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さらにその後のいじわる社長と愛されバンビ29

 いつもよりもハイペースで弄ばれて、挿入される頃には息も絶え絶えになっていた。  確かに、恥ずかしさを感じる暇はないのだが、別の理由で死にそうだ。  蕩けきった身体は、奥まで入り込まれて軽く揺すられただけでも強い快感を得て、万里は息を乱しのけぞった。 「は……っ、や、そこ……っんん、」 「お前ここ、好きだよな。…こうやって、強めに突くのがいいんだろ」 「違…、や、って…、あっ!あ……!」  否定するそばから、奥を抉られ、高い声が飛び出てしまう。 「……違うのか?」  ニヤニヤと覗き込まれて、視線をそらした。  いいようにされて悔しい。  でも、それでも好きだからもっと悔しい。 「っ…知ら、ない」 「んじゃ、覚えるまで教えてやろうな」 「あ、昴さ、も…だめ、って…、は、ぅ…っやぁ」 「は……、そんなに、絞るなよ」  うるさいと首を引き寄せて、意地悪なことばかり言う口を塞いでやった。  それは予想していないかったらしく、久世は微かに驚きの表情で目を瞠り、すぐに破顔する。 「流石は、バンビちゃんだな」 「な、に……っあ、待っ…、」  脚を抱え直されて、嫌な予感がして足先をバタつかせた。 「俺を煽るのが、上手になって」 「ち、が……っあ!や……っ、あぁっ!」  反撃をしたつもりが墓穴を掘っていたことに気付いたが、時すでに遅し。  やけに嬉しそうな恋人に、たっぷり貪られてしまったのであった。  嵐のような行為の後、万里はベッドに屍のようにぐったりと横たわっていた。 「しぬかとおもった……」 「大袈裟だな」  笑われて、唇を尖らせる。  本気で死ぬかと思ったのに。大人だっていうなら、少しは自制して加減しろよ。…と、つい脳内で毒づく。 「俺より年寄りのくせに、仕事で疲れたから家でくらいゆっくりしたい〜とか思うことないわけ?」 「お前も、死ぬほど疲れて帰ってきても、テーブルの上に好物が並んでたら『疲れてるから明日食べよう』とは思わないだろ?」 「…………………」  その例えはどうかと思うが、万里にとって非常にわかりやすく、納得してしまった。  万里が好物を『明日食べよう』となるほど疲れている時は、相当弱っている時だと思う。  そういう意味では、確かに、久世は怪我をした当日だって、自分で歩いて帰ってきたのだから、好物を明日にしようとは思わない…、いや本当にこの例えはどうなんだ。  隣で半身起こしてビールを飲んでいる久世をチラリと横目に見ると、腕の包帯が目についた。 「それ、痛くないの?」 「触らなければな」  何とも聞かずに即答したのは、万里が傷について何か言うことを予想していたからか、この男が聡いせいか。  有能さや有言実行なところを、もう少し別のところに発揮してほしい。主に万里の気持ちを正しく汲んだりとかそういうところに。 「あのさ」 「ん?」 「あんたの余裕なとこ、ほんとのほんとに腹立つけど、…それでいいから、怪我しないようにちゃんと気を付けて」  酷い言い草だが、久世は楽しそうに笑った。 「わかったよ。前にも気を付けるって言ったろ?」 「……ん」  言質を得た万里が少し安心して頷くと、「ちなみにお前もだぞ」と頭をかき混ぜられて、首を傾げる。 「俺?」 「お前の方が、よっぽどトラブルに巻き込まれやすいだろ」 「トラブルは、大体父さんのせいなんだけど……」  久世には何度も助けてもらっていて、ご迷惑をおかけしている手前、あまり強く否定はできないが、トラブルメーカーのように言われるのは釈然としない。 「ま、それはわかるが、一応俺や月華と関わってるだけでも危険があるって自覚しとけ」 「…うん」 「お前は俺の弱点だってこと、ちょっとは考えろよ」 「うん、………………………………ん?」  え?  ええっ……!?

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