、ひっきりなしに涙が溢れてきた。
「こっから出るもん、全種類出したな。恥ずかしい奴」
うっ、うっと嗚咽する俺を無視して、先っぽを下に向けて振って出し切りながら、言葉で苛む。
器具を少し引いて調節してからリングで固定されて、これでまた出せなくなった。約束ごとのように必ず堰止められて、許可が出るまではイっちゃダメなんだ。解ってたから頑張って我慢したのに、それでもお仕置きするなんて酷い……。
シャワーで綺麗にされる床を恨めしく眺める。まだ後ろに入ったままのものが動き続けていて、中心は萎えることもない。体と心が離れているのが変な感じで、それなのに手を引かれて部屋に戻って膝の間に座らされたらどきどきするんだ。
何をされるのか解らなくて、でも怖い方のどきどきじゃねえのも解ってる。
傍にいられる。触ってもらえる。あんな恥ずかしいことをされて情けなくなっても、嬉しくて期待してしまう自分が不思議で。そういう方向でなら、自分が怖いっていうことになる。
テレビを点けて紙袋を開けた健吾さんは、俺の手にポテトを持たせてから自分の食事を始めた。冷めてるからまずいだろうに、黙々と咀嚼しているのが背後から伝わってくる。
本当に意地悪なだけなら、お前のせいで冷めたとか詰られると思うんだ。そりゃ元を正せば玩具を入れた健吾さんのせいではあるんだけど、自分勝手な人ってそんなの関係なく人のせいにするだろ。
でもそういうんじゃない。多分だけど、純粋にプレイとして楽しみながら俺を苛めてる。きっとそうだと感じているから、気持ちが萎えなくて、それが体にも現れてる。
もそもそと冷たいポテトを頬張りながら、背後の体温が俺の熱を下がらせてくれない。それが嬉しい自分も相当おかしいやつだなって自嘲した。
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