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第33話 23

どれくらいの時間、僕はそうしていたのだろうか。 床にペタリと座り込み、ソファーに顔を伏せてずっと泣いていた。身体中の水分が出てしまったのではないかと思うくらい泣いて、僕は大きく深呼吸をした。 痛む頭を押さえてフラフラと洗面所へ向かい、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を洗う。タオルで拭いて鏡で見た顔は、瞼が赤く腫れていて、思わずフッと笑ってしまった。 寝室に行って、祥吾さんに買ってもらったリュックを出す。そこに、ほとんど祥吾さんとお揃いで買ってもらった服を詰めていく。冬のセーターも持って行きたいと思ったけど、さすがに入らないので諦めて置いた。 荷物を詰め終わるとリビングに戻り、テーブルの前の椅子に座って、祥吾さんへの手紙を書き始めた。 一文字一文字書き進めるごとに、もう枯れたと思った涙がまた溢れてくる。手の甲で何度も拭うけど、数滴が紙の上に落ちて、紙をふやけさせてしまった。 全て書き終えると、部屋の中をゆっくりと見て回る。 約五ヶ月、ここで暮らした。祥吾さんと僕の家。とても居心地が良かった。本当に、ずっと一緒にいたかった。でもダメなんだ。僕はどうやら、人をダメにしてしまうんだって。だから、祥吾さんの為にも僕はここにいてはいけない。祥吾さんをダメにしてしまう前に、離れなければいけない。 今日を逃すと、常に祥吾さんといる僕は、家を出られない。僕の気持ちを優先してこのまま祥吾さんの傍にいて、祥吾さんが後悔する姿を見たくない。翔吾さんに嫌われたくない。 少しでも早く、祥吾さんから離れた方がいいんだ…。 「祥吾さん…黙って出て行く僕を許してね…。顔を見ると離れられなくなるから。…祥吾さん、本当にありがとう。愛してる…」 ベッドの上に畳まれた祥吾さんのシャツを抱きしめて、ポツリと呟く。僕は少し考えて、翔吾さんの匂いがするこのシャツも、そっとリュックに入れた。

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